今年で第52回を迎えるシアトル国際映画祭(SIFF:シフ)の上映作品が発表されました。開催期間は5月7日(木)〜17日(土)の11日間で、71カ国・地域から203本の映画が集まり、ワールドプレミア18本、北米プレミア12本、米国プレミア10本を含む充実したラインナップとなっています。SIFF アーティスティック・ディレクターのベス・バレットさんが言うように、「分断が深まる世界において、映画は溝を埋め、人類の普遍性を理解する助けとなる媒体」。シアトル在住の方はもちろん、5月に訪れる旅行者にもぜひチェックしておきたいイベントです。
数字で見る第52回シアトル国際映画祭
今年の映画祭は規模・多様性ともに高い水準です。
- 上映作品数:203本(長編ナラティブ66本、ドキュメンタリー34本、短編98本、アーカイブ3本、シークレット上映2本)
- 参加国・地域:71カ国
- ワールドプレミア:18本 / 北米プレミア:12本 / 米国プレミア:10本
- 短編映画プログラム:11
- 女性またはノンバイナリーの映画制作者:49%
- BIPOC(黒人・先住民・有色人種)監督:49%
- LGBTQIA+コミュニティの映画制作者:19%
- 第1作・第2作の映画制作者による長編:62%
- 米国配給未定の作品:67%
上映作品の67%が米国内での配給がまだ決まっておらず、映画祭の会場でしか観られない作品が大半を占めます。SIFFフェスティバル・プログラミング・マネージャーのメーガン・レナードも「これほど複雑な芸術的環境の中で作品を製作したすべての映画制作者の勇気と不屈の精神に敬意を表したい」と話しています。
オープニングナイト
第52回の幕を開けるのは、ブーツ・ライリー監督の『I Love Boosters』。冷酷なファッション業界の大物を狙うプロの万引きチームを描く作品で、監督にとって長編第2作にあたります。2018年のSIFFでセンターピース作品として上映されたデビュー作『Sorry to Bother You』以来の新作で、当日はライリー監督も会場に駆けつける予定です。
出演:ケケ・パーマー、ナオミ・アッキー、テイラー・ペイジ、ポッピー・リウ、エイザ・ゴンサレス、ラキース・スタンフィールド、ウィル・プールター、ドン・チードル、デミ・ムーア / アメリカ 2026年 / 115分
オープニングナイト 上映情報
- 日時:2026年5月7日(木)
- 会場:パラマウント・シアター(911 Pine St, Seattle)
- 一般入場:午後6時 / 上映開始:午後7時
- アフターパーティー:上映後に Cannonball Arts にて開催(没入型ギャラリー展示、フォトアクティベーション、フード、ドリンク、DJ Eliogold ライブほか)
- チケット(映画+パーティー):SIFF会員 $55 / 一般 $75(チケット購入はこちら)
- チケット(映画のみ):SIFF会員 $40 / 一般 $35(チケット購入はこちら)
クロージングナイト

映画祭の掉尾を飾るのは、オリヴィア・ワイルド監督・A24配給の『The Invite』。サンフランシスコを舞台に、価値観の異なる2組のカップルが予期せぬ一夜を共にするさまをユーモアたっぷりに描いた作品です。サンダンス映画祭でのワールドプレミア直後にA24が権利を取得し、話題を集めています。ワイルド監督が当日ステージに上がり、終映後はキャストも交えたQ&Aが行われる予定です。
出演:セス・ローゲン、ペネロペ・クルス、エドワード・ノートン / 脚本:ラシダ・ジョーンズ、ウィル・マコーマック / アメリカ 2026年 / 107分
クロージングナイト 上映情報
- 日時:2026年5月17日(土)午後7時
- 会場:SIFF Cinema Downtown(2100 4th Ave, Seattle)
- チケット:SIFF会員 $35 / 一般 $40(チケット購入はこちら)
- 上映後:監督・出演俳優を交えたQ&A
映画祭ハイライト
今年の映画祭で特に注目したい上映・イベントをピックアップしました。
- 『Powwow People』(ドキュメンタリー)— シアトルを舞台に撮影された作品。監督のスカイ・ホピンカがシアトル映画批評家協会から2025年ジョン・ハートル太平洋岸北西部スポットライト賞を受賞している。
- 『Obsession』(カリー・バーカー監督)— 深夜枠で上映されるダークコメディ・ホラー。
- 『Power Ballad』(ジョン・カーニー監督)— 音楽と友情をテーマにした心温まる一作。
- 『エルム街の悪夢』新リミックス上映— DJ NicFit、SIFF、Cross-Faded Cinemaがタッグを組み、ウェス・クレイヴンの名作ホラーに新たなサウンドトラックをあてた特別上映。
