2021年1月20日（水）は大統領就任式が行われる日。英語では Inauguration Day といいます。
大統領選挙で当選した次期大統領は、翌年の1月20日正午から任期が開始することがアメリカ合衆国憲法修正第20条により定められています。そして、その前に大統領に就任する宣誓を行うことも、アメリカ合衆国憲法により定められています。
大統領就任式は首都ワシントンD.C.にある連邦議会議事堂の西正面で行われるのが伝統です。第59回大統領就任式のテーマは “Our Determined Democracy: Forging a More Perfect Union”。最高裁判所判事が介添人となり、次期大統領と次期副大統領が就任宣誓を行います。
大統領就任式を子供向けに解説
アメリカの大統領就任式を子供向けに解説したバーチャル・フィールドトリップ『I Do Solemnly Swear: The U.S. Presidential Inauguration』を見つけました。
タイトルの “I do solemnly swear” は、大統領が述べる宣誓の言葉の出だしです。
子どもなら不思議に思いそうな POTUS、FLOTUS、SCOTUS という頭字語の解説や発音、”The Hill” の意味の解説、「新大統領はいつホワイトハウスに引っ越すのか」といった質問への答えもありますよ。
とてもポジティブなトーンなので、安心して見られるかと思います。
今年は感染対策と警備強化で無観客で開催
この平和的な政権交代という民主主義を世界に示す重要な儀式には、通常、数十万人が集まりますが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、そして警備強化のため、基本的に無観客で行われ、直接参加できる人は非常に限られています。
特に、これまでになく厳重な警戒態勢になっているのは、暴力によって選挙結果を覆そうとしたトランプ大統領の支持者が1月6日に選挙人団の投票集計が行われていた連邦議会議事堂を攻撃するという、アメリカの民主主義の根本を揺るがす事件が実際に起こったため。負傷した警官一人と参加者4人が死亡したこと、警備が手薄だったことなどに批判が集中し、議会警察のトップが辞任しています。また、1月13日にはこの事件で「反乱を扇動」したとして、下院がトランプ大統領を弾劾訴追する決議案を可決しました。
以来、首都ワシントンD.C.には2万5000人近い州兵などが配備され、厳戒態勢が続いています。
首都ワシントン D.C. の連邦議会議事堂が東端に、ホワイトハウスが北端に位置する国立公園ナショナル・モール（National Mall）には、米国旗、全50州の州旗、ワシントン D.C.、米国領の旗が設置されました。これらの旗は新型コロナウイルスの感染対策と警備強化のために就任式に出席できない人を表しているそう。18日から20日までの3日間にわたりライトアップされます。また、ここでは19日に新型コロナウイルスによりアメリカで亡くなった40万人近い人々を追悼するイベントも行われます。
大統領就任式の基本的な流れ
20日の大統領就任式の基本的な流れは次の通り。
午前11時：バイデン次期大統領が連邦議会議事堂に到着
午前11時15分：大統領就任式開始
Invocation（祈り）： カトリック神父による祈りの言葉
Pledge of Allegiance（忠誠の誓い）：消防隊長アンドレア・ホール
National Anthem（国歌独唱）：レディー・ガガ
Poetry Reading（詩の朗読）：アマンダ・ゴーマン
Musical Performance（独唱）：ジェニファー・ロペス
Musical Performance（独唱）：ガース・ブルックス
正午：大統領宣誓
大統領の宣誓の言葉は合衆国憲法第2条に次のように定められています。
“I do solemnly swear (or affirm) that I will faithfully execute the Office of President of the United States, and will to the best of my ability, preserve, protect, and defend the Constitution of the United States.”
「私は合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持し、保護し、擁護することを厳粛に誓う（あるいは確約する）」
宣誓式の後、新大統領は就任演説を行います。
就任式：Inaugural Ceremonies
宣誓式：Swearing-In Ceremonies
就任演説：inaugural address
正式に就任した大統領は、ワシントン郊外のアーリントン国立墓地で無名戦士の墓での献花、軍人と軍楽隊にエスコートされてホワイトハウスまでの行進などが行われます。詳細はバイデン次期大統領就任式実行委員（Biden Inaugural Committee）の公式サイトで確認できます。
最年少の詩人、アマンダ・ゴーマンさんが登壇
カマラ次期副大統領が黒人・南アジア系では初の副大統領ということにはじまり、いろいろな「初」のあるバイデン政権ですが、これまでの民主党の大統領就任式で詩を朗読した詩人では最年少の詩人が登壇するのをご存知ですか？
バイデン次期大統領の大統領就任式で詩を朗読するのは、22歳の詩人、アマンダ・ゴーマンさん。16歳の時に国連の若者代表となり、19歳の時には米国初の youth poet laureate になった方。
ゴーマンさんが作成した詩のタイトルは『The Hill We Climb』という以外には明かされていないものの、AP 通信によると「特に具体的な指示は与えられなかったものの、団結と希望を強調するように奨励されている」とのことですよ。
大統領就任式のために作成した詩を詩人が朗読するという伝統は、そう古いものではなく、ジョン・F・ケネディ大統領が1961年に就任式で始めたのが最初だったそう。その後、ビル・クリントン大統領、バラク・オバマ大統領が詩人に詩の作成を依頼し、朗読してもらうという儀式を行ってきました。これまでの詩人の朗読は、poets.org の Inaugural Poems in History でまとめて聴くことができます。
ジョン・F・ケネディ大統領（1961年）
詩人：ロバート・フロスト “The Gift Outright”
ビル・クリントン大統領（1993年）
詩人：マヤ・アンジェロウ “On the Pulse of Morning”
ビル・クリントン大統領（1997年）
1997: Miller Williams, “Of History and Hope.”
バラク・オバマ大統領（2009年）
2009: Elizabeth Alexander, “Praise Song for the Day.”
バラク・オバマ大統領（2013年）
2013: Richard Blanco, “One Today.”
この3人の大統領は読書と文学が好きなことで知られているそう。特にオバマ大統領のおすすめの本は毎回注目を集めますね。
大統領就任式の日のその他の主なイベント
Our White House: An Inaugural Celebration for Young Americans hosted by Keke Palmer
午前10時（EST）からアメリカの若者向けの特別プログラムがオンラインで公開されます。
Parade Across America
午後3時（EST）からアメリカ各地を紹介するバーチャルのパレードが公開されます。
Celebrating America
午後8時30分～午後10時：俳優のトム・ハンクスが司会を務め、たくさんのセレブリティが出演する特別番組が生中継されます。
テレビ中継： ABC、CBS、CNN、NBC、MSNBC
ストリーミング中継： YouTube、Facebook、Twitter、Twitch、Amazon Prime Video、Microsoft Bing、NewsNOW、DirectTV、U-verse
20日に平和的な政権交代が無事に行われ、アメリカの新しい時代の幕開けとなることを願います。
