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スピーチ・セラピー 第11回「プラグマティック言語とは」

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今回は、プラグマティック言語(言語の社会的使用)についてお話したいと思います。まず、以下の場面について考えてみましょう。

会社の上司宅を家族で訪問。突然、わが子が大声で「喉かわいたぁ。なにか、飲み物ちょうだい!」と発言し、ばつが悪い思いを経験。

ここで、この子どもの親がきまりが悪い思いをしたのはなぜでしょうか。この子どもが家庭内で自分の親に対して同じ言動をとったとしても、さほど大きな問題ではありません。ここで問題となっているのは、この子どもが家族に対して使う言語と、「親の上司」「目上の人」といった間柄の人に対して使う言語を使い分けることができなかったことが起因しています。

これは、アメリカ音声言語聴覚協会(ASHA: American Speech-Language-Hearing Association)の定義による、「聞き手や状況によって言語を調整」することができなかったケースです。そのほかにも、「挨拶や伝達、要求など、さまざまな目的に応じて言語を使う力」「聞き手との距離の取り方や話題の導入や転換など、会話や話し方のルールに従う力」というプラグマティック言語に関係しています。

こうしたプラグマティック言語の使い方に問題がある場合、対人関係がうまくいかない原因となってしまいます。

年齢相応のプラグマティック言語を獲得できていない場合の原因は何でしょうか。プラグマティック言語に問題を持つお子さんが、文法や語彙など他の言語分野においてはまったく遅れがない場合もあります。その場合、とかく、「親のしつけ」が原因だと思われがちですが、自閉症やアスペルガー症候群、非言語学習障害、ADHD、聴回路の障害(Auditory Processing Disorder)、過読症(Hyperlexia)、脳損傷、等の障害の症状として現れている場合もあり、その場合、親のしつけや子ども自身を責めてしまうことが、親や子どもを傷つけてしまうことになることを心に留めておいていただきたいと思います。むしろ、原因を明らかにした上で、適切な指導法により症状の改善を測っていくことが望まれるのです。

余談になりますが、挨拶の仕方や話し相手との距離の取り方など、日米の文化間をはじめ、多くの異文化間でさまざまな相違点があります。お子さんのプラグマティック言語力をはじめとするコミュニケーション能力の検査診断を依頼する場合、お子さんの属する文化背景を熟知している専門家に依頼するか、そういった文化背景に関する情報提供を十分に行うことが、正しい診断を受ける上で必要不可欠でしょう。

情報提供:言語聴覚士 鈴木 美佐子さん

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