2025年5月9日(金)から11日(日)の週末、カナダ唯一のメジャーリーグチーム「トロント・ブルージェイズ」が T-Mobile Park でシアトル・マリナーズと対戦します。例年このカードには多くのブルージェイズファンがカナダからシアトルを訪れ、ウォーターフロントやホテル、レストランがブルージェイズの青で染まりますが、今年は様子が異なるかもしれません。
カナダ統計局の発表によれば、2025年3月の陸路(車)によるアメリカ入国者数は、前年同月比で32%減少。さらに、航空便の利用も13.5%減少したと USA Today が報じています。その背景にはアメリカ政府のカナダに対する関税引き上げや主権を脅かす発言があります。
「Open Arms for Our Canadian Friends」キャンペーン
こうした状況を受けて、シアトルの観光業界が立ち上がりました。ホテル、飲食店、観光サービスなどが参加するシアトル・ホスピタリティ・グループ(SHG)が主導し、「Open Arms for Our Canadian Friends(私たちのカナダの友人たちを大歓迎)」キャンペーンを実施します。
このキャンペーンでは、2025年5月9日(金)〜11日(日)の3日間限定で、参加店舗においてカナダドルでの支払いが可能となり、為替レートを考慮した30%相当の割引が適用されます。カナダ政府発行の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)を提示するだけで利用できます。
参加企業一覧(2025年5月1日現在)

「Open Arms for Our Canadaian Friends」キャンペーンに参加している企業は、以下の通りです。
宿泊施設
- Sheraton Grand Seattle(シェラトン・グランド・シアトル)
- Hotel Ändra(ホテル・アンドラ)
- Cedarbrook Lodge(シーダーブルック・ロッジ)
- Fairhaven Village Inn(フェアヘイブン・ビレッジ・イン)
- Hotel Interurban(ホテル・インターバーアン)
- Heliotrope Hotel(ヘリオトロープ・ホテル)
- Hotel Leo(ホテル・レオ)
- MarQueen Hotel(マー・クイーン・ホテル)
- The Grove(ザ・グローブ)
- The Lodge at St. Edward State Park(ザ・ロッジ・アット・セントエドワード・ステートパーク)
- The State Hotel(ザ・ステート・ホテル)
- Semiahmoo Resort(セミアフムー・リゾート)
- Heathman Hotel(ヒースマン・ホテル)
飲食店
- Ivar’s(アイヴァーズ)
- Ethan Stowell Restaurants(イーサン・ストーウェル・レストランツ):
- Marination(マリネーション)
- The Attic(ジ・アティック)(Semiahmoo Resort 内)
- Pike Brewing Company(パイク・ブリューイング・カンパニー)
- Spinasse(スピナッセ)
- Artusi(アルトゥージ)
- Fremont Brewing(フリーモント・ブリューイング)
観光・交通・体験
これらの企業では、カナダの有効な身分証明書(運転免許証、パスポートなど)を提示することで、カナダドルでの支払いが可能となり、為替レートを考慮して約30%の割引が適用されます。ただし、参加企業や割引内容は予告なく変更される場合があるため、訪問前に各施設に直接確認することをおすすめします。
ビジネスのためだけではない、「歓迎」の表明

このキャンペーンについて、「カナダ人観光客が減って収益が落ちているから、企業がビジネスチャンスとして動いているだけ」と受け止める人もいるかもしれません。たしかに、観光客の減少は企業の売上に直結し、雇用や地域経済にも影響を及ぼします。そうした状況に対してビジネスとして柔軟に工夫を重ねていくことは、当然の姿勢と言えるでしょう。
現代は国と国、人と人との関係が複雑に絡み合い、相互に支え合って成り立っている時代です。そうした中で、シアトルの地元企業が連携し、「来てくれてありがとう」という歓迎の気持ちを具体的な形で示すことには、大きな意味があります。
これは、日米関係にも通じる話です。長期的な信頼関係を築くうえで鍵となるのは、政府間の交渉だけではなく、地域や個人レベルでの交流の積み重ねもとても重要であることは、多くの人が感じていることではないでしょうか。
「Open Arms for Our Canadian Friends」は、現時点では週末限定の一時的なキャンペーンにすぎませんが、もし好意的に受け止められ、観光や人的交流に前向きな動きが生まれれば、今後も継続や拡大の可能性が期待されます。
観光産業の回復はもちろんのこと、国境を越えた信頼の再確認という意味でも、多くの人にとって意義深い週末となるかもしれません。