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第12回 子供のいるお産(2)

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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子供をお産に立ち会わせるには、それなりの準備をするべきだと思います。今回は、事前の準備についてお話します。

「子供のころに見た出産がとても怖かった想い出として残ってしまい、大人になっても外傷体験になっている」という話も聞きます。そういうことになってしまった理由は、適切な準備がなされず、また、後でそれがどういう意味があったのかのフォローもなかったためかと思われます。ある妊婦さんは、自分が子供のころに見た母親の出産場面がとても強烈な印象として残り、自分のお産が怖くてたまらない、と言っていました。彼女が言うには、子供のころは母親というのは何でも知っていて何でもできる人だと思っていたのに、その母親が取り乱すのを見て世界が終わってしまうような恐怖感に襲われたのだそうです(その後、彼女は自分の出産経験を通してお産のすばらしさを体感し、他の人のお産に立ち会って励ますことができるほどになりました)。

子供のための出産準備教室というのもあります。私の経験では、5歳から10歳ぐらいの子供に役立つようです。産科のある病院では、たいていこうしたクラスがあります。赤ちゃんの写真をみたり、赤ちゃんにあげるプレゼントを作ったり、人形でお産の様子を説明したり、お産のビデオを一緒に見たりします。ただし、 クラスを1回受けたから出産に立ち会う準備ができたか、というとそういうわけではありません。妊婦検診や、赤ちゃん用品のショッピングなどに参加することによって、家族で赤ちゃんを迎える体勢を整えておくことが大切です。なでしこクリニックでは、子供用の日本語のお産のビデオがあり、お産に立ち会う予定の子供には、それを貸し出して見てもらいます。このビデオは3歳から5歳ぐらいまでの子供たちに大変な人気で、毎日見たがる子がほとんどです。赤ちゃんが産まれるところだけは怖がってお母さんの後ろに隠れるけれど、それでも自分から頼んで見せてもらっていた子供もいます。

お兄ちゃん、お姉ちゃんになるための絵本もあります。日本語では、「うちにあかちゃんがうまれるの」とか、「おかあさんがおかあさんになった日」という絵本、もう少し大きな子には「おへそのひみつ」とか、「うまれるいのち、つながるいのち」などの本があります。英語では “Happy Birth Day!”(by Harris and Emberley)や、”Waitinig for Baby”(by Ziefer)などがあります。

産まれるという概念が少しわかってきたようなら、赤ちゃんが産まれるところを見たいかどうかを本人に聞いてみることも大切です。4歳以上の子供なら、ほとんどの場合、自分の意思を伝えることができると思います。見たくない場合は、祖父母と一緒に自宅で待つか、仲の良いお友達の家に泊まりに行くか、あるいは、誰かと一緒に病院の待合室で待ち、赤ちゃんが産まれてきれいに拭いてもらってから部屋に入ってきても良いでしょう。

また、医療従事者や施設の受け入れ態勢も大切です。担当の医師や助産師に、子供がお産に参加することをどう思うか、早めに聞いておきましょう。出産前に病院のツアーに行った時に、子供を連れてきても良いかどうかを聞いてみましょう。どこの施設でも、子供を責任を持って見ていてくれる大人が1人ついていることが条件になると思います。お産の時にご主人にサポートをしてもらいたい人は、子供を見てもらう人を別に頼みましょう。あるいは、ご主人に子供を見てもらって、ご実家のお母様にお産のサポートを頼むのも良いでしょう。

私にとって最も大切なお産の準備は、子供になついてもらうことです。妊婦検診のたびに子供と遊び、赤ちゃんの心音を一緒に聞き、金魚に一緒に餌をやるなどして、私の周りでは怖いことは起こらないことを覚えてもらいます。あらかじめ子供の信頼を得ておくと、お産の緊張感の高い場面でも、私がリラックスして普段どおりにふるまっていれば、子供も怖がらないようです。

掲載:2005年7月

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