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第119回 日米間訴訟の管轄地選択について

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第104回のコラムで二重訴訟について簡単にご説明しましたが、今回は、二重訴訟の原因となる管轄権選択の際の法的経緯と手続き上の要件についてご説明します。

まず、米国では、訴訟を起こす際、契約違反から発生する訴訟については、通常、契約書に訴訟の管轄地が設定されているため、その規定にしたがって訴訟管轄が決定されます。しかし、契約書に管轄地が設定されていない場合は、一般的に事物管轄権(事件の起こった場所、または事件に関わる証拠が所在している場所によって決定される権利)と対人管轄権(裁判の対象となる原告と被告の所在地によって決定される権利)を決定した上で、管轄権があると見なされる州/国の裁判所に訴訟を申請します。

もし、原告と被告が別の州または国に所在し、事件の起こった場所も異なる州または国の場合は、一般的に、管轄権を持つ連邦地方裁判所を通して訴訟を起こします。ただし、原告または被告一方が日本に在住、他方が米国内に在住する場合は、管轄権の決定の際、米国側は米国市民/住人側を保護するための手続法を憲法に従って決定しなければなりません。

この管轄地(州)の決定の際、ロングアーム法に従い、原告が被告を提訴する際の訴訟管轄地は、被告が原告の州と最低限の接触(minimum contact)があったかどうかテストし、決定されます。

また、被告側が原告が選択した州で訴訟を受けるにあたって、被告側に負担がないか、その州で訴訟をする意味があるか、原告がその州を選択する理由に正統性があるか、国際訴訟をするための司法機関が整っているか、などの要素が考慮されます。

その上で、原告は適切な裁判所に起訴しますが、その後、ハーグ条約にもとづいて被告側に通達しなければなりません。たとえば、米国にいる原告から日本にいる被告に通達する場合、日本の米国大使館の承認を得た上で日本の被告に通達することが求められます。一般的に、通達には2~3ヶ月程かかります。

被告側に通達されたのち、被告が答弁をする機会がありますが、被告が管轄地について異議を主張し、管轄地は日本にする必要があると主張した場合、管轄地の決定そのものに関する訴訟となり、二国間で同じ案件に関する訴訟が同時進行することになります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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