「エビガニ」という呼び名は、筆者が育った東京・足立区で使われていたものです。昭和30年(1955年)前後の足立区では、水田・小川・池・沼・用水路・溝など、あらゆる水辺にエビガニが棲みつき、大変な繁殖ぶりでした。中には胴体だけで20〜25cmにもなる大型個体もおり、はさみや脚も非常に大きかったといいます。
生態と日本への移入
エビガニは淡水産のザリガニ類で、日本では一般に「アメリカザリガニ」と呼ばれています。昭和3年(1928年)、アメリカのニューオーリンズから日本へ持ち込まれ、その後全国に分布。現在では帰化動物として広く知られています。
アメリカでの呼び名と産地
筆者が渡米して驚いたのは、このエビガニが米国で crayfish(南部では “crawfish”)として一般に販売されていたことです。
アメリカザリガニはテキサス・ルイジアナ・ミシシッピ・アラバマ・フロリダの5州原産で、体長は約12cm。ミシシッピ川流域各地で重要な食材として扱われ、養殖も盛んです。特にルイジアナ州産が米国内生産量の約9割を占めます。
食文化と料理法
食べられる部分は多くありませんが、ゆでるか蒸して尾部(腹部)を食用とします。フランス料理では珍重され、丸ごと煮てオードブルにしたり、グラタン・サラダに使ったり、スープの出汁として利用されます。日本の一般家庭ではほとんど食べられていませんが、在日外国人は好むようです。
ワシントン州での商業漁と販売
- 漁期:6月中旬〜10月上旬(沼池の水温上昇期)
- 漁法:カゴ(trap)を使用
- 宇和島屋での取り扱い:シーズン中はワシントン州およびオレゴン州産の“live crayfish”を活きたまま販売。アメリカ人を中心に根強い人気があり、業者からの紹介があれば常時買い付けを行います。
- その他:スペイン産の冷凍エビガニも販売中。
なお、ワシントン州でエビガニを取るには、例え遊びでもライセンスの購入が必要で、勝手に捕獲することはできません。間違えても、そこにいたからと持ち帰ったりしないで下さい。
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