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トピックは「大統領選挙」!留学生は自分だけ、ネイティブと一緒の英語クラス

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駒橋亜美さん

大統領選挙の年、シアトルの南にあるハイライン・カレッジでは選挙をトピックにした授業が行われました。今回は、このクラスを体験した留学生の駒橋亜美さんに感想を伺いました。

―― どんなクラスですか?

カレッジレベルの英語の読み書きの力をつけるため、英語のネイティブも履修する「English 101」というクラスです。毎日1時間11週におよぶコースで、時流もあって、授業は大統領選挙をテーマに進められました。生徒たちはグループに分けられ、それぞれ候補者を割り当てられて、学期中はその人に関するエッセイの執筆やプレゼンテーションを行いました。

―― なぜそのクラスを取ろうと思ったのですか?

English 101は必修クラスです。他のクラスの時間と調整して、この先生のクラスに決めましたが、政治がテーマになることは始まってから知りました。

―― クラスの雰囲気はどうでしたか?

20人ほどのクラスで、留学生は私だけでした。当時、ハイラインに通い始めて2学期目だったので、英語がほとんど話せず理解できない状態で、初めは「アメリカ人とどうコミュニケーションをとったらいいのだろう」と不安でした。

でも、グループ・プロジェクトだったので、必然的にグループのメンバーと連絡することになり、そこで情報交換やコミュニケーションを取る状況を強いられました。おかげで、英語を話す機会がかなり増えました。

課題はエッセイとプレゼンテーション、担当は「トランプ候補」

―― どのような課題が?

6ページのエッセイ3本と、プレゼンテーションがありました。

エッセイにはそれぞれテーマがあり、提出前に先生からテーマの説明やサイテーション、サマリーの書き方のレクチャーがあり、それを基にエッセイを書きあげるという流れでした。

まず、最初に出されたエッセイはアーギュメント・ペーパー(argument paper)でした。これは自分の意見をどういう風に論理的に書くかを重視したものです。

Identifying Rhetorical Strategies: Logos, Pathos, and Ethos
※クリックすると Word 文書が開きます。

授業が始まってから2週間後が締め切りで、それまで英語のエッセイは240字しか書いたことがなかったので、どのようにして長く書くのかまったく見当がつきませんでした。さらに、政治経済は苦手な分野で、アメリカの選挙方法も身近ではなく、よくわかっていませんでした。ですので、とりあえず初めにアメリカの選挙や政治の仕組みを知るところから始めました。

そして、ライティングセンターへ行き、チューターがいろいろ質問してくれ、ブレーンストームをしました。

それを通じて意見のコアを見つけ出し、そこからぶれずに、蜘蛛の巣のように展開してエッセイを書いていく方法を学びました。

2本目はリサーチ・ペーパーで、調査した内容について正確な数値などを基にしてエッセイを書き上げるというものでした。より具体的な数値が欲しかったので、たくさんの記事を読み、「なぜそう思うか」を裏付けられるように情報を書くようにしました。

先生も、「一つの記事からではなく、いくつかの記事を読み比べ、正確な情報をピックアップして書くように」とアドバイスしてくれました。

そして、グループごとのプレゼンテーションがありました。グループごとに15分以内で、それぞれが調べた内容を客観的に述べ、最後に自分はその人を推すかどうかを発表しました。

Identifying Rhetorical Strategies: Logos, Pathos, and Ethos
※クリックすると Word 文書が開きます。

私のグループはドナルド・トランプ氏。ある意味、話題性のある人ですので、他の候補者に比べたら調べやすかったです。

このプレゼンテーションでは、1人で2つのトピックについて話すのですが、私はトランプ氏の外交と教育政策について発表しました。

スピーチカードを持って発表をしている人は誰もいませんでした。人前に立つと緊張して頭が真っ白になってしまうタイプなので、逆にメモがあるとそればかりを見てしまい、良いスピーチができなくなってしまいます。なので、事前に自分でたくさん練習をし、キーワードを頭に入れて、スライドを回しながら発表をしたら落ち着いてできました。

グループでのプレゼンテーションの準備は主にSNSで行いました。一緒に練習することはなかったのですが、それぞれがしっかりしていたので、本番は上手くいきました。

他のグループを見ていると、発表のコンテンツには支障はなかったのですが、グループ内でコミュニケーションを多く取っていたかどうかでスムーズさに差がありました。

発表が終わった後にグループの一人が、「クラスで唯一のインターナショナル生であったにも関わらず、最後まで頑張っていた彼女に拍手を」と呼びかけてくれ、みんなから拍手をしてもらった時はとても嬉しかったです。

最後はアーギュメント&リサーチ・ペーパーでした。今まで自分が調べたことや、他のグループのプレゼンテーションの内容をすべて踏まえて、自分の意見を述べるものでした。

最終的に自分はどの候補者を推すか、それとも誰も推さないかという選択肢もありました。なので、みんなのプレゼンテーションの内容をしっかり見て理解していないと書けないようになっていました。

この学期を通して、1つのペーパーにつき少なくとも2回はライティング・センターへ通いました。1回目にブレーンストームをチューターと一緒にし、自分でそれを参考にしながらドラフトを書き、2回目に最終チェックしてもらいました。先生は非常勤講師でオフィスアワーが限られていたため、ライティング・センターをたくさん活用しましたね。

選挙に対する日米の意識の違い

―― トランプ氏に関してクラスの意見はどうでしたか?

