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小規模農家の支援と一般市民の食育がミッション 『Neighborhood Farmers Market Alliance』

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Neighborhood Farmers Market Alliance

1993年に1人の女性の発案でシアトル市内のユニバーシティ・ディストリクトにて始まったファーマーズ・マーケット。ボランティア・グループが手探り状態で作ったこのマーケットに参加した農家の数はわずか17軒だったが、それから約7年後、同グループは非営利団体 『Neighborhood Farmers Market Alliance』(ネイバーフッド・ファーマーズ・マーケット・アライアンス:NFMA)となり、今ではシアトル市内で計100軒以上の農家が出店する7つのファーマーズ・マーケットを運営するワシントン州最大の産地直送マーケット網となっている。

ワシントン州最大のマーケット網

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NFMA がシアトル市内で運営するファーマーズ・マーケットは、コロンビア・シティ、レイク・シティ、フィニー・リッジ、マグノリア、ユニバーシティ・ディストリクト、ブロードウェイ、ウェスト・シアトルの7つ。合計100軒以上の小規模農家が出店する、州内で最も活発な産地直送マーケット網だ。全米には何百ものファーマーズ・マーケットがあり、運営方法はそれぞれ異なるが、NFMA は “小規模” の農家を支援し、食品・農業に関して一般市民を教育するというミッションの下、出店者の70~80%を農家、残りをジャムやチーズ、パスタやジュースなど加工食品に限定している。マネジャーのジャネット・ハートさんは、「”ローカル” と言っても、ピュージェット湾地域、ワシントン州西部、ワシントン州全体、そして西海岸と、人によってさまざまなように、”小規模” 言っても、人によってさまざま」と言う。そのため、NFMA では “消費者が求める多様かつユニークな果物・野菜を20エーカー前後の農地で栽培する農家” を “小規模” と定めている。

利用者を増やすための工夫

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消費者と生産者が直接顔をあわせ、旬の食材をリーズナブルな価格で購入できるファーマーズ・マーケットに加工食品も出店できるようにしているのは、マーケットを訪れる消費者にとっての利便性を考えた上でのこと。前述のハートさんは、「生鮮食品以外の食品も買うことができると、マーケット自体の利用者が増える」と説明する。 また、NFMA では食品の販売だけでなく、地元シェフによる料理の実演、地元バンドによるライブ・ミュージック、子供向けのアクティビティ、シアトル市による庭のメンテナンス情報ブースなども手配し、マーケットを誰もが楽しめ、同時に役立つ情報も得られる場所になるよう工夫してきた。こうしたさまざまな努力が実り、非公式のカウントではあるが、利用者数は2009年には2008年の32万7千人から34万6千人と、着実に増加している。

NFMA のオフィスには常時6人がフルタイムで勤務しており、年間を通じてボランティアも多く関わっている。すべてのマーケットが運営されている春から秋にかけてはさまざまな特別イベントや寄付金を集める活動なども行われるため、ボランティアの協力は欠かせない。これからマーケットが始まるという春に数千枚のポスターやフライヤーを配布するのも、ボランティアの役目だ。そういったボランティア経験から、さらにマーケットと深く結びついていく消費者が増えていき、その周りの人間も感化され、さらに利用者が増えていくという、小さくも大切なネットワークが地域に根ざしたマーケット作りには欠かせない。

今後の活動

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最近では「農地保護」「サステナビリティ」「ローカル」「オーガニック」「食の安全」 といった言葉をより頻繁に耳にすることが多くなっているからか、NFMA にはさまざまな地域からマーケットの開催を希望する声が寄せられている。しかし、ハートさんは「現在運営している6つのマーケットをしっかり運営していくことが今の最大の目標」と語る。と言うのも、マーケットを恒久的に運営するには用地の確保が何よりも重要であり、マーケットは常に危機にさらされているからだ。その一例が、1998年から会場として使われていた土地を開発業者が買収したため、今年から移転せざるをえなくなった、コロンビア・シティのマーケット。5月19日のオープン予定日は変わらず、数週間後には移転先が発表されるということだが、「10年以上にわたり同じ場所で開催してきた」ということは必ずしも今後の保証にはつながらないということがわかる。しかし、この用地確保に関しては、今年に入ってからは大きなニュースがあったと、ハートさんの声が明るくなった。シアトル市初のファーマーズ・マーケットとして1993年からユニバーシティ・ハイツ・センターで開催してきたNFMA のユニバーシティ・ディストリクトのマーケットが、10年越しの話し合いにより、この場所でこれからもずっと開催できることが先日、決定したのだそうだ。「長い道のりだったが、安心した。より多くの人に愛されるマーケットとして、これからもいろいろな工夫を重ねていきたい」。

NFMA の設立者であるクリス・カーティスさんは、現在もディレクターとして活躍している。また、Farmers Market Coalition(ファーマーズ・マーケット・コーリション)非営利の会員制団体のディレクターなども務めるなど、さまざまな方面から食の改善に関わり続けている。

Neighborhood Farmers Market Alliance

【公式サイト】 www.seattlefarmersmarkets.org

(掲載:2010年2月)

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