ジャパンレールパス(通称:JRパス)は、日本を訪れる外国人観光客や、日本国外に在住する日本人に提供されている、特別なJR全線乗り放題パスです。日本全国のJR鉄道(新幹線を含む)、JRバス、JRフェリーを定額で何度でも利用できるため、長距離移動が多い一時帰国や旅行にはとてもお得です。
この記事では、ジャパンレールパスの利用条件、購入方法、価格、使い方をわかりやすく解説します。また、二重国籍の子どもがこのパスを利用する場合の注意点についても詳しく紹介します。
ジャパンレールパス(Japan Rail Pass)とは?
ジャパンレールパス(Japan Rail Pass)は、JRグループが提供する定期券のような乗り放題パスです。購入した期間中は、新幹線(※のぞみ・みずほは追加料金で利用可能)や特急列車、普通列車のほか、JRバスやJR西日本の宮島フェリーなども何度でも利用できるので、日本を広範囲に移動する旅行者にとってとても便利で経済的です。
乗車可能な期間は7日・14日・21日の3種類から選べます。料金は年齢やグリーン車利用の有無により異なります。
ジャパンレールパスを購入できる人(利用条件)
ジャパンレールパスは、以下のいずれかに該当する方が利用できます。
- 短期滞在の外国人旅行者(「短期滞在」の入国資格により観光目的で日本を訪れる外国人旅行者):日本への入国にあたり観光目的の滞在を希望すると、入国審査官はあなたのパスポートに下記の「短期滞在」のスタンプ/シールを押します。このスタンプ/シールがないと、ジャパン・レール・パスの引換・利用ができません。
- 海外在住の日本人で、在留期間が連続して10年以上の人
※10年以上にわたり海外在住であることを証明する在留証明や在留届、永住権カードなどが必要です。
海外在住日本人のジャパンレールパス利用条件(2025年12月31日まで)

日本国外に10年以上連続して居住している日本国籍者は、以下の条件を満たすことでジャパンレールパスを購入・利用できます。
- 有効な日本政府発行のパスポートを所持していること。
- 在留を証明する書類(在留地を管轄している日本国大使館や総領事館などの在外公館に発行してもらう「在留証明書」または「在留届の写し」)を提示できること。
- アメリカ、カナダ、ブラジル在住者は、現地政府が発行した永住権カード(永住カード)で10年以上の居住を証明することも可能です。
在留証明書や在留届の写しは、購入時と日本到着後のジャパンレールパス引換時の両方で提示が必要です。書類の発行日は購入日より前で、かつ発行から6か月以内である必要があります。
2025年12月31日までの販売延長について
ジャパンレールパスは、もともと訪日外国人観光客向けに提供されている特別な乗り放題パスですが、一定の条件を満たす海外在住の日本国籍者も購入できる制度が設けられてきました。
しかし、2017年6月からは利用条件が厳格化され、「海外に連続して10年以上居住している日本国籍者」のみが購入できるように制限されました。
その後、制度自体の終了も検討され、日本国籍者向けのジャパンレールパスは当初、2023年12月末で販売終了と発表されました。しかし、多くの利用者からの要望を受けて再検討され、現在は2025年12月31日まで販売期間が延長されています。
二重国籍の子どものジャパンレールパス利用について
日本と外国の国籍を持つ海外在住の二重国籍の子ども(原則として満20歳以下)がジャパンレールパスを利用する場合、条件を満たせばジャパンレールパスの利用が可能です。
在留証明書の必要性
日本国外に連続して10年以上居住している日本国籍者として、有効な日本政府発行のパスポートと、下記のいずれかの書類を提示することでジャパンレールパスを購入・利用できます:
- 在留証明書(在留地を管轄する在外公館が発行したもの)
- 在留届の写し(在留地を管轄する在外公館が発行したもの)
これらの書類は、購入時と日本到着後の引換時の両方で提示が必要です。
ただし、20歳以下の子どもだけで10年以上の海外在住を証明することは難しい場合が多いため、保護者と同伴で利用する必要があります。
12歳未満の子どもがジャパンレールパスを利用する場合
- 保護者が10年以上海外に連続して居住していることを証明する書類を所持していること。
- その保護者が一緒に旅行すること。
12歳以上の子どもがジャパンレールパスを利用する場合
- 本人の名前が記載されている在留証明書を取得すること。
- 在留届を出している親の扶養家族として登録されており、同居している場合は、同居家族として申請する。
- 外国での JR Pass の購入時・日本国内での引き換え時に1を提示すること。
日本入国時は日本のパスポートを使用すること