- 『The Furious』(谷垣健治監督)— 日本出身の谷垣健治が監督を務め、シェー・ミャオ(謝苗)やジョー・タスリムら実力派が顔を揃えた香港発アクション。2025年のトロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門でも注目を集めた話題作。
- シークレット・フェスト— 入場前にNDA(守秘義務契約)へのサインが求められる、ファン待望の秘密上映(2本)。
日本映画
『炎上』(英題:Burn)

監督:長久允
2026年4月10日に日本公開。監督・脚本は長久允、主演は森七菜。感情表現が苦手な少女・樹里恵(森七菜)はカルト宗教の信者の両親に厳しく育てられるが、家出し、若者がたむろする新宿・歌舞伎町にたどり着く。唯一の居場所を見つけたと思った樹里恵だったが…。
長久監督は2017年の短編映画でサンダンス映画祭ショートフィルム部門グランプリを日本映画として初受賞。長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(2019年)もサンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、国際的に高く評価されている。
出演:森七菜、アオイヤマダ、一ノ瀬ワタル、曽田陵介ほか
公式サイト:enjou-movie.jp
『ルノワール』(英題:Renoir)

2025年6月20日に日本公開。脚本・監督は早川千絵。日本がバブル経済絶頂期にあった1980年代のある夏。東京の郊外に暮らす11歳のフキは、両親と三人暮らし。自由気ままな夏を過ごしていたが、ガンで闘病中の父親(リリーフランキー)と仕事に追われる母親(石田ひかり)の関係がギクシャクするにつれ、感受性の豊かなフキの日常が変化していく。
早川監督は長編デビュー作『PLAN 75』でカンヌ国際映画祭カメラドール特別賞を受賞し、アカデミー賞日本代表にも選出されている。本作はTAMA映画賞最優秀作品賞、アジア太平洋映画賞最優秀新人女優賞・最優秀脚本賞、第7回大島渚賞など多数の賞を受賞している。
主演のフキ役は撮影当時11歳の鈴木唯がオーディションで抜擢され、カンヌ映画祭では「注目すべき10人の才能」に選ばれた。
出演:鈴木唯、石田ひかり、リリー・フランキー、中島歩、河合優実、坂東龍汰
公式サイト:happinet-phantom.com/renoir/
会場
映画祭はシアトル市内の6会場で開催されます。
- SIFF Cinema Uptown
- SIFF Film Center
- SIFF Cinema Downtown
- パシフィック・サイエンス・センター PACCAR IMAXシアター
- パラマウント・シアター(911 Pine St)
- シアトル・セントラル・ライブラリー
チケット情報
各種パスおよびチケットパックは現在販売中です。個別上映のチケットはSIFF会員向けに4月15日、一般向けに4月16日から購入できます。
| 区分 | チケット料金 |
|---|---|
| 一般 | $22(SIFF会員は$3割引) |
| シニア(65歳以上) | $21 |
| 学生(有効な学生証必要) | $21 |
| 子ども(12歳以下) | $17 |
コンペティション部門
SIFFのコンペティションには、映画業界のプロで構成される審査員が選ぶ審査員制コンペティションと、SIFFのオンラインプラットフォームを通じた観客投票で決まるゴールデン・スペース・ニードル賞の2種類があります。
ゴールデン・スペース・ニードル賞は最優秀作品賞、最優秀ドキュメンタリー賞、最優秀監督賞、最優秀演技賞、最優秀短編賞、Lena Sharpe Persistence of Visionアワードの6部門で構成され、受賞結果は5月17日のアワード式典で発表されます。
オフィシャル・コンペティション(賞金 $5,000)

監督:長久允
世界各地の優れた映画制作を体現する6作品が選出されています。国際的な業界関係者で構成される審査員が選考にあたります。
- 炎上(Burn)(日本 2026)監督:長久允(日本語 公式サイト)
- The Friend’s House is Here(イラン/アメリカ 2026)監督:ホセイン・ケシャヴァルズ、マリヤム・アタエイ
- Lady(イギリス 2025)監督:サミュエル・エイブラハムズ
- Mārama(ニュージーランド 2025)監督:タラトア・スタパード(マオリ)
- Silent Friend(ドイツ/ハンガリー 2025)監督:イルディコー・エニェディ
- Sundays(スペイン 2025)監督:アラウダ・ルイス・デ・アスア
ドキュメンタリー・コンペティション(賞金 $5,000)
