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留学生が聞く!社会人インタビュー 第5回: 「自分のやりたいことを追求しながら長期ビジョンを考える」建築プロジェクト・マネジャー 坂上誠さん

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「自分のやりたいことはあるが、それを仕事としてやりきる自信がない」、「新卒のアドバンテージを活かして安定してそうな企業へと就職した方がいいのかわからない」という理由のために、自分のやりたいことを仕事にするか決断に悩んでいる学生は少なくないはず。

今回も、そんな方々には必読のインタビューをお届けします。「建築業界に携わりたい」という、やりたいことが漠然とした想いの中で、たくさんの経験を通してやりたいことを見つけ出した坂上誠さんにお話を伺いました。日本人留学生によるレポートです!

【お話をしてくださった人】
坂上誠さん
日本大学理工学部建築学科を卒業後、日本のゼネコン(建設)に施工管理者として入社。3年後、日本の大学院で建築構造研究室に入るが、ワシントン大学の大学院に編入し、建築マネジメント(Construction Management)を専攻。大学院を卒業後、オプショナル・プラティカル・トレーニング(OPT)を利用し、Turner Construction に入社。2015年に GLY Construction に転職し、2017年5月より Absher Construction にてプロジェクト・マネジャーとして勤務。

【主なトピック】

  • こだわりすぎず、まずは自分が興味のある分野に飛び込んでみよう
  • アメリカで働くなら、英語以外の特技も磨こう
  • 企業説明会やキャリアフェアで、自分の情熱を伝えよう
  • たくさんの経験を通して、自分のやりたいことを見つけよう

こだわりすぎずに、まずは自分が興味のある分野に飛び込んでみよう

-大学時代から建築を学んでらっしゃったわけですが、もともと建築業界に興味があったのですか?

実家が内装会社を営んでいたので、なんとなく自分も建築を選び、日本大学理工学部建築学科に入学しました。

建築学科を卒業した後の就職先は、設計分野、建築施工現場の分野、そして不動産分野の3つの大きなフィールドに分かれます。当時、就職率が60パーセントで就職氷河期と言われ、中でも設計分野は人気で、狭き門でした。私は現場をやってみたいという思いがあったので、建築施工現場の分野を選びました。

-建築施工現場の分野の中から、どのように会社を絞ったのですか?

あまり会社の規模にこだわらずに探しました。私自身、真面目な学生ではなかったですね。どちらかというと、就職活動をした時に、「これはまずいな」という感じでした。会社に売り込めるようなことが無かったので困りました。でも、「とりあえず就職はしないと」と思っていたので就職活動を始めました。家業が内装業だったことや、先輩たちからのアドバイスで、「会社の規模はどうであれ、現場で経験することがすごく大事になってくる。その先の人生がどうなるにしても、いい経験になるはずだ」とよく聞かされていましたから。

経験を積むことは、僕らの職業柄、とても大事になってきます。実際にどのように建物を建てるかをわかっていないと、どんな仕事をするにしてもいい仕事はできません。建物は、一度建ててしまうと後から直すことができず、失敗することができませんので、最終的なものをイメージしながら、何もないところから始めなければいけません。そうなると、経験を通じて、「こういう風になるかな」、「ここでこういう問題が出てくるかな」という、ある程度のイメージができている必要があるのです。

大手の住宅販売企業なども考慮しましたが、最初の3年間は営業などの仕事に回されてしまうという話を聞いていたので、入社してすぐに実際に現場に出させてもらえる会社を、最終的に選びました。

-なぜ就職してから3年後に大学院へ行こうと決めたのですか?

正直、「この企業に入りたい」と思って就職したわけではなかったので、最初に就職したところに長くいるつもりはありませんでした。転職も考えましたが、建築業界での経験以外に自分に何かあるかと言われたら特になかったんです。建築業界内でも3年ほどの経験では転職先はそうそう見つかりません。そう考えると、大学院に入り、もう少し知識をつけてからキャリアアップをする形がいいのかなと思い、大学院に進むことに決めました。

大学生の時は構造が好きだったので、大学院での専攻は構造にしました。キャリアチェンジをするためのステップ、そして、「同じ建築業界だけど、他に自分が興味のあった違うスタンスの職種も視野に入れながら、構造を勉強しよう」と考えたのが、その理由です。実はもうその当時、結婚をしていたので、大きな決断でしたね。

-日本の大学院からワシントン大学に編入した理由は何ですか?

