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子供が通う 『Pacific Northwest Ballet School』 でメイク&コーチング 鷹松 弘章さん

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鷹松 弘章(たかまつ・ひろあき)さん
【ボランティア先】 バレエ団付属学校 『Pacific Northwest Ballet School』
【ボランティアの内容】 子供が出演する舞台でのメイクやコーチング
【公式サイト】 www.pnb.org/PNBSchool/

もくじ

ボランティアの内容

私がボランティアをしているのは、全米に知られるシアトルのバレエ団パシフィック・ノースウェスト・バレエ(以下、PNB)のバレエ・スクールです。主に PNB が開催する演目で子供(幼稚園から高校生まで)の配役がある場合、このバレエ・スクールに通う子供の保護者はペアレント・ボランティアとして、バックステージにて子供たちのメイク、出演順番の管理、衣装の着替えの補助、幼い子供のトイレ補助、子供たちへのコーチングなどを行います。演目にもよりますが、1つのステージで2時間程度のボランティアです。

娘はこのバレエ・スクールで3歳ごろからバレエを習い始めたのですが、私のボランティアは、娘が小学校低学年のころの2009年に PNB の 『くるみ割り人形』 のオーディションで役をいただいたところから始まりました。

その後、バレエ・スクールでのクラスとは別に、PNB の演目から、『白鳥の湖』、『シンデレラ』、『真夏の世の夢』、『コッペリア』、『白雪姫』、年末の 『くるみ割り人形』 などで1年間に2~3演目にて娘が継続的に役をいただくようになりました。最初の1~2年は先輩の親御さんたちを見習って、お手伝い程度なボランティアをしていましたが、数年続けるうち、そのボランティアの中でも経験のある親になり、PNB のボランティア・コーディネーターの方(PNB での子供のとりまとめ役)にも信用していただけるようになっていったように思います。

最初のころは恐る恐るしていたメイクも、ファンデーションだけを塗る係から、いつのまにかアイラインやアイシャドーなど、ほとんどの親が敬遠することをするようになり、そのうち私が到着すると、「弘章のスペース、空けておいたわよ」とアイライナーの係が空けられていたり、ステージに慣れてきた子供たちの中には、「由未名(娘)のお父さんにやってもらう」と私のメイクを気にいってくれる子供たちも出てきました。1年に数回、親のボランティアの手がまったく足りない日もあり、そういうときは、ファンデーション、チーク、アイシャドー、アイライナー、リップなどすべての作業を一人でやることもあります。

また、ステージでの子供たちの衣装はプロフェッショナルなものばかりで大切に扱わなくてはならないので、その扱い方や、小物(帽子や手袋)の付け方などを子供たちに指導することも多くあります。

鷹松さんがメイクを担当している様子(0:55から)

ボランティアになる条件

このボランティアをするには、まず、PNB のスクールに通う生徒の保護者であること、子供がその演目に配役されていることが条件です。初めてボランティアをする場合には、バックグラウンド・チェック(犯罪歴などのチェック)を受けます。その後、ボランティアに応募するのですが、ボランティア・コーディネーターがキャストとメンバーを見て、経験レベルで親の選出を行っているようです。1年に1度、『くるみ割り人形』 の公演前に開催されるボランティア・ミーティングに参加して衣装や化粧、バックステージでの決まりごとなどを教わる必要もあります。

このボランティアをすることで、自分が大切にしていること

このボランティアで私が大切にしていることは、まず、子供たちの気持ちを安定させることです。

出演することで緊張する子供は少ないものの、年齢も低い子供たちもいるので、寝不足だったり、待機中の時間にトランプなどしている間に子供同士で揉め事があったりすると、ステージでミスをしたり集中できなくなったりします。ですので、メイクをするときは必ず、一人一人の子供に、「昨日はなにをしていたの?」「クリスマスが近いけど、どんなプレゼントが欲しい?」など、子供たちの目線で会話を多くするように努めています。その会話から、いろいろな子供の状態が読み取れるので、何か気になることがあれば、ボランティア・コーディネータに気になる点を伝え、ステージへ行く前後、または翌日のための注意などをするよう、心配りをします。とにかく、子供の目線で見ること、それを大切にしています。

余談ですが、子供が待機している時間、一緒に遊んだり、会話をすることで、子供たちの状態、そしてステージの雰囲気を感じとることがこのボランティアの大切なところだと思っています。また、バレエの舞台はプロの世界なので、カジュアルなイメージのアメリカであっても日本以上に規律がしっかりしているところがあり、その規律をきちんと伝えて、自分も実践する、そういうことが大切だと思います。

日本人の方には、周りの親が英語を話していて、子供たちも早口の英語を話しているというプレッシャーもあり、なかなかボランティアに踏み出せないこともあるかもしれません。でも、こういうものはしてみないとわからないこともありますし、お父さんであればなおさら、小さな子供たち(男の子も女の子)からも、お母さんのボランティアの方とはまた違うサポートを受けられて楽しい時間を過ごしている姿を見ることができます。まずは、やってみること。そうすると、お父さんやお母さんのボランティア仲間も増えていき、そのうち英語も自然と受け入れられるようになるのかもしれません。

お父さんのボランティアについて

PNB のバックステージに限らず、アメリカではお父さんのボランティアは日常化していると思います。学校や、こういう活動の中でのボランティアは、自分の子供の立ち位置を知ることにも繋がりますし、交友関係も知ることができます。また、逆に子供の目線から見るとボランティアをしてくれている親の家の子供とは会話も弾んだり、共通の話題(親のこと)が出たりして、子供の発育・学習環境での影響もプラスな面が多いと思います。今でこそ、高校生になってしまった私の娘は「また “お父さんによろしくね” って言われたよ」と面倒くさそうに伝えてきますが、幼いころは友達にそう言われることを喜んだ様子で「あの子がパパのアイライナー大好きなんだってさ」というような話をしたりしたものです。ボランティアのおかげで、親子の会話のバラエティも増えると思います。

でも、これだけはお伝えしたいのですが、親が子供の学習環境でボランティアをすることを、親から子供への過干渉のきっかけにしてはいけないと思っています。子供はこれを喜びません。どちらかというと自分の子供には、「お父さんはいつもここにいるよ、必要なときに声かけてね」ぐらいの距離感がとても大切だと思います。よく自分の子供にくっついて歩いている親をボランティアの最中に見かけることがありますが、親が極端に子供の世界に入りすぎていて子供が尊重されていない状態に陥って苦しむ姿も目にします。私の場合、私は私、子供は子供という立場でボランティアの現場にいます。家に帰っても子供がその日のことを話したいと思わない限り、あまり子供の世界のことには首を突っ込まないようにしています。おそらくこのあたりが、長続きの秘訣、そして親子関係を良好に保つ秘訣なのではと思っています。

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