音楽、ダンス、アート、政治、スポーツ、社会問題、自然など、幅広いテーマを扱う8作品がエントリーしています。
- American Doctor(アメリカ/パレスチナ/マレーシア/カタール 2026)
- Birds of War(イギリス/シリア/レバノン 2026)
- Bucks Harbor(アメリカ 2026)
- Kikuyu Land(ケニア/アメリカ 2026)
- Nuisance Bear(アメリカ/カナダ/イギリス 2026)
- The Seoul Guardians(韓国 2026)
- To Hold a Mountain(セルビア/フランス/モンテネグロ/スロベニア 2026)
- Yo (Love is a Rebellious Bird)(アメリカ 2026)
ニュー・アメリカン・シネマ・コンペティション(賞金 $5,000)
アメリカのインディペンデント映画制作者の作品から厳選された6作品が競います。多様なアメリカの姿を映し出す声を積極的に取り上げるプログラムです。
- April X(アメリカ/ルーマニア 2025)
- Crystal Cross(アメリカ 2025)
- Edie Arnold is a Loser(アメリカ 2026)
- Hot Water(アメリカ 2026)
- Lucky Lu(アメリカ/カナダ 2025)
- Valentina(アメリカ 2025)
ダン・アイルランド賞(賞金 $3,000)
2026年に新設された賞で、SIFFの創設者であり映画制作者・メンターとして長年活躍したダン・アイルランドを称えて設けられました。ハリー・グレグソン=ウィリアムズの支援のもと、ニュー・アメリカン・シネマ審査員賞と同時に、有望な新人米国人監督に贈られます。
ニュー・ディレクターズ・コンペティション(賞金 $5,000)
世界各地の新人・新鋭国際監督によるデビュー作または第2作、計7作品が対象です。米国配給未定であることが参加条件で、独創的な脚本・革新的な映像・独自の視点を持つ作品が選ばれています。
- Becoming Human(カンボジア 2025)
- Cotton Queen(ドイツ/フランス/パレスチナ/エジプト/カタール/サウジアラビア/スーダン 2025)
- Happy Birthday(エジプト 2025)
- Hijra(サウジアラビア/イラク/エジプト/イギリス 2025)
- Shape of Momo(インド/韓国 2025)
- Three of a Kind(デンマーク 2026)
- Trial of Hein(ドイツ 2026)
イベロアメリカン・コンペティション(賞金 $5,000)
かつてスペインやポルトガルの植民地だったラテンアメリカ、スペイン、ポルトガルから選ばれた8作品によるコンペティションです。米国配給未定であることが参加条件で、映画業界のプロフェッショナルと批評家による審査員が受賞作を選びます。
- Balandrau, Where the Fierce Wind Blew(スペイン 2026)
- The Condor Daughter(ボリビア 2025)
- Fifteen(メキシコ/アルゼンチン 2026)
- The Garden We Dreamed(メキシコ 2026)
- It Would Be Night in Caracas(メキシコ/ベネズエラ 2025)
- Iván & Hadoum(スペイン/ドイツ/ベルギー 2026)
- Jaripeo(メキシコ/アメリカ/フランス 2026)
- The Red Hangar(チリ/アルゼンチン/イタリア 2026)
短編映画コンペティション(各部門賞金 $2,500)
劇映画・アニメーション・ドキュメンタリーの各部門でグランド審査員賞が贈られます。受賞作はアカデミー賞短編部門への出品資格を得ることもあります。
プログラム
今年のSIFFは、さまざまなカテゴリのプログラムが楽しめます。
ニュー・アメリカン・シネマ
April X / Chili Finger / Drunken Noodles / Edie Arnold is a Loser / Hot Water / If I Go Will They Miss Me / I Want Your Sex / Late Fame / Lucky Lu / See You When I See You / Valentina
ワールドシネマ
アフリカン・ピクチャーズ(アフリカ各地の革新的な映画):Black Burns Fast / Cotton Queen / Happy Birthday / Kikuyu Land / Promised Sky