日本の大学院を卒業しようかと随分悩みました。ただ、日本の大学院に通い始めて一年が経ったあたりから、自分の興味が他にあることを感じたのです。実は、日本の建築学科には、建築のマネジメントを勉強できるようなプログラムがありません。これらのことを勉強できる環境を探した時に、アメリカでならできることが判明しました。シアトルやカリフォルニア州にいくつか学校があったので、挑戦しようと思い、渡米しました。

妻が高校生の時にオレゴン州ポートランドに留学していたことがあり、二人でいつかアメリカに住みたいねと話していたんです。でも、実際にアメリカに行くとなると、必ずある程度の英語力が必要となってきます。当時、私はまったく英語ができなかったので、TOEFL の勉強を一生懸命日本でやりました。それでもなかなか点数が伸びなかったので、もう思い切ってアメリカに行ってしまった方がいいのではないかということで、ポートランドの語学学校へ入学しました。かつての妻のホストファミリーに受け入れてもらい、夫婦で語学学校に通いました。当時、27歳ぐらいでした。2人で学生をしていましたから、バイトもできずお金がなく、スターバックスのコーヒーも飲めませんでした。

-「もっと建築に関する知識の幅を広げたい」という想いが、自分のやりたいマネジメントの仕事をアメリカでやることの一歩になったのですね。

企業説明会やキャリアフェアで、自分の情熱を伝えよう

-なぜポートランドから、シアトルにあるワシントン大学に行こうと思ったのですか?

前々から、ワシントン大学のコンストラクション・マネジメントの評判がいいことを聞いていましたし、ワシントン大学が一番最初に入学許可を出してくれたことも決め手でした。さらに、日本人の友達がいたこともシアトルを選んだ理由にあります。日本の大学院は休学扱いだったこともあり、運良く、多少は単位も移行できました。おかげで、1年少しで卒業することができました。

-ワシントン大学での生活はどうでしたか?

正直、かなりきつかったです。英語力がまだまだだったので、昼は ESL、夜に大学院のクラスを取っていました。僕のクラスは社会人向けだったので、授業はほとんど夜にありました。学校に通うと同時に、「どうにかしてお金を稼がないと」と思っていたので、オンキャンパスの仕事を得て、週に20時間働きました。

自分でもよくやっていたなと思います。気が付いたら、日本にいた頃の自分とは別人のようで、モチベーションがかなり高くなっていましたね。ただでさえ自分のキャリアはみんなより遅れていたので、自分を追い込んで、かなり凝縮してスピードアップを常に意識していました。

-ワシントン大学の大学院を1年近くで卒業し、その後はアメリカで就職しようと思ったのですか?それとも日本に帰ろうと思っていましたか?当時のアメリカでの就職活動について教えてください。

もともと、アメリカに来て勉強したいというのも、日本に帰ってキャリアチェンジをするため、ということが頭の中にありました。ですから、アメリカにこんなに長く残るつもりは全くありませんでした。

私が大学院を卒業する時、妻の妊娠がわかりました。妻も大学でカウンセリングを勉強していたこともあり、当初考えていたOPTでのインターンシップなどではなく、本採用での仕事を探さなくてはと思い、アメリカで就職活動を始めました。

具体的な就職活動の内容としては、地元の企業が開催する、オープンハウスと呼ばれる企業説明会や、キャリアフェアと呼ばれる、大学に企業がブースを出して行うキャリアフォーラム、さらには学校のキャリアカウンセリングにもたくさん参加し、相談しました。

求人情報を出している企業にも直接コンタクトを取り、求人内容以外のこともヒアリングしました。「こんな仕事を探しています」、「こんなポジションはありませんか」と自分から聞くようにしていました。そうすると、さまざまな人を紹介してもらえたり、思いがけない繋がりができたりします。

