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パシフィック・ノースウェスト・バレエ プリンシパル・ダンサー 中村かおりさん<br>「プロのバレエ・ダンサーとして、最後まで最高の踊りを」

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中村かおりさん 『ドン・キホーテ』

『ドン・キホーテ』 のキトリ ©Angela Sterling

繊細さ、力強さ、激しさ、可憐さ、華やかさ-。1996年の入団から17年にわたり多くの人々を魅了してきたシアトルのパシフィック・ノースウェスト・バレエのプリンシパル・ダンサー、中村かおりさんが、今年2月、今シーズンでの引退を発表した。

バレエ一筋の人生

1999年の初めての取材で、4歳だった頃に始めたバレエが全国コンクールで賞を取り始めると俄然面白くなり、小学校5年生ぐらいの時に「ずっとバレエをやっていこう、そして、日本で1位になったら世界の舞台へ」と決めたと語ってくれた中村さん。まだ中学3年生だった1986年にダンサーの登竜門ローザンヌ国際バレエコンクールで優勝し、ニューヨークのスクール・オブ・アメリカン・バレエへの奨学金留学を経て、1990年にカナダのロイヤル・ウィニペグ・バレエに入団した。そして1997年にパシフィック・ノースウェスト・バレエに移籍。翌年にはプリンシパルに昇格、以来ずっと第一線で踊り続けてきた。

中村かおりさん 『ロミオとジュリエット』

『ロミオとジュリエット』 のジュリエット ©Angela Sterling

「プロのバレエ・ダンサーとして、最後まで最高の踊りをしたい」。そう語る中村さんの表情は、厳しいプロの世界を20年以上も生き抜いてきた強さを感じさせる。「私が気に入っているのは全幕もの。それが苦になってくるような状態まで踊るのではなく、最高の状態を観ていただける時に舞台を去りたい」。そういう思いが2年ぐらい前に心の中にわきあがり、昨シーズンが始まる前に芸術監督のピーター・ボウル氏に相談したところ、「もうワンシーズン、お願いしたい」と言われ、「喜んで続けさせてもらう」と答えた。「必要とされているんだと、嬉しかったです」

そんな中村さんのたくさんの思い出深い舞台の中でも特に印象に残っている公演は、「昨年の冬にニューヨークで踊った、ロミオとジュリエット」。「私が一番好きな作品なのです。それをニューヨークで踊れるなんて・・・」。踊り終わった時は本当に素晴らしい感動を得ると同時に、「これが最後のロミオとジュリエットなんだ」というさみしさを覚えた。

「子供たちに伝えたいこと」

しかし、引退後の中村さんには、次の仕事が待っている。パシフィック・ノースウェスト・バレエのバレエ学校で教師として後進の指導にあたるのだ。「教えたいとは思っていたので、チャンスがあればとピーター(芸術監督)に言ったところ、昨年の夏に5週間のクラスを受け持たせていただきました。とても楽しくて、やりがいを感じ、教職があいていればと聞いたところ、引退後の仕事が決まりました」

パシフィック・ノースウェスト・バレエのバレエ学校では、幼い子どもたちからティーンまでが、一年を通じてバレエを学んでいる。子供が一生懸命なら、家族もそれを全力で応援することが要求される。送り迎えにしても、費用にしても、楽なものではない。さらに、ある程度の年齢になれば、プロになりたいのか、お稽古事で終わらせるのかを自分で決めなくてはならない。「私はその意味で自分の親に感謝しています。好きなことを好きなだけやらせてくれました。一度もやめたいと思ったことがありません。本当に好きで好きでたまらないという思いでやってきました」

中村かおりさん 『白鳥の湖』

『白鳥の湖』 のオデット ©Angela Sterling

バレエについて子供達に伝えたいことはと聞くと、「プロのバレエ・ダンサーになるということは、簡単じゃないということ」と、きっぱりと答えた。「努力してもなれない人はいる。常に練習、練習で、諦めずにやるしかない。明日できるわけではなく、10年、15年かかってできるようになることもある」

しかし、バレエをやってバレエ・ダンサーにならなかったとしても、バレエの基礎は何にでも役立つという。「例えば、体操、フィギュアスケート、ミュージカルなど、動きを見れば、その優雅さがバレエの練習から来ていることがわかります。その他にも、振付家、バレエ専属のピアニスト、カメラマンもいますね。パシフィック・ノースウェスト・バレエ専属の写真家、アンジェラ・スターリングは、もともとソリストだった人です。だから撮影のポイントを本当によくわかっているんですね」

これからバレエを始めたい、始めさせたいという人には、「とにかくやってみることが大事」という。「やってみないことには始まらない」

中村さんからのメッセージ

「これまで応援してくださった方々に感謝します。今シーズン終了まで踊りますので、ぜひみにきてください。バレエは高尚なものではなく、映画のような感覚で観ていただけるもの。気軽に来てください」

掲載:2014年3月

パシフィック・ノースウェスト・バレエ 2013-14シーズン公演
3月:『ディレクターズ・チョイス』
4月:『夏の夜の夢』
5月~6月:『ジゼル』
詳細は www.pnb.org 参照

※各公演のキャスティングは開幕の約2週間前に発表されるので、中村さんの出演日程も前もって確認できる。

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