「アメリカで長く仕事をしている」と言うと一番よく聞かれる質問は、「どうすればアメリカで働けるのですか」。
この話をするのに避けて通れないのが、就労許可(ビザ、永住権、市民権)、英語、そして仕事の種類。ここでは最初の二つ、そしてソフトウェア系の仕事に絞ってお話しします。
アメリカでエンジニアとして働くには
「アメリカでエンジニアとして働くには、どうすればいいか?」という質問はそのまま、「どうやって就労許可を取得するか」ということになります。
アメリカが就労許可を出すというのは、世界中の優秀な人を集めて経済に貢献させようということなので、世界中から優秀な人たちがいろいろな方法で来て、アメリカの経済発展に貢献しています。
私の周りにいる日本人のソフトウェア・エンジニア(子どもの時に親と一緒にアメリカに来た人たちは除きます)から、どのような経由でアメリカにたどり着いたかという話を聞くと、おおまかに10種類ぐらいのパターンがあることがわかります。そのパターンをフローチャートにしてみました。
これだけいろいろ選択肢があるのと少し迷ってしまうかもしれませんが、自分にあっていそうなコースはあるでしょうか?
外資系トランスファー安全コース
私の周りの日本人では、このコースでアメリカにたどり着いた人が一番多いと思います。シアトルには Microsoft と Amazon の本社があるので、日本から本社に来るわけです。他にも、Hewlett-Packard などから働き始めて、転職でシアトルにたどり着いたという方もいます。
そういう方はすでに日本で実績があることが多いので、技術的な問題は少なくなると思いますが、欠点が二つあります。一つは会社の事情に左右されるということです。自分の意志だけではアメリカに来ることができないというのがネックになるでしょう。もう一つが英語です。今回ご紹介する他のコースよりもアメリカに来る時期が遅くなるので、そのぶん英語で業務をすることが大変になります。英語がちゃんとできれば、日本での実績があるので、失敗は少ないかと思います。英語力に不安がある人は、日頃から英語を使って本社の人とコミュニケーションしてみるといいかもしれません。
アメリカの学校を卒業して就職コース
最終的には専門職ビザの H1-B というビザが必要になるコースです。
U.S. Citizenship and Immigration Services のレポートによると、2021年度に H1-B ビザを取得した人の最高学歴の割合は、学士が34%、修士が57%、そして博士が7%です。必ずしもアメリカの学校で学位を取得していなければならないということはありませんが、とりあえず大学は卒業していないとこのコースはかなり難しいという統計が出ています。年齢で見てみると、20~24才が2.4%、25~29才が25.8%、30~34才が32.4%、そして35~39才が25.4%と、30代が過半数以上を占めているのがわかります。30代の人たち、これからでも遅くはないですよ!
アメリカの大学院王道コース
母国で大学を卒業し、アメリカの大学院で修士号か博士号を取得して就職するというコースです。私のまわりでは、インドや中国など、アメリカ以外の国から来て働いている人は圧倒的にこのコースが多いと思います。他のコースと比べても一番選択肢が多く、リスクも少ないのではないでしょうか。大学在学中に準備ができる、短期留学などで英語の勉強もできる、奨学金がもらえる可能性がある、就職先が見つからなくても大卒なので潰しがきく。個人的にはこのコースが一番よいのではと思っているのですが、皆さんはどう思いますか?
アメリカの大学叩き上げコース
私はこのコースです(笑)。なので、当然、私としては一番応援したくなるコースです。日本の高校を卒業し、アメリカに留学して英語学校に通い、それから短大、そして4年制大学に編入と、道のりは長かったですが、アメリカの懐の深さを思い知らされました。
このコースの一番の長所は、まだ若いうちにアメリカに来るということです。英語も早く上達できますし、文化にもなじみやすいです。しかし、若いうちから異国で目標を達成していくというのは、かなりリスクが高い選択でもあります。日本の大学からこちらの大学に編入する場合は別ですが、大学を卒業できない・ビザが取れない・就職先が見つからないなどといったリスクを考えると、先の予定が立てづらいのではないでしょうか。また、奨学金をもらうのも大学院より大変かと思いますので、お金がかかるかと思います。でも、トライする価値はあります。高校生の皆さん、「日本の大学はちょっと難しいかな」と思っていたりしたら、ちょっとアメリカに来てみませんか?
“I am in love!” 結婚コース
たまたまアメリカ人と結婚することになった、というコースです。結婚を通して米国永住権(グリーンカード)を取得し、ビザを取得する必要なく、アメリカ人と同じ立場でアメリカで働くことができます。しかし、こればかりは運命みたいなものではないでしょうか。と言っても、仕事だけでなく、国際結婚にまつわるいろいろなことも絡んできます。
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