アメリカでは、人脈は非常に大切です。信頼できる人からのレファレンスは大きなチャンスになることを実感しました。というのも、私はワシントン大学の大学院卒業後、OPT(オプショナル・プラクティカル・トレーニング:実務トレーニングを積むためのプログラム)でターナー・コンストラクション(Turner Construction)で働いたのですが、内定を得るまでたくさんの企業にレジュメを送り、自分のやりたい仕事やポジションについて、さまざまな場面でしっかり伝えていたので、後からターナー・コンストラクションの採用担当者に、「あっちからもこっちからもお前のレジュメが送られて来たよ」と言われるほどでした。OPTで働く際にも、「インターンではなく、ちゃんとしたポジションで仕事がしたい」とはっきり伝えておきました。結果として、私は1年間のOPTを利用し、その後H1ビザへのサポートをしてもらうという約束で、ターナー・コンストラクションへ入社することになったのです。

たくさんの経験を通して、自分のやりたいことを見つけよう

-大学と違って、会社に入るとなると、会話力などさまざまな英語のスキルが必要になると思いますが、実際に働いてみてどう違いましたか?

入社当初は、かなり辛かったです。メインの仕事の一つに、ビッディング(bidding:入札)というものがあります。競りのようなもので、プロジェクトごとに価格を決めて、一斉に企業が入札金額を提出するシステムです。でも、ビッティングは競りの逆で、一般的に価格が一番安い入札金額を出した企業がプロジェクトを勝ち取ります。とにかくあっという間に各プロジェクトの成約が決まってしまうため、いちいちメールで確認をしている時間の余裕がありません。それこそ分刻みで関係業者や企業に、電話で値段の確認や交渉をしなければなりません。こちらも、それを元に見積もりを作って施主に提出しなければならないので、交渉力だけでなくスピードと正確さも求められます。

普段の業務では、自分が英語で確認できなかったあやふやなところをメールでフォローアップしていました。間違いがあってはならないので、「こういう話でしたよね」と確認をしていましたね。アメリカの企業では、英語力とは関係なく、会話であったことをドキュメントして、後の証拠になるようにします。

会議やビッディングは大変でしたが、内容を本当にわかっていると英語は関係なくなってきます。英語に自信がなくても、話す内容を完璧に理解していると自然と話せる状態になり、話したいことがスラスラと出て来ます。それこそ理解力で補っていましたね。最初は英語ができないことを気にしていましたが、それを気にするよりも仕事内容をしっかり理解することが大事だと思うようになりました。図面など、日本での現場経験や、大学院での勉強があったので、ある程度補うことができました。

-アメリカでの転職の特徴は何ですか?

アメリカでは、人脈を作ってキャリアアップを狙っていく方法が主流です。自分のこれまでの経験と人脈が本当に大切になります。

先ほどお話ししたように、日本の建築現場での経験もある程度実績としてカウントされていると思います。レジュメを書く際に、今までのすべての経験が、自分のキャリアに効果を発揮しています。

-働く環境が変わる中で、自分を見失わないためのポイントはありますか?

自分がやりたいことにフォローする、それが基本だと思います。自分のやりたいことがあって、モチベーションがあって、それに沿ったことをすれば、自然と仕事は安定するのではないでしょうか。

特にアメリカの場合だと、実力主義の部分もあるので、「安定した仕事がある」と考えるよりも、「どうやったら安定させることができるか」を考えるべきです。

まずは自分のやりたいことを見つけ、それを仕事とし、成果を出します。そうしたら自然と評価も上がり、モチベーションも高くなります。自分のやりたいことなら、がんばってやり通そうと思いますし、面白く、没頭するでしょう。そうしていたらいい仕事もできます。次第に、周りの評価というのは自然と「あいつはいい仕事する」、「あいつはいい仕事するからうちの会社に欲しい」、「ずっと置いておこう」というように安定します。その辺の感覚は、安定した仕事を最初から求める学生と逆のような気がします。自分がやりたいことというのは、あくまで追求してやるのがすごく大事なことだと思います。

-自分のやりたいことはあるが、それを仕事にしようか悩んでいる、それに全てをかける自信がないような、はっきりとやりたいことがわかっていない学生はどうすればいいでしょう?