日本の出入国管理法により、二重国籍者は日本への入国時に日本のパスポートを使用することが義務付けられています。そのため、ジャパンレールパスの利用資格を得るためには、日本のパスポートで入国し、所定の条件を満たす必要があります。
外国のパスポートで入国した場合、短期滞在のスタンプが必要
二重国籍の子どもが外国のパスポートで日本に入国した場合でも、条件を満たせばジャパンレールパスを利用できます。外国人として入国した場合は「短期滞在(Temporary Visitor)」の入国スタンプ、またはシールがパスポートに押印されていることが必須条件です。
自動ゲートでの入国手続きではスタンプが省略される場合があるため、希望する場合は必ず入国審査官のいるブースでの入国審査を選びましょう。ジャパンレールパスの交換時にスタンプを確認できないと、ジャパンレールパスを受け取れません。
最新の価格表(2024年10月改定以降)
ジャパンレールパスには、座席のグレードによって「普通車用」と「グリーン車用」の2種類が用意されています。それぞれ7日間・14日間・21日間の利用期間から選べるため、旅行のスケジュールに合わせて最適なプランを選べます。
2023年秋の価格改定により料金は以前より高くなりましたが、新幹線や特急列車での長距離移動が多い方にとっては、交通費を節約できます。
利用期間 | グリーン車用 (大人 12歳以上) | グリーン車用 (子ども 6〜11歳) | 普通車用 (大人 12歳以上) | 普通車用 (子ども 6〜11歳) |
---|---|---|---|---|
7日間 | 70,000円 | 35,000円 | 50,000円 | 25,000円 |
14日間 | 110,000円 | 55,000円 | 80,000円 | 40,000円 |
21日間 | 140,000円 | 70,000円 | 100,000円 | 50,000円 |
※子ども料金は6歳~11歳が対象で、大人料金の約半額です。
※価格は税込。
グリーン車:新幹線や特急列車のグリーン車(1等席)が利用可能。座席が広く、静かで快適な移動を希望する方におすすめです。
普通車:標準的な指定席や自由席を利用でき、コスト重視の旅行者に最適です。
ジャパンレールパス購入・受取方法
外国人の場合
- 日本に出発する前に、Japan Rail Pass 公式サイトや、認定旅行代理店でジャパンレールパスを利用するための「引換証(Exchange Order)」を購入します。「引換証」は、紙の引換証または電子引換証(eMCO)になります。日本入国後のジャパンレールパスとの引き換えに必要なので、大切に保管しましょう。引換証は、購入日から3カ月以内に日本国内でジャパンレールパスと交換する必要があります。
- 日本到着後、主要なJRの駅にある「ジャパンレールパス引換所」で、引換証と必要書類を提示してパスを受け取ります。
- 受け取り時に利用開始日を指定します(その日から利用可能)。
海外在住日本人の場合
海外在住の日本人の場合、ジャパンレールパスの購入や受取方法が外国人旅行者とは異なります。ここでは、実際の利用までの流れを順を追って解説します。
- 日本に出発する前に、海外のJR指定販売店・代理店や認定ウェブサイトでジャパンレールパスを利用するための「引換証(Exchange Order)」を購入します。「引換証」は、紙の引換証または電子引換証(eMCO)になります。日本入国後のジャパンレールパスとの引き換えに必要なので、大切に保管しましょう。引換証は、購入日から3カ月以内に日本国内でジャパンレールパスと交換する必要があります。
- 日本到着後、主要なJRの駅にある「ジャパンレールパス引換所」で、引換証とパスポート、10年以上の在留を証明する書類を提示して、ジャパンレールパスと引き換えます。主要なJRの駅には、成田空港、東京駅、大阪駅など全国各地の駅があり、引き換えの営業時間も記載されています。
- 受け取り時に利用開始日を指定します。その日からでも利用可能ですが、その日からすぐに使う必要はありません。
- ジャパンレールパスを受け取ったら、列車の指定席も予約できます。
上記1にあるように、海外に居住する日本人の場合、日本に出発する前に、海外のJR指定販売店・代理店や認定ウェブサイトでジャパンレールパスを利用するための「引換証(Exchange Order)」を購入します。Japan Rail Pass 公式サイトでの購入はできません。
新幹線・特急列車を利用する際のジャパンレールパスの注意点

1. 利用できる新幹線の種類に注意
- ジャパンレールパスでは基本的にすべての新幹線を利用できますが、「のぞみ」「みずほ」は対象外です。
- ただし、2023年以降は追加料金を支払うことで、「のぞみ」「みずほ」も利用可能になりました(専用チケットの購入が必要)。
- 利用可能な主な新幹線:
- 東海道・山陽新幹線:「ひかり」「こだま」「さくら」
- 東北・北海道新幹線:「やまびこ」「はやて」「はやぶさ」
