2026年1月2日、シアトルのダウンタウンにある市庁舎で宣誓式が行われ、ケイティ・ウィルソン氏(43)が第58代シアトル市長として正式に就任しました。宣誓式はオンラインでもストリーミング配信され、市政の方向性を市内外に伝える場となりました。ウィルソン市長の任期は1月1日から始まっています。
宣誓式で示された市政の軸
1982年生まれのウィルソン市長は、近年のシアトル市長の中では最年少世代にあたります。企業経営や政界でのキャリアを積んできた人物ではなく、最低賃金の引き上げ、公共交通の改善、借家人保護の強化などを訴える非営利組織の設立と運営に携わってきました。加えて、物価高騰の影響を受ける一市民としての経験を背景に出馬し、昨年11月の選挙では約2,000票差という僅差で現職市長を破り、当選しています。
市庁舎で行われた宣誓式では、ウィルソン市長が関わってきた非営利組織 Transit Riders Union の共同創設者であり、夫でもあるスコット・マイヤーズ氏が進行を担当しました。式典には、公共交通、住宅支援、地域活動などに携わる多様な経歴を持つ人々が、市民代表として登壇しました。
80年にわたりシアトルのセントラル・ディストリクトに暮らし、家族介護や地域支援に携わってきたシンシア・A・グリーン氏もスピーカーの一人として登壇し、ウィルソン市長を、この街で生活することに困難を抱えながらも居場所を守ろうとしてきた一人だと位置づけました。そのうえで、市長として批判に直面する場面があっても、決して一人ではないと語り、支援を表明しました。
市民参加を重視する姿勢
最後に登壇したウィルソン市長は、「This is your city.(これはあなたの街です)」と述べ、学歴や職歴、収入にかかわらず、誰もがこの街で暮らす権利を持っていることを強調しました。また、一人ひとりが責任を持ち、助け合いながら街づくりに関わっていくことの重要性にも言及しました。宣誓を担当したのは、公共交通の利用促進やバス停の美化活動をボランティアで続けてきたポーリーン・ヴァン・セナス氏です。
宣誓式全体を通じて、選挙戦で指摘されてきた公職経験の少なさに触れる文脈も含めながら、市民参加と草の根の力を市政の原動力とする姿勢が示されました。ウィルソン市長は、市庁舎から一方的に変化がもたらされるのではなく、市民が繰り返し関わり続けることで前進が生まれるとの考えを示しています。
労働条件の改善、最低賃金、社会保障、借家人保護、若者向けの公共交通政策などについても、行政から自然に与えられたものではなく、市民や労働者、学生による長年の組織化と行動の積み重ねによって実現してきたと説明しました。
さらに、ウィルソン市長は、約60人規模のコミュニティ・オーガナイザーで構成される移行チームを立ち上げ、市内各地で市民の声を聞く取り組みを進めていると述べています。すでに700人以上の市民と対話を重ねているとしています。
公共ラジオ局 KUOW は、今回の宣誓式は、個人の勝利を祝う場というよりも、市民参加と草の根の力を市政の中心に据える姿勢を明確に示す場だったと分析しています。
ウィルソン市長のビジョン
シアトル市の公式サイトに掲載されているウィルソン市長のビジョンは、あらゆる背景を持つ人が、あらゆる地域で、共に成長し、街の未来を形づくることができるシアトルを目指すというものです。
誰もが居場所を感じられること、活気ある地域、良質な雇用、健全なビジネス、健康的な環境、そして所得や家族構成を問わず十分な住宅が確保されることが重要な要素として掲げられています。また、公共機関が弱い立場の人々を守り、働く家庭を支え、共有された繁栄に投資することで、市民が行政に信頼を持てる都市を目指すとしています。
公式に掲げられている5つのバリュー
ウィルソン市長のバリューとして、公式サイトでは次の5項目が示されています。
・活気ある地域における、手頃で十分な住宅の確保
すべての所得層の人が、安全で安定した、尊厳ある住まいにアクセスできることを重視しています。
・安全と安心を支えるコミュニティ
公衆衛生と地域のウェルビーイングを優先し、緊急シェルターや支援サービスを含めた形で、ホームレス問題への対応を掲げています。
・誰もが繁栄できる共有された豊かさ
生活費の高騰に向き合い、良質な雇用を生み、地域ビジネスを支える経済の成長を目指しています。
・持続可能な交通と環境正義
自家用車に依存しなくても移動できる交通システムと、クリーンな空気、緑地、気候変動への備えを市の責任として掲げています。
・包摂的で説明責任のあるガバナンス
市民が政策形成に関与し、行政をチェックできる透明で応答性のある市政運営を重視しています。市職員が尊重され、力を発揮できる環境づくりも含まれています。
市長への連絡方法(公式案内)
シアトル市の公式サイトでは、市民がウィルソン市長に直接意見や要望を届けるための複数の窓口が案内されています。オンラインフォームを利用することで、市長宛にコメントや質問、懸念事項を送信することができます。
また、市長名義でのプロクレメーション(記念宣言)やレター・オブ・サポートを希望する場合には、専用フォームから申請が可能です。これらの申請については、原則として3週間以上前の事前申請が必要とされています。
さらに、市長を会合や地域イベントに招待したい場合も、公式サイトを通じて申請を行うことができます。この場合も、準備の都合上、3週間以上前の申請が求められています。