アジアン・クロスロード(中央・東・南アジアの多様な映画):Another World / Becoming Human / Burn / Deadline / En Route To / Renoir / Roid / The Seoul Guardians / Shape of Momo / Sons of the Neon Night
イベロアメリカン・シネマ:Balandrau, Where the Fierce Wind Blew / The Condor Daughter / The Garden We Dreamed / It Would Be Night in Caracas / Iván & Hadoum / Jaripeo / Maspalomas / The Red Hangar / Strange River / Sundays
ヨーロッパ:Amrum / Case 137 / Franz / Hen / Lady / Murder in the Building / Primavera / Silent Friend / Tell Everyone / Three Goodbyes / Three of a Kind / Trial of Hein
中東:The Friend’s House is Here / Hijra / Hold Onto Me / Salvation
カナダ:100 Sunset
オーストラリア:Body Blow
ドキュメンタリー映画
American Doctor / The Ascent / Barbara Forever / Beat the Lotto / Birds of War / Boorman and the Devil / Bucks Harbor / Cuba & Alaska / Ghost in the Machine / Hanging by a Wire / Love Chaos Kin / Maintenance Artist / Nuisance Bear / Rising Through the Fray / Soul Patrol / To Hold a Mountain / When A Witness Recants / Yo (Love is a Rebellious Bird)
その他のプログラム
- オルタナティブ・シネマ:実験的な映像と新鮮なナラティブを求めるシネファイ向けの先鋭的な作品。EIGHT BRIDGES
- アーカイブ・フィルム:丁寧に修復された往年の名作。Prisoners of the Earth / Queen Kelly
- カリナリー・シネマ:食の魅力を映像で探る作品。The Big Cheese / One of Our Own: A Tribute to Joan Roca
- フェイス・ザ・ミュージック:音楽をテーマに据えた映画。The Best Summer / Broken English
- cINeDIGENOUS:世界各地の先住民映画制作者による作品。Aanikoobijigan / Crystal Cross / Mārama / Meadowlarks / Powwow People / Reservation Redemption
- ノースウェスト・コネクションズ:太平洋岸北西部(PNW)を舞台にした、またはPNWで撮影された作品。Again Again / Assets & Liabilities / The Life We Leave / Phoenix Jones: The Rise and Fall of a Real Life Superhero / RADIOHEART: The Drive and Times of DJ Kevin Cole / Under a Million Stars
- WTF:ワイルド・テリファイング・ファンタスティック:奇妙で不穏、ときに笑いを誘う作品を集めた枠。Camp / Fifteen / The Furious / Gaua / Obsession / The Restoration at Grayson Manor
- フィルムズ4ファミリーズ:子どもと保護者が一緒に楽しめるファミリー向け作品。Cookie Queens / Songbirds’ Secret
SIFFについて
シアトル国際映画祭(SIFF)は、1976年に初めて開催されてから、年間を通じたプログラムを展開する北米最大規模の映画祭のひとつに成長しました。映画の発見と芸術教育の推進を使命とする非営利文化芸術組織(501(c)(3))です。「映画の発見を通じて、より共感力が高く、喜びとつながりにあふれた世界を育む」ことを目指し、新人からベテランまで世界中の多様な映画制作者の作品をシアトルの観客に届けています。

