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シアトルで活躍!日本人シェフ:『wa’z』オーナーシェフ 俵裕和さん 「シアトルらしさのある ”Kaiseki” を」

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俵裕和さん

イングリッシュ・ピーのすり流し。

俵裕和(たわら・ひろかず)略歴:
大阪府生まれ。同志社大学を卒業後、憧れの料理の道へ。京都の料亭で修行を始め、さまざまな店を渡り歩いてキャリアアップし、29歳で割烹店の料理長に。しかし、旅行先のカナダでふと浮かんだ「海外で店を持つ」という夢が自分の中で大きくなり、一念発起して2005年に渡米。シアトルの 『しろう寿司』 や 『田むら』 などで経験を積み、2015年春に独立。シアトルの観光名所パイク・プレース・マーケットでポップアップイベント『Beauty of Kaiseki』 を毎月開催しながら準備を進めてきたレストラン 『wa’z』を2018年3月に開店する。

wa’z
【住所】 411 Cedar Street, Seattle(地図
【公式サイト】www.wazseattle.com

幼い頃からの夢は「料理人」

俵裕和さん

小学生の頃から漫画『美味しんぼ』を愛読し、料理人になることに憧れを抱いていた俵さんが料理の道に入ったのは、大学を卒業した22歳の時。京都の料亭で修行を始め、さまざまな店で腕を磨き、7年後には割烹店の料理長となった。

「働き始めて10年後には自分の店を持ちたい」と考えていたが、2000年代に入ると、海外での日本食の人気ぶりが盛んに話題になり始める。

日本を飛び出して海外で働くシェフの話を見聞きするうち、大学卒業後のカナダ旅行で考えた「海外で日本食を伝える」というアイデアを思い出した。

「海外で自分を試してみたい」。

「シアトルに伝統的な日本食を伝えたい」

一念発起し、日本で修行したシェフを募集していたシアトルのレストランに採用され渡米したのは2005年。

すぐに、日本で自分が修行していた割烹店で出していたような会席料理はシアトルではまだ知られておらず、寿司が主役であることはわかったが、30代になってからの初めての外国生活に必死になっているうちに数年が過ぎていた。

俵裕和さん

2010年を目前に控えた当時のシアトルは、IT産業などに牽引されて急速に開発が進められ、人口が流入し、食の幅が少しずつ広がっていたが、伝統的なものに対するニーズがないのか、ただ知られていないだけなのか、日本食ではやはり寿司が一番人気なのは変わらない。

「それを変えようとするのではまったくない。ただ、もっといろいろな日本食があり、日本の季節や伝統も学びつつ食を楽しむ場があってもいいのではないか」と自問自答する日々が続いた。

渡米10年目に独立

そして、2015年。

「それなら自分がやろう。自分の知識や技術を総動員した “Kaiseki” を作る料理人として自分をプロデュースし、チャンスを自分で作っていこう」。

俵裕和さん

そう決心し、ついに独立して始めたのは、シアトルきっての観光地、パイク・プレース・マーケットでの「ポップアップ」と呼ばれるイベント『The beauty of Kaiseki』だ。地元の旬の食材をふんだんに使った、季節感あふれるコース料理は俵さんが得意とするもので、オープンキッチンではほぼ一人ですべての説明もしながら調理をこなすライブ感が次第に評判を呼び、定員15人が毎回完売。今ではサプライズのある毎月のメニューを楽しみに通う常連客がついている。

人気の理由の一つには、俵さんが目指す "Kaiseki" が、「細かな決まりごとなどがたくさんある高級料理」と日本人が思いがちの「懐石」「会席」とは異なることにもある。「漢字の意味や形にとらわれず、日本食・和食のさまざまな素材・調理法をコースで少しずつ楽しむ「懐石」「会席」のエッセンスを取り入れて、季節を表現したい」。日本語の文章でも俵さんがあえてローマ字で "Kaiseki" と書くのはそのためだ。

夢だった "自分の店" 料理人になって20年目で実現

こうした一人ですべてをこなす地道な努力が実を結び、ついに今月、”自分の店” となる 『wa’z』 をシアトルのベルタウンにオープンする。アマゾン本社キャンパスに隣接し、これからさらに発展が期待されるエリアだ。

「ものすごくいろいろな方々に手伝っていただき、支えていただいていることに感謝しています。お世話になっている方々、応援してくれている方々、ポップアップの『Beauty of Kaiseki』に通ってくれた方々にも、ここまで形になってきたことをぜひ見ていただきたいです」。

俵裕和さん

カウンター12席・テーブル24席の合計36席。カウンターでは9-10コースの Kaiseki($100)、テーブルはベジタリアンまたは肉・魚を入れたチョイスがある御膳($50)が楽しめる。カウンターからもテーブルからも、キッチンで料理が作られる様子が見えるようにデザインされているのはそのためだ。

「料理もそうですが、日本の文化も伝えていきたい。料理に添えたり敷いたりする花や葉の意味合いを伝えて、ただ食べるだけでなはない、経験をしてもらうことが大切だと思っています」。

3月はひな祭り、4月は花見や桜と、メニューは月ごとのテーマで変わり、春夏秋冬のあるシアトルを存分に味わうことができそうだ。

今も苦労することはと聞いてみると、やはり食材を集めることという答えが返ってきた。食材そのものが日本と異なるのはもちろん、いいものを手に入れようと思えば、自分から出かけていき、手にとって見る必要がある。ファーマーズ・マーケットはもちろん、パイク・プレース・マーケット、オーガニック・ファームなどにも出向き、他のシェフにもアドバイスを仰ぎ、フード・コミュニティに常にアプローチをかけている。

「シアトルは高級レストラン(fine dining)が根付きにくいと言われる街。でも、10年以上シアトルに住んでみて感じるのは、"気取らず、堅苦しくないところで、本当にいいものをゆっくりリラックスして味わい、楽しい時間をすごす" というのが、シアトルの "fine dining" ではないかということ。そんなシアトルのカルチャーを盛り上げていきたい」。

営業時間は、水曜から日曜の午後5時から午後10時。

wa’z
411 Cedar Street, Seattle(地図
www.wazseattle.com | www.facebook.com | www.instagram.com

掲載:2018年3月

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