トランプ氏を支持している人たちは、アメリカの中年層の白人男性や合法移民が多いとメディアが分析していました。

「ヒラリーかトランプかだったら、ヒラリーは支持しないから、どちらかといえばトランプを支持する」という生徒が数名いました。

彼の過激な発言を面白いと思い、アメリカをどうにかして変えてくれるのではないかという期待を込めて支持をしている傾向にあると感じました。

クラスメートがヒラリー氏を支持しない理由に挙げていたのは、政界と企業の癒着やスキャンダルでした。一方、彼女を支持する理由として挙がっていたのは、「リーダーの意見が偏っていると上手くいかなくなる」「中立の立場で物事を見ることができ、長く政界にいるので外交がスムーズに行われる」「女性は女性問題に積極的だから」というものが主でした。でも、クラスの中でヒラリー氏を支持する人は案外少ない印象でした。

―― 日本とアメリカにおいて、若い人たちの選挙に対する考え方の違いはありましたか?

このクラスは10代の生徒が多かったので、知っている情報が合っているかどうかではなく、お互いの自由な発想や意見を尊重していました。誰を支持するかを自分の意見を交えて積極的に発言している生徒が多かったです。先生も、「クラスの中では自由に発言してほしい」と強調していましたし、誰を支持しているからといって、それを否定することはありませんでした。

興味を持つか持たないかではなく、選挙に関心があるのは当たり前だと感じているアメリカ人は多いと思います。

アメリカでは、政党によって考え方が全く異なり、「私はこの人を支持する」という意志や誇りがあるように感じました。自分の意見とその理由をしっかり述べていたので、日本より選挙を身近に感じているのかもしれないと感じました。「自分が選ぶ」という意識が根付いているのかもしれないですね。

人前で英語で話す自信がつき、政治への関心もアップ

―― この授業を通して、何を学びましたか?その後どのように活かすことができていますか?

この授業を受講したことは、私にとってとても大きかったです。採点に厳しい先生で、毎回の課題を大変な思いでこなしました。「一回とても大変な経験をすると、次が楽になる」というように、自分が6ページのエッセイを書いたという事実と努力から、そのクラスを受講し終えた後、ちょっとしたエッセイが課題に出されても、以前ほど苦ではなくなりました。構成などを深く考えなくてもすんなりと書き出せるようになり、英語でエッセイを書く抵抗感が薄れました。

プレゼンテーションにおいて、私はもともと人前で話すことが苦手でした。そこで、クラスでスピーチが上手な人をよく見て、「どうしたらオーディエンスに興味を持って聞いてもらえるか、面白いと思ってもらえるか」を自分なりに観察していました。それと同時に、オーディエンスはどのように反応しているかにも注目していました。その後、他のクラスでもプレゼンテーションやスピーチをする際に身振りや話し方、スピーチの構成などを真似することで、人前で話す自信がつきました。

読んだ英語の文献の量はとても多く、50本ほどに達しました。政治についてのトピックだったので、何回も出てくる単語があり、意味を調べ、何度も目にするうちに、単語数も増えました。

自分が一番苦手な分野の記事を常に読んでいたので、「これが読めたから、他のトピックも読めるだろう」という自信もつきましたね。

このクラスを終えて、英語の壁を越えたように感じましたし、何より「政治って面白いな」と興味を持つことができました。

先生からコメントもいただきました!

大統領選挙を選んだ理由は、気候変動、健康保険、人権、米国が世界に遺すレガシーといった、この国に影響する問題に対し、生徒たちは深い関心を持っているにも関わらず、彼らの多くは意見を言う権利がないと感じていると思ったからです。まだ若すぎる、十分な情報を得ていない、または政治的な事柄について語るほど積極的に関与していないと言われたのかもしれません。

このクラスは、「君たちには意見を言う権利があり、その意見がこの国を作っていくのだから、きちんと情報を得て、何を信じるか決めていこう」という考えにもとづいていました。私は、生徒たちが自分の意見を主張し、私の意見にただ同意するだけにならないよう、断固とした態度で接しました。彼らは実にさまざまな意見を持っています。昨年の冬から政治のクラスを教えているのですが、このクラスだけでなく、生徒たちが皆、自分が支持する候補者やその理由について積極的に語り、情熱を注ぎ、多大な時間を費やしたことはとても興味深く、この国の未来に大きな希望を抱かせてくれました。

このクラスのすべての生徒がクラスに積極的に参加しました。駒橋さんがこのクラスで成し遂げたこと、そして彼女が世界で成し遂げるであろうことを知っていることを誇りに思います。

掲載:2016年11月 取材:田部井愛理 写真提供:駒橋亜美



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