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「よくも悪くも、ありのままの自分で勝負」プロラグビー選手 山田章仁さん

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「よくも悪くも、ありのままの自分で勝負」プロラグビー選手  山田章仁さん

©Seattle Seawolves

北米のメジャーリーグラグビー(MLR)は、2017年に創設されたプロリーグ。2021年シーズンはウエスタン・カンファレンスに6チーム、イースタン・カンファレンスに6チーム(米国11チーム、カナダ1チーム)が所属しています。

山田章仁さんが所属するNTTコミュニケーションズシャイニングアークスから派遣という形で加入したシアトル・シーウルブズは、シアトルの南にあるタクウィラ市のスターファイアー・スタジアムを拠点とし、2018年、2019年と連覇を飾った全米チャンピオンチーム。4月に契約を交わしてから、新型コロナウイルスのパンデミックの影響もあって渡航ビザの発給に予想以上に時間がかかりましたが、5月下旬にようやく渡米が実現。6月1日にチームに合流して練習を開始し、5日後の6月6日にホームスタジアムでのユタ・ウォリアーズ戦で先発フル出場を果たしました。

そんな山田さんに今回は Zoom でお話を伺いました。

略歴:1985年生まれ。福岡県北九州市出身。5歳からラグビーを始め、鞘ヶ谷(さやがたに)ラグビースクールで学び、小倉高校から慶応義塾大学に進学。在学中にオーストラリア留学でラグビー経験を積み、卒業後はホンダ・ヒート、パナソニックワイルドナイツを経て、2019年からNTTコミュニケーションズシャイニングアークス所属。2019年にはフランスのリヨンOUにレンタル移籍して経験を積んだ。2021年にシアトル・シーウルブズに加入。日本代表・関東学生代表・日本選抜・日本代表(10cap)・日本代表15cap (2015W杯メンバー)など代表経験を持つ。

【公式ブログ】山田章仁 公式ブログ Powered by LINE (lineblog.me)
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【インスタグラム】@yamadakihito
【シアトル・シーウルブズ公式サイト】www.seattleseawolves.com
【メジャーリーグラグビー公式サイト】www.majorleague.rugby

「よくも悪くも、ありのままの自分で勝負」プロラグビー選手  山田章仁さん

©Seattle Seawolves

– シアトルに引っ越してこられてまだ1カ月ぐらいですが、街の印象は。

西海岸は日本の企業も多く、日本とも親しみやすい土地だと聞いていました。夏のシアトルは最高と聞いていましたが、実際来てみると、天気も良くて、いいですね。(6月6日の)試合の時は雨が降りましたが、快適に過ごしています。

– アメリカのプロリーグを選び、さらにシアトル・シーウルブズを選んだ理由は。

アメリカというプロスポーツの本場で、ラグビーを取り巻く環境に身を置いてみたいというのがありましたね。それで、サンウルブズ時代にチームメートだったアンドリュー・デュルタロ選手を通してシアトルの話を聞き、一度来てみました。そしてやはりこのアメリカのメジャーリーグラグビー(MLR)に一度触れさせてもらいたいと思って挑戦することを決めました。

– 6月1日にチーム練習に合流し、わずか5日後のホーム試合で先発フル出場されたわけですが、シアトル・シーウルブズのチームの印象は。

チームメートがみんなやはり優しいですね。そして、スポーツを職業にしている人たちは、スポーツを軸に生活しているわけですが、運動や生活を含めて「スポーツ選手」として生活させてもらえて、スポーツに集中させてもらえる環境が整っているのはラッキーだと思います。チームもファミリーファーストで、家族が過ごしやすいのもいい。これは日本ではなかなかないことでもあります。スポーツを通して一気に世界が広がりますね。シアトルのいいところだと思いました。

– アメリカと日本のラグビーの違いはなんでしょうか。アメリカのラグビーの良さ、スポーツ文化の良さとは。

ラグビーは日本ではマイナーなスポーツの中でも結構なメジャーなスポーツで、ワールドカップがすごく盛り上がりますし、リーグがすでに盛り上がっています。日本ではすごく多くの人に見てもらえる環境があります。

アメリカではまだまだマイナーではあるのですが、やはりこちらの人はアメフトや格闘技などのコンタクトプレーが好き。観客のみなさんも盛り上がるプレーに自然と声をあげてくれ、盛り上がるシーンを知っているなと。選手にとってうれしいことですよね。

「よくも悪くも、ありのままの自分で勝負」プロラグビー選手  山田章仁さん

©Seattle Seawolves

– 1試合を終わっての感触は。

やはり本当にみなさんがスポーツを楽しんでくださっているので、いいプレーをしたい、勝ちたい、と思いますね。スポーツを通して、お互いにコミュニケーションをはかれる。80分の試合を通して常にコミュニケーションをしているような気持ちです。先日は1点差で負けましたが、やはり最後は勝つことがやはり一番ではあるものの、スタジアムのみなさんも盛り上がって、最後は応援もいろいろくれたので、ラグビーをやっていて良かったなと思いました。

– ラグビーを5歳の時に始めたとのことですが、どんなきっかけがあったのでしょう。

年の離れた姉が二人いるのですが、よく遊び相手にされていたので、僕に激しいスポーツをすることでもっとこう、強くなってほしい、という両親の思いから始めました。僕が生まれ育った福岡もスポーツが盛んな地域で、いろいろやらせてもらったのですが、その中で最後にラグビーが残ったんです。理由を考えてみると、やはり一緒にいてくれる仲間がいたからですね。仲間と何かをやる。チームメートがいる。それがとても楽しかったのだと思いました。

