30代後半で「働くお母さん」の仲間入り。何もかも「初めて」の息子と一緒にいろいろな発見をさせてもらっています。20年以上住んでいるシアトルも、親子になるとまだまだおもしろいことがたくさん隠れているものですね。シアトルのお気に入りを息子に紹介しながら、「ここに自分の子供と来ることになるとは!」と、しみじみする日々です。

シアトル・チルドレンズ・シアターで上演されている 『Goodnight Moon (邦題: おやすみなさい おつきさま)』 を観てきました。
はかなげなソメイヨシノが散って、ゴージャスな八重桜が咲き始めたシアトル。道路の両脇を彩る新緑、色とりどりの花・・・。シアトルの美しい季節がやってきましたね!
ところが、我が家では息子が2度目の風邪の真っ最中。朝、鼻水が少し出ていて、コンコンと咳をしていましたが、「車の中で、くしゃみをしだした」と、プリスクールに送っていった夫から連絡があった数時間後、私の携帯が鳴りました。画面に出ているのはプリスクールの名前。
「熱が出てきていて、まったく食欲もないようです。早めにお迎えに来ていただけますか」
かわいそうに、鼻水と咳がひどくなり、そして熱も出ての帰宅と相成りました。
熱があっても動き回る元気がある段階なのか、本人はいたって元気そうでしたが、「マミーと遊びたかったから、すぐに帰ってきたよ~」と甘えてくる体がいつもより重たく感じられるのは、やっぱり風邪で力が入らないからでしょうか。
これまでたくさん風邪を引いているので、「風邪を引いて強くなっていく!」とわかってはいても、働く親はやっぱり仕事との兼ね合いをまず考えてしまうもの。「今日はちょうどミーティングがない日だったから良かったけど、これが昨日だったら真っ青だったなあ」「あれは明日でいいし、これは夜にやればいいか。でもあれはやっぱり今やっとかないと」「親子で共倒れにならないようにしなくちゃ」と、頭の中であれこれ考えてしまいます。
「これって、ちょっと前に話題になったサイボウズの CM 『働くママたちに、よりそうことを』 みたい!?」
一時かなり話題になったこのCM、電車通勤や残業が当たり前の世界とはまったく違う世界に住んでいても、「なんかわかる!」と、あれこれ検索して調べてみました。そして、制作を担当したのは働くお母さんたちチームだったことを知り、サイボウズの社長と病児保育サービス非営利団体フローレンス代表理事の対談記事なども読みました。日本社会は社長レベルからやらないと変わらないのか、でもそれがきっかけで変わっていくといいのに・・・と思ったものです。でも、その後に出された第2弾の『パパにしかできないこと』 で描かれている男性像は、男性が家族よりも仕事を優先しなくてはならない働き方が良しとされてきた日本の結末という感じでしたね。「イクメン」という言葉が出てくること自体、いかに男性が育児と切り離されるように仕事させられてきたかわかるというもの。
さて、「そうだよねえ、マミーも遊びたいなあ。これをすぐに終わらせるから、ここで待っててくれる?」と、コンピュータに向き直ると、「あ、今日ね、エッグハントしたんだよ。見てごら~ん。ほらほら」と、息子の誘惑が始まりました。そして、エッグハント用に作ったバスケットからプラスチックの卵を出して次々と開け、ステッカー、キャンディ、チョコレート、人形などを取り出して、私のデスクに並べていきます。私が幼い頃の日本での生活にはなかった宗教的お祝いや行事も、アメリカで育つこの子はどんどん体験していくんだな。でも、「キャンディとチョコレートは、風邪が治ったら食べようね」と、そんなところだけはしっかりチェックしてまたコンピュータに向かった私に、息子は怒り出しました。
「もうマミーと遊んであげない!」
振り返ると、小さな背中に怒りをみなぎらせて、足を踏み鳴らしながら立ち去っていく姿が。かなり心苦しいのですが、去るものは追わず。
しばらくそのまま静かに仕事をしていると、息子がそーっと戻ってきて言いました。
「マミー、ごめんね。怒っちゃって」
大人になっても心の中のことを言葉にして伝えあえることができればと、私の心の中のことをできるだけ言葉にして伝えてきましたが、息子の素直な性格のおかげで、こちらも素直になれることがよくあります。正直になれる、話せるというのは、簡単に言えば、信頼関係が築けていてこそですよね。誰が悪いわけでもないのに、自分が悪いことをしたと思っているところがいじらしい!
「でもさあ、マミーも遊んでくれないから、悪いよね」
・・・4歳のロジックでは、そうなりますか。
掲載:2015年4月