異人種間結婚が認められた歴史的判決を記念する「Loving Day(ラヴィング・デー)」をご存じですか?
毎年6月12日は、アメリカの公民権にとって大きな節目となった日として知られています。1967年のこの日、米国最高裁判所が異人種間結婚(interracial marriage)を禁止する州法を違憲と判断し、全米で異人種間の結婚が合法化されました。
現在では、多様性やインクルージョンを考えるうえでも大切な記念日として、多くの人に認識されています。
Loving Day とは?
「Loving Day(ラヴィング・デー)」とは、異人種間結婚の合法化を記念するアメリカの非公式な記念日です。
名称は、歴史的な裁判で闘った夫婦「ラヴィング夫妻(Richard and Mildred Loving)」に由来します。
ここでいう異人種間結婚(interracial marriage)とは、人種が異なる人同士が結婚することを指します。たとえば、白人と黒人、アジア系とヒスパニック系など、異なる人種的背景を持つパートナー同士の結婚を意味します。
かつては多くの州でこのような結婚が禁止されていましたが、1967年に違憲と判断されて以降、アメリカ社会は少しずつ多様な結婚のかたちを受け入れるようになりました。
合法化までの道のり-ラヴィング対バージニア州裁判
この裁判の原告は、白人男性リチャード・ラヴィングさんと、黒人女性ミルドレッド・ジェターさん。2人は1958年、異人種間の結婚が合法であったワシントンD.C.で結婚しましたが、居住地のバージニア州では違法とされており、結婚から数週間後に州法違反で逮捕されてしまいます。
裁判所は、「州外での結婚であっても、州法に違反する」として、2人に対し「刑務所に入るか、25年間州外で暮らすか」という選択を迫りました。
2人はワシントンD.C.へ引っ越し、その後ロバート・F・ケネディ司法長官に手紙を送り、ACLU(アメリカ自由人権協会)とともに最高裁まで争いました。
そして1967年6月12日、最高裁は「異人種間結婚を禁じる州法は合衆国憲法に違反する」と判断しました。この裁判(Loving v. Virginia)により、16州に残っていた反異人種間結婚法は撤廃され、アメリカ全土で異人種間の結婚が合法となりました。
映像化されたラヴィング夫妻の物語
この歴史的な裁判は、ナンシー・バアースキー監督のドキュメンタリー『The Loving Story』として映像化され、ピーボディ賞などを受賞。
また、映画『Loving』(2016年)も話題となり、主演女優のルース・ネッガはアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされました。2人の闘いは、現在でも多くの人に勇気を与え続けています。
現在の異人種間結婚に対する意識と統計
異人種間の結婚に対する米国人の意識は、過去60年で劇的に変化しています。
- 1958年:ギャラップの調査で「黒人と白人の結婚を支持」と回答したのはわずか4%
- 2021年:同調査での支持率は94%に上昇
人種別の傾向(2021年)
- 白人アメリカ人:93%
- 非白人アメリカ人:96%
人種による異人種結婚の支持率の差はわずか3%まで縮まりました。
年齢別の傾向
かつては若年層の方が支持率が高い傾向がありましたが、近年は世代間の差が縮小し、全年代で高水準の支持率を示しています。
地域別の傾向
歴史的に南部では異人種間結婚への支持が低かったものの、現在は地域差もほとんど解消されています。
ギャラップは調査報告の中で、「異人種間結婚への反対意見はごく少数にとどまっているが、黒人の市民権が改善されたと感じる人の割合は減っており、新たな市民権法を求める声が高まっている」と指摘しています。今後、「94%という高支持率が今後の上限となるのか、さらに進むのか」も注目されています。