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第45回 会社・事業を買収する際の注意点

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会社を買収した後でさまざまな問題が発覚し、経営が難しくなったということはよくあります。表面的には良く見えていても、将来の経営に差し支えのある制約や妨害の可能性についての調査(Due Diligence)をすることはとても重要です。これは家を購入する際に視察官(Inspector)を雇って検査してから購入するのと同様です。今回は企業・事業を買収する前に気をつけなくてはならない点について簡単に説明します。

企業の法的存在、歴史と過去5年間会計報告書(もし5年以上企業経営がされていた場合)について調査

企業が法的にどの土地でどのような形態で存在しているかの調査は重要です。企業名はあっても、企業が Corporation、または LLC 等で法的に登録されていなければなりません。この際、管理者や株主等の調査も行います。たとえば、もし小規模の企業(非公開会社)で、社長の夫と多数派の株主の妻が離婚騒動中だった場合は、企業の売却に時間がかかるだけではなく、別の法的問題が発生することも考えられます。また、企業が営業活動はしていても、負債を抱え、破産寸前のような状態になっていたら、売却後債権者からの差し押さえが考えられます。

企業の資産と経費・出費の調査

企業経営・運営に必要な備品、家具、または経費、さらに土地・オフィスの賃貸契約の内容、被雇用者への給料や福利厚生等の支払い等の計算をします。たとえば、買い手側としては別のオフィスを利用しようと計画しても、たとえば3-5年の賃貸契約が結ばれていた場合は、妨害要素となる可能性もあります。さらに、被雇用者への給料支払いが滞っていたり、違法採用(移民法・雇用法の違反)をしていたりしていた場合は、罰金支払いの対象ともなります。

対外関係者や取引業者との問題に関する調査

対外関係者や取引業者への支払いが滞っていたり、仮に訴訟にはなっていなくても契約に違反する経営をしていた場合は、買い取り後にこれらの取引業者が未払いの請求、または契約違反行為として訴訟を起こす可能性があります。これらの問題を買収前に相殺することを約束させるため、売り手に保障(Warranty)をさせ、さらに問題があった場合の損害賠償責任を売り手にさせる契約(Indemnification)を結ぶことがよくありますが、それでもこうした問題が発生することはよくあります。

知的財産権・特許権の所有に関する調査

企業の経営者や株主が他社から知的財産権の使用許可を得て企業経営をしている場合は、その使用許可に対する支払い、またその価値や対価の評価も必要です。使用許可料が企業利益に見合わない額になっており、使用許可の期限が短期であれば、更新の際に知的財産権所有者と交渉可能かどうかを確認することも重要です。

製造業者であれば、備品や機械等の検査

商品の製造・売買をする企業にとっては、商品である機械やその備品の点検は重要です。これらの販売価値がなければ、企業を買っても営利にはつながりません。
上記のような Due Diligence(調査)が終了した時点で、買主と売主で Sales Agreement や Stock purchase Agreement 等、必要な契約書を交わし、買収を完了します。完了後、買い主は支払いをしますが、その支払いを分割にすると、買収後の意外な損害に対する被害や法的問題を少なくできます。ただし売主としては一括での支払いを望むことが多いので、この点は両者の力関係によって異なります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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