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パシフィック・ノースウエスト・バレエ 『白鳥の湖』 やっぱり生の舞台はいい!

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Pacific Northwest Ballet principal dancer Lesley Rausch and soloist James Kirby Rogers (with Otto Neubert) in Kent Stowell’s Swan Lake, on stage April 15 – 24, and streaming digitally May 12 – 16, 2022. Photo © Angela Sterling.

パシフィック・ノースウエスト・バレエ 『白鳥の湖』 を、開幕初日に観てきました!

数あるバレエ作品の中で最も有名な古典バレエと言われる 『白鳥の湖』 は、チャイコフスキーが作曲した初めてのバレエ楽曲があまりにも有名なので、バレエを観たことのない人でも耳にしたことがある可能性の高い作品です。

ユリウス・ライジンガーが振り付けしたオリジナル作品は、1877年にモスクワ帝国バレエ団が上演しましたが、評価が低かったと言われています。でも、それを大幅改定したマリウス・プティパとレフ・イワノフのバージョンが18年後の1895年にサンクトペテルブルク帝国バレエ団によって上演されて大成功。これが基本形となって、今もさまざまな振付家がそれぞれの解釈や演出で改定し、新しいバージョンを創作し続けています。

Pacific Northwest Ballet company dancers in Kent Stowell’s Swan Lake, on stage April 15 – 24, and streaming digitally May 12 – 16, 2022. Photo © Angela Sterling.

今回上演されたのは、パシフィック・ノースウエスト・バレエの創設芸術監督のケント・ストウェルとフランシス・ラッセルが1975年にフランクフルト・バレエ団のために創作し、1981年に初めて上演したストウェル版。2003年に改訂され、上演されるたびにたくさんの人が劇場に詰めかけます。

パシフィック・ノースウエスト・バレエによると、ストウェル版は、『白鳥の湖』 の真髄といわれる音楽と踊りを見事に融合させたイワノフ版の第2幕のほぼすべて、プティパの第1幕のパ・ド・トロワ、第3幕の黒鳥のパ・ド・ドゥも含めています。また、ストーリー性を高めるため、楽曲の順番に重要な変更を加え、第1幕のほとんど、第3幕のナショナルダンス、第4幕のすべてに新しい振り付けをし、通常はあまり印象に残らないらしい最終幕をオデットと王子のパ・ド・ドゥで飾り、悲劇性をさらに高める工夫がなされています。

Marion Oliver McCaw Hall

ロビーには、これまでオデット/オディール、王子を踊ってきた歴代のダンサーたちの写真などが展示されていました。もちろん、日本出身の中村かおりさんの写真もあり、歴史の短いシアトルでバレエの発展に関わってこられた方々の努力を感じさせます。劇場で鑑賞する方はぜひご覧ください。

開幕前にオーケストラのピットを覗いてみるのもおすすめです

今回の公演では、幕が上がる前にオーケストラを指揮するエミール・デ・クーが、「チャイコフスキーはロシアの偉大な作曲家だが、父方の祖父がウクライナ出身だったことは、あまり知られていない」と観客に語りかけました。

「しかし、今のロシアのウクライナ侵攻で、チャイコフスキーが住んでいた首都キーウに近い家は破壊された。世界には多くの悲しいことがあるが、今夜はウクライナのためにウクライナの国歌を演奏したい。みなさんには起立して聴いていただきたい」

チャイコフスキーは、たびたびウクライナにも住み、この『白鳥の湖』もウクライナに住んでいた時に作曲したと伝えられています。国歌の演奏が終わった後、会場には拍手が沸き起こりましたが、チャイコフスキーというロシア生まれの作曲家がロシアとウクライナ、そしてその他の国々でずっと愛される楽曲を作曲したことを考え、世界平和を願う気持ちが強くなったと同時に、他国への無茶な理由での侵攻や住民に対する非人道的な行為をまだ誰も止められないことに無力感を感じました。

Marion Oliver McCaw Hall

初日の配役は、オデット/オディールの二役はリタ・ビアスッチ、ジークフリート王子はカイル・デービス、そしてジェスター(従者のような道化)は先日取材させていただいた櫻木空(さくらぎ・くう)。公式サイトで初日のジェスターは別のダンサーが決定していたので、櫻木さんに変更になったのは嬉しいサプライズでした!

白鳥のオデットと黒鳥のオディールという性格のまったく異なる二役を一人のダンサーが踊り分けるのは、何度見ても素晴らしい。特に、32回フェッテ(3幕にオディールが踊る回転技)はドキドキしますね!そして、櫻木さんのすばらしい跳躍!白鳥たちの群舞も圧巻で、一人一人のダンサーたちの努力に毎回感動させられます。やっぱり生の舞台はいいですね。

Pacific Northwest Ballet corps de ballet dancer Kuu Sakuragi in Kent Stowell’s Swan Lake, on stage April 15 – 24, and streaming digitally May 12 – 16, 2022. Photo © Angela Sterling.

『白鳥の湖』の結末はバージョンによって異なりますが、ストウェル版は悲劇で終わります。映画と同様、展開も結末も知っている物語でも、心に残るところや目が行くところは、その時々で違いますね。私の場合、今回気になったのは王子の愚かさでした。成人を迎えて母親に結婚相手を見つけろと言われ憂鬱になり、美しいオデットに一目で恋し、なのにオディールの外見に惑わされてオデットだと思い込んで愛を誓い、自業自得の悲劇を迎える -。この後、王子の人生はどうなるのでしょう。

この公演は5月12日から16日までオンラインでストリーミングされるので、ご興味のある方はぜひ公式サイトで詳細を確認してみてください。

【会場】Marion Oliver McCaw Hall (321 Mercer Street, Seattle)
【公演期間】 4/15-4/17、4/21-4/24
【チケット】 公演 $30~$190
【問い合わせ】 (206) 441-2424
【公式サイト】 www.pnb.org
【感染対策】 12歳以上の入場者は、ワクチン接種証明の提示とマスクの常時着用が求められます。

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