- 上越・北陸新幹線:「とき」「はくたか」
2. グリーン車・普通車の利用範囲
- グリーン車用パスをお持ちの場合は、新幹線・特急のグリーン車(1等車両)を利用できます。
- 普通車用パスの場合は、普通車指定席・自由席のみ利用可能です。
- 東北・北海道新幹線、北陸新幹線、上越新幹線の特別車両「グランクラス」は、ジャパンレールパスでは利用できません。乗車する場合は、全額自己負担でグランクラス料金(特急料金と特別料金)を支払う必要があります。
3. 指定席は事前予約がおすすめ
- 繁忙期(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始)は特に混雑します。全席指定になることもあるので、事前に確認する必要があります。
- 指定席は全国のJR窓口、指定席券売機、または一部オンライン予約サービスで事前に予約できます。
- 自由席は先着順のため、混雑時は座れないこともあります。
4. 改札の通過方法
- ジャパンレールパスはICカードではないため、自動改札機は使用できません。
- 駅員のいる有人改札を通過し、パスを提示してください。
5. 途中下車は自由
- ジャパンレールパスの有効期間中は、途中下車の回数に制限はありません。
- ただし、指定席を予約している場合は、指定した列車に限られます。途中下車後は自由席を利用するか、新たに指定席を予約し直す必要があります。
6. 追加料金が発生するケース
- 「のぞみ」「みずほ」を利用する場合(専用追加チケットの購入が必要)
- グランクラス利用時(全額自己負担)
- 特別車両(個室・寝台車など)を利用する場合
7. 荷物の制限に注意
- 新幹線では、大型荷物(3辺の合計が160cmを超え、250cm以内)を持ち込む場合、事前に荷物置き場付き座席の予約が必要です。
- 160cm未満のスーツケースは持ち込み自由ですが、車内スペースが限られるため注意しましょう。
これらのポイントを押さえておくことで、スムーズかつ快適に新幹線・特急列車を利用できます。特に繁忙期は計画的な予約と移動スケジュールが成功のカギです。
ジャパンレールパスに関するよくある質問(FAQ)
1. ジャパンレールパスは誰が購入できますか?
- 訪日外国人観光客(短期滞在目的で入国)
- 日本国外に連続して10年以上在住している日本国籍者
※日本国籍者は在留証明書などの書類が必要です。
2. 日本国籍者はどこでジャパンレールパスを購入できますか?
日本国外の認定旅行代理店のみで購入可能です。日本国籍者は、ジャパンレールパスの公式サイトでの購入はできません。
3. ジャパンレールパスはいつまで購入できますか?
- 日本国籍者向けの販売は2025年12月31日まで延長されています。
- 訪日外国人向けは引き続き販売中です。
発売期間が2025年12月31日まで延長されたことで、日本国内でジャパンレールパスに引き換えられる期間も2026年3月30日まで延長されています。今後も何らかの変更があるかもしれません。最新情報は公式サイトでご確認ください。
4. 「のぞみ」や「みずほ」新幹線は使えますか?
基本は利用不可ですが、専用の「のぞみ・みずほチケット」を購入すれば利用できます。
5. ジャパンレールパスはどこで受け取れますか?
日本到着後、主要JR駅にある「ジャパンレールパス引換所」で受け取ります。引換証と必要書類(パスポート、在留証明書など)を提示してください。
6. 指定席の予約はできますか?
はい、可能です。全国のJR窓口、指定席券売機、一部のオンライン予約サービスで事前予約できます。繁忙期は早めの予約をおすすめします。
7. 二重国籍の子どもはジャパンレールパスを利用できますか?
利用できます。ただし、日本のパスポートで入国し、保護者が10年以上海外在住であることを証明する書類が必要です。原則、一緒に帰国した保護者の同伴が必要です。
8. 子ども料金(6〜11歳)の年齢判定はいつの時点で決まりますか?
公式サイトから購入する場合は、決済日時点の年齢。海外の販売店で購入する場合は引換証発行日時点の年齢です。
9. 荷物の持ち込み制限はありますか?
- 大型荷物(3辺合計160cm超〜250cm以内)は、事前に荷物置き場付き座席の予約が必要です。
- 160cm未満の荷物は持ち込み自由ですが、車内スペースにご注意ください。
10. 有効期間中は途中下車できますか?
はい、何度でも途中下車可能です。ただし、指定席を予約している場合はその列車に限ります。
まとめ
ジャパンレールパスは、海外在住者が日本をお得に旅するための強い味方です。少し高額に感じるかもしれませんが、東京〜京都〜広島などを新幹線で移動すれば、すぐに元が取れるほどコストパフォーマンスは良いです。次回の一時帰国や旅行で活用して、日本各地の魅力を存分に楽しみましょう!