シアトルのダウンタウンの地下を走るトンネル「ダウンタウン・シアトル・トランジット・トンネル(Downtown Seattle Transit Tunnel, DSTT)」。これは、1990年に完成した全長1.3マイル(約2.1km)の公共交通用トンネルです。
現在はライトレール「Link 1 Line」が運行し、シアトル中心部を南北に結ぶ重要な路線となっています。
トンネル建設の背景
シアトルで地下鉄構想が持ち上がったのは1910年代。しかし本格的な計画が進められたのは1970年代で、都市の成長に伴う交通渋滞を解消し、ダウンタウンを効率的に結ぶ新しい交通インフラが求められていました。
1983年、キング郡議会はバストンネルの建設を承認し、1987年に着工。総工費は4億6,900万ドル。中心部では19ヶ月にわたり Pine Street が閉鎖されるなど、市民生活にも大きな影響を与える工事となりました。
完成と運用開始(1990年)
トンネルは1990年に完成し、当初はバス専用トンネルとしてスタート。キング郡メトロによると、開業初年度から1日あたり約28,000人が利用する交通の要となりました。
当時は「デュアルモードバス」で、トンネル内では電気で、地上ではディーゼルで走行するという珍しい方式でした。
バスとライトレールの共用期(2009〜2019年)
2005年から改修工事が行われ、2009年にはライトレール(現在のLink 1 Line)が開業。ここから2019年までの約10年間は、全米でも極めて珍しい「バスと鉄道が同じトンネルを共有する」時代が続きました。実際にアメリカでこのような運用を行ったのは、シアトルとピッツバーグの2都市だけです。
現在のトンネル(2019年以降)

2019年3月、バスのトンネル運行は終了し、以降はライトレール専用トンネルになっています。
現在は Link 1 Line が通り、北はリンウッド、南はシアトル・タコマ国際空港やアングル・レイクまでを結び、通勤・観光・空港アクセスに大切な交通インフラとなっています。
DSTTのタイムライン
年 | 出来事 |
---|---|
1910年代〜1920年代 | 3rd Ave地下鉄構想が提案されるも実現せず |
1974年 | 本格的なバストンネル計画が始動 |
1983年11月 | キング郡議会が建設を承認 |
1987年3月 | 着工(総工費4億6,900万ドル) |
1989年3月 | 試験運行開始(デュアルモードバス) |
1990年6月 | トンネル完成、9月15日より営業運行開始(1日28,000人利用) |
2005年9月 | ライトレール導入のため一時閉鎖 |
2007年9月 | 改修後バス専用として再開 |
2009年7月 | Link Light Rail(現1 Line)運行開始、バスと鉄道の共用開始 |
2018年7月 | コンベンション・プレース駅閉鎖 |
2019年3月 | バス運行終了、ライトレール専用に |
2022年 | Sound Transit が完全所有権を取得 |
観光客向け活用ガイド
観光でシアトルを訪れる方にとって、DSTTはダウンタウンやワシントン大学などへの移動、空港アクセスにも便利です。
主な駅と周辺スポット
- Westlake Station
- パイク・プレース・マーケット、シアトル美術館、主要ホテル街に徒歩圏内
- Symphony Station
- ベナロヤ・ホール(シアトル交響楽団)、シアトル図書館中央館
- Pioneer Square Station
- 歴史的街並み、アンダーグラウンド・ツアー
- International District/Chinatown Station
- Uwajimaya、日系アメリカ人博物館、豊富なアジア系レストラン
- Stadium Station
- T-Mobile Park、ルーメン・フィールド
空港アクセス
DSTTを通るLink 1 Lineは、シアトル・タコマ国際空港(SEA)まで直通。ダウンタウンから空港まで約40分で到着でき、観光やビジネス利用に便利です。
利用のポイント
- 料金:大人$3.00(距離制、2025年現在)、18歳以下無料
- 支払い方法:ORCAカード、クレジットカード(タップ決済)、モバイルチケットアプリ
- 本数:平日は約10分間隔、深夜は減便あり
まとめ
ダウンタウン・シアトル・トランジット・トンネルは、1990年の開業から30年以上にわたり、形を変えながら市民と旅行者を支えてきました。次にライトレールで地下トンネルを通るときは、この街の交通の歴史を感じられる「地下の物語」を体験してみてください。
