美しくメンテナンスされ、季節の花々が咲く、ピース・アーチ国際公園。北緯49度線で隣り合っているアメリカとカナダが協力して管理している国際公園の一つで、その名の通り、両国の平和を願うピース・アーチという大きなモニュメントがあることで有名です。
ピース・アーチ国際公園の位置
アメリカとカナダにまたがって建設された国際公園の一つ、ピース・アーチ国際公園は、車ならシアトルから約114マイル(約183km)、カナダのバンクーバーから約30マイル(約48km)で到着するカナダとアメリカの国境にあります。
このピース・アーチ国際公園は一つの公園ですが、アメリカ側はワシントン州立公園局が管理するピース・アーチ歴史州立公園(ワシントン州ブレイン市)、カナダ側はブリティッシュ・コロンビア州公園管理局が管理するピース・アーチ州立公園(ブリティッシュ・コロンビア州ダグラス市)となっています。
ピース・アーチが建設された理由
この国際公園のシンボルとなっているピース・アーチのモニュメントが建設されたのは、今はカナダとなっている広大な土地などをめぐり、アメリカ合衆国と大英帝国が1812年から1814年にかけて戦った米英戦争(War of 1812)を終結させたガン条約の締結100周年と、五大湖での海軍力を制限するため1817年に締結されたラッシュ・バゴット協定の締結を記念するため。
ワシントン州の弁護士サミュエル・ヒル氏が寄付を募って建設計画を推進し、著名なアメリカ人建築家ハーベイ・ワイリー・コーベット氏がデザインを手がけ、着工から約1年後の1921年に完成しました。
ピース・アーチの片方の柱はアメリカ側に、もう片方はカナダ側に建てられていますが、ピース・アーチのモニュメント自体は、アメリカ側の所有となっています。
ワシントン州の歴史エンサイクロペディア HistoryLink.org によると、1921年9月6日に一般公開された時は、約1万5000人が集まって祝ったと記録されています。
その後、1931年にアメリカがワシントン州側にピース・アーチ歴史州立公園を完成させ、1939年にカナダがブリティッシュ・コロンビア州側にピース・アーチ州立公園を完成させました。
アメリカ側を南北に走る高速道路インターステート5号線(通称I-5、アイファイブ)の前身であるパシフィック・ハイウェイは、1932年にピース・アーチの両側を通るように建設されたそう。
以来、さまざまな公共イベントや結婚式の会場としてだけでなく、憩いの場として開放されています。例年6月にはワシントン州立公園局が主催してライブミュージックやローカルのアート作品などが購入できるインターナショナル・アーツ・アンド・ミュージック・フェスティバル、春から秋にかけては彫刻作品の展示会が開かれます。
ピース・アーチ国際公園の見どころ
アメリカとカナダは地続きで、北緯49度線が国境となっています。
他国と海で隔たれている日本から来ると、「陸地の国境って、どうなってるの?」と不思議に思う方も多いでしょう。
このピース・アーチ国際公園では、アメリカとカナダの国境には石の柱が建てられています。
公園内に留まり、公園に入った時と公園から出る時の国が同じである限り、入国審査を受ける必要はありません。例えば、アメリカ側から公園に入り、公園内に留まり、アメリカ側から公園の外に出る場合、入国審査を受ける必要はありません。でも、アメリカ側から公園に入り、カナダ側から公園の外に出る場合、通常の入国審査を受ける必要があります。
それぞれの公園に入口があり、駐車場もあります。アメリカ側のピース・アーチ歴史州立公園に駐車する場合、ディスカバー・パスの購入(1日$10; 年間$30)が必要です。
最大の見どころは、記念写真スポットとして人気のピース・アーチ。上には、米国旗とカナダ国旗が掲揚されています。ピース・アーチの片方の柱はアメリカ側に、もう片方はカナダ側に建てられています。もちろん、通り抜けることも、触ることもできます。
アメリカ側から見たピース・アーチの上部には “Children Of A Common Mother” と刻まれています。もともと大英帝国の植民地だったという両国の共通点を意味しています。実際は、はるか昔から先住民が住んでいたところに、ヨーロッパからの入植者が来て植民地化され、国が建設されました。
カナダ側から見たピース・アーチには、”Brethren Dwelling Together In Unity”(一致団結して共に住む兄弟)と刻まれています。
アーチの内側にも碑文があります。東側には “May these gates never be closed”(この門が決して閉じられんことを)、西側には “1814 Open One Hundred Years 1914″(1814年から100年間にわたり開いている)と刻まれています。
1814年は、米英戦争(War of 1812)を終結させるためにベルギーのガンでガン条約(Treaty of Ghent)が結ばれた年。
ちなみに、カナダが自治領となったのは1867年。英領北アメリカ法により、オンタリオ、ケベック、ノバスコシア、ニューブランズウィックがカナダ自治領に統合されたことから、この年がカナダ建国の年となります。カナダ政府の公式サイトにある日本語ページに簡単な歴史年表があるので、興味のある方は確認してみてください。
カナダに入国する場合 よく聞かれる質問
このピース・アーチ国際公園には、米国北西部で最も交通量の多い、ピース・アーチ検問所があります。
車で国境に到着すると、車に乗ったままドライブスルー式で検問所で入国審査を受けます。パスポートや永住権カードなど出入国に必要な書類をお忘れなく。
よく聞かれる質問は、次のとおりです。(順不同)
- Where do you live?:どこに住んでいますか?
- Where are you going?:(カナダの)どこに行くのですか?
- What’s the purpose of your trip?:旅行の目的はなんですか?
- Where are you staying?:どこに滞在しますか?
- How long are you staying in Canada?:どのぐらい滞在しますか?
- Do you have any items or substances to declare?:申告するものはありますか?
アメリカに入国する場合 よく聞かれる質問
カナダからアメリカに入国する時に車で並ぶ道路脇の看板は、”Welcome to the United States of America”。「アメリカ合衆国へようこそ」。にぎやかでアメリカらしいですね。
車で国境に到着すると、車に乗ったままドライブスルー式で検問所で入国審査を受けます。パスポートや永住権カードなど出入国に必要な書類をお忘れなく。
よく聞かれる質問は、次のとおりです。(順不同)
- Where do you live?:どこに住んでいますか?
- Where are you going?:(アメリカの)どこに行くのですか?
- What’s the purpose of your trip?:旅行の目的はなんですか?
- Where are you staying?:どこに滞在しますか?
- How long are you staying?:どのぐらい滞在しますか?
- Do you have any items or substances to declare?:申告するものはありますか?
アメリカとカナダを結ぶ The BNSF Railway の線路脇に、古くてさび付いた 『USA CANADA BORDER』 という看板があります。車で並ぶ検問所の脇にあるカラフルな看板と違って、貨物列車と長距離列車アムトラックが通過するだけなので(停車はしません)、国境通過を伝えるためだけの必要最小限の看板ですね。
祝日や旅行シーズンは、国境が渋滞することがあります。待っている間、ドライバー以外の人は車を降りて、公園を見てまわることもできます(検問所の手前で車に戻る必要があります)。
免税店での注意
ピース・アーチには免税店があります。
気をつけなくてはならないのは、免税店の敷地に入ったら、いったん出国する必要があるということ。アメリカの免税店については Duty Free Americas の公式サイトで、また、カナダの免税店については Duty Free Canada の公式サイトで確認できます。
いかがでしたか?陸の国境は、島国出身の人には新鮮な体験になるはずです。カナダとアメリカを往復する際は、ぜひこの歴史ある平和公園を見てまわってみてください。