第50回のコラムでは、弁護士に業務を依頼する際に知っておくべきことについて簡単にご説明しました。今回は、弁護士が行うべき業務と弁護士業務における法的規定・規制に関する主な点についてご説明します。
ワシントン州法(RCW2.48.170/RCW2.48.180/RCW 2.48.190)では、米国とワシントン州の弁護士として認可されていない人物に禁止されている条項が規定されています。主な事柄は下記のとおりです。
- 企業の代表またはクライアントの代理人として、弁護士業務料から割り当てをもらう。
- 企業としてワシントン州認可弁護士を通さずワシントン州の法廷に出廷する。
- 法的な決定・アドバイスをしたり、法的な交渉に関与する。
また、弁護士に禁止されている主な行為は下記のとおりです。
- 企業・クライアントの代理人であるにも関わらず、企業との書面での同意なしでその企業の株や所有権を得る。
- 弁護士資格を持たない者と自分の弁護士料を分配する。
さらに、米国とワシントン州の弁護士協会倫理にも、弁護士を対象とした細かい規定があります。主なものは下記のとおりです。
- 弁護士はクライアントの資金(retainer)を自分の事業運用や個人資金として使用してはならない。
- 紛争当事者両者を弁護してはならない(conflict of interest)。
- 弁護士と依頼者間の機密を守らなければならない。
- クライアントの同意なしで法的解決や決定をしてはならない。
これらの法律・規定に違反したと見なされると、ワシントン州法で裁判所侮辱罪を犯したことになります。また、弁護士は米国弁護士協会の規定上、違反行為を犯したとして叱責を受けます。
従って、弁護士を雇う際は、クライアントとなるために必要とされる情報を弁護士に提出せずに、弁護士からアドバイスを求めることはできません。必要な情報とは、利害関係(conflict of interest)がないことを確認するための情報等です。これらを弁護士に伝え、弁護士が利害関係がないことを確認してから、弁護士と業務契約書を交わしてクライアントとなり、法的アドバイスを受けることができます。
業務契約書には通常、業務料金体系の説明や支払い方法のみでなく、弁護士、またはクライアントに義務付けられている事柄が明記されています。クライアントとしては、弁護士には業務上の規制があり、最終決定権はクライアントにあるということを十分理解し、弁護士が法的アドバイスをするのに必要な情報を隠さず伝えること、また、自身も弁護士に全面的に頼らず、問題解決のために弁護士の指示や分析に従って対応・解決策の決定をすることが大切です。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com
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