ラグビーの良さはチームメートが多いこと。そして、体の小さな子も大きな子も、足の速い子も遅い子もみんな活躍できる場所がある。そういういろいろな特性を持った子たちが集まっていて、楽しかったのではないかなと、今振り返ってみて思います。

「よくも悪くも、ありのままの自分で勝負」プロラグビー選手  山田章仁さん

©Seattle Seawolves

– 山田さんのキャリアにおいて、今回のシアトル・シーウルブズへの加入はどのような意味がありますか。どういうゴールがあり、どうなったら成功と言えるとお考えですか。

僕自身が充実して楽しい生活を送ることも一つの目標ですが、日本とアメリカの二つのチームを行ったり来たりしているので、日本のファンにアメリカのメジャーリーグラグビーの存在を知ってもらい、楽しんでもらうことも一つの目標です。そして、メジャーリーグラグビーの人にも日本のラグビーの良さを伝えること。今はソーシャルメディアで手軽に話せるので、日米でのラグビーを通したやり取りが増えたりすると、僕も嬉しいかなと思います。

シアトルのことも聞かれたりするので、ラグビー以外の情報もこれからシェアできたらと思っています。

– シアトル地域では1880年代に最初に日本からの移民が来て、日本との縁は深いのですが、当時から反アジアの差別や法律がありました。さらにこの国では昨年からのパンデミックなどでアジア人が被害にあう事件が相次いでいます。アメリカで、アジア人のスポーツ選手として、どのように思われますか。

アジアの見られ方はいろいろあると思いますが、あまりそこにこだわらずにいたいですね。僕自身はラグビー選手として自信を持って、ラグビーというスポーツで渡り歩いているわけですが、他の国と変わらず自分のパーソナリティに自信を持って活動したい。

また、アメリカの環境になじみたい気持ちもあるのと同時に、あまりなじみすぎると自分の良さを失ってしまうかもしれないという不安もあります。なので、よくも悪くもありのままの自分で勝負というか、生活していきます。そのうえで、いろいろと気づかされることもあるかなと思います。

– メジャーリーグラグビーに挑戦する山田さんを見る子どもたちにとって、マイノリティのリプレゼンテーションという面で大きな意味があるのではと感じます。

おっしゃるとおりですね。僕自身も10代の頃に海外に行ってバカにされたりということもありましたから、わかります。子どもたちが何か自分に自信を持てるものを見つけられたらいいなと思いますね。うまくなる必要はなく、自分が楽しかったらいい。そして、自分に自信を持って、他の人に誇れるようなものを持って生活していってもらいたい。僕の場合はそれがラグビーなわけです。スポーツは素晴らしいコミュニケーションツールの一つであると考えると、どんな子どもたちにもぜひスポーツをやってもらいたいと思いますね。

– いろいろ大変な時もあったかと思います。挫折しそうになったこともあるかと思います。そんな時はどのようなことをして乗り越えましたか。

試練にぶち当たった時、やはり落ち込んだり、考えこんだりしてしまうこともありますね。僕の場合はなかなか日本代表になれなかったり、けがをしたときとかがそうでした。でも、負けず嫌いなので、そんな時は、「どうせ越える壁なら大きい方がいいな」と思うようにしています。どんな壁も絶対に越えていけると自分を信じて、「どうせならいろいろな苦労をして越えたほうがいいな」とポジティブに向かっていく。あとは、「自分の幸せは自分の心が決める」と恩師に言われたこともあって、自分の心に素直に、自分の話を聴いてあげて、自分を大切にしてあげれば、前に進んで行けるんじゃないかと思っています。

– 直近の目標を教えてください。

シアトルのチームメートみんなと笑顔で、試合ではもっとコミュニケーションをとって、いろいろな時間を共有していきたいです。

生活面では、妻や子どもたちに教えてもらうことが多いです。これからもラグビーや日々の生活で学びが多くある旅、生活になるのだろうなと思っています。

– ありがとうございました。

シアトル・シーウルブズ アレン・クラーク監督のコメント

「このチームに加入してまだ間もないが、アキはフィールド上でもフィールド外でも、素晴らしい活躍をしてくれている。彼はグループにエネルギーと経験をもたらし、仲間との絆を深めている。特に、まだ1週間しか練習していないにもかかわらず、6日の試合での彼の熱意と全体的な貢献は素晴らしいものだった。アキが我々の環境とチームのパフォーマンスに価値を与え続けることは間違いない。彼がシーウルフの一員であることを嬉しく思う。」

【編集後記】念のための感染対策で、Zoom で20分ほどお話を伺いましたが、シアトルでの新しい生活でストレスなく過ごしているとのことで嬉しく思いました。現在シアトル・マリナーズに菊池雄星投手、OL レインに籾木結花選手が所属しており、これまでにもイチロー選手らたくさんの日本人選手がシアトルのプロスポーツチームで活躍してきました。これからはラグビーを通じても日本とアメリカの相互理解と交流が深まるとうれしいですね!これまでラグビーに馴染みのなかった方も、山田さんの活躍を見にタクウィラ市のスターファイヤー・スポーツへ!

掲載:2021年6月 聞き手:オオノタクミ

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