とりあえずやってみたらいいと思います。人生は一本道ではないですし、かなりいろんなところに行っても、結局は自分のやりたいこともできている、僕みたいな人もいます。それを見つけるまで、いろいろな経験をして、そこで自分のやりたいことを絞っていきました。

昔は、ある程度は自分の中で建築をやりたいという想いがありましたが、その中でも施工なのか設計なのか、それとも構造をやりたいのか絞れていませんでした。ですが、いろいろと行ったり来たりしながら、自分のやりたいことを絞って来ました。それは別に無駄だったとは思っていなく、むしろ今の自分のすべてに活きていると感じています。

これから先、「一本道しかない」と考えすぎてしまうよりも、漠然と「こんな感じのことをやりたい」と思いついたら、とりあえず試してみましょう。それが100通りあるとしたら、そのうちの一つをやってみて、ダメだったら残りの99個を順番にやってみてもいいのではないでしょうか。それはそれで間違いではないと思います。とりあえずやってみて、それに1年なり2年なりかかったとしても、その人の経験になります。そこで何も考えないでずっと「どうしよう」と悩んで時間を費やすよりも、やりながら考えてみたっていいんじゃないかなと思いますね。

-お話を伺っていると、坂上さん自身、会社を辞めて大学院に行く時、アメリカに行く時など、今までに大きな決断をしてきたと思いますが、あまりリスクにとらわれない方がいいですか?

失敗することにとらわれすぎない方が、長いスパンで自分のやりたいことができると思います。

「あまり自分に自信がない」と思う学生がたくさんいると思いますが、「失敗してしまうのではないか」、「自分には能力や素質がないんじゃないか」とそこで諦めるのではなくて、とにかくやってみましょう。

やってみて、それを評価するのは周りです。自分で始める前から、できない、と自分で評価をしてやらないのはとてももったいないことです。自分の中でとりあえずできることをやってみて、それでダメだったら修正することの繰り返しでも全然いいと思います。

過大評価をしろとまでは言いませんが、自分で自分の評価を下げて、過小評価をしすぎてしまう学生が多い気がします。結局、評価をするのは周りの人で、それは結果論ですので、そこを気にしすぎて自分で可能性を狭めてしまうのはとてももったいない。やってみれば可能性は無限大です。宝くじなら買わなければ当たらないし、バスケットボールで言うなら、考えていてもシュートは決まりません。何事もやってみなければわかりません。不恰好でも、とりあえずやってみることはすごく大事なことだと思います。

-ありがとうございました!

取材を終えて:
インタビューの最後に、「アメリカに来てパーソナリティがガラッと変わりました。日本にいた時はどちらかというとコンサバティブで、あまりアクションを取らないタイプ。でも今はアクティブに生きています」と仰っていた坂上さん。その言葉通り、インタビュー後にGLYから転職され、「安定よりも常に上を目指し、人生を楽しむため、生きるために働く」という坂上さんの生き方に沿っていると思いました。

自分のやりたい分野があったら、大小にこだわりすぎず、とりあえず挑戦してみることが大事。挑戦していく中で、たくさんの新しい発見があります。その中で、自分のやりたいことを追求していくうちに、自然と経験が積まれていき、仕事に安定性が生まれます。

私は、坂上さんのインタビューを通して、「チャンスはいつでもある、まずは自分のやりたいことを追求し、そして行動してみることが大切」だということを学びました。そして、挑戦していく中で、自分の長期的なビジョンを作っていく方法もあるのだと。これからより一層、自分らしさを表現したいと力強く背中を押された感じがしました。

田部井愛理さん

取材・執筆:田部井 愛理(たべい あいり):
1994年生まれ。ワシントン大学で Arts, Media and Culture を専攻。

掲載:2017年7月



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