ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん
Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP
Nadeshiko Women’s Clinic
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更年期には独特の症状が現れます。人によって、現れる症状、症状のひどさ、始まる時期、終わる時期、などが異なります。母親の閉経の時期が普通より早かった場合は、その娘の閉経も早い傾向がありますが、症状などは必ずしも同じとは限りません。
生理の変化
生理が来なくなって一年たつと閉経と呼ばれますが、それまでに生理の量や周期が変わってきます。生理のパターンにも35歳ごろから前回のコラムでご説明したような変化が見られるようになります。そして、40歳をすぎたころから、生理の間隔が短くなり、また、生理と生理の間に不整出血があることもあります。短くなった間隔が次第に長くなり、時々飛んだりしながら、気がつくと「何ヶ月も生理が来ていない」ということになります。更年期には他の病気も多くなり、そのための生理の変化ということもあるので、気になる変化があったら、更年期が原因と決めつけず、一応受診してみることも大切です。例えば、性交のあとに出血が見られる場合は、子宮頚管に良性のポリープができているかもしれませんし、感染症かもしれません。避妊のためにピルやリングを使っている場合は、その副作用での出血かもしれません。子宮体ガンは50歳すぎに起こるもので、40代にはまれですが、一応検査してみる必要があります。また、閉経だと思ったら妊娠だった、という例もあります。
ほてり・のぼせ
ほてり・のぼせはホットフラッシュとも呼ばれます。これは急に一時的に起こるのぼせです。「少し顔がほてるな」という程度の軽いのぼせから、「全身が燃えるように熱い」「汗が滝のように流れて、着替えが必要」というひどい症状まで、個人差があります。軽い人は顔だけに症状が出る場合が多いですが、ひどい場合は胸から背中まで、上半身全体に症状が出ます。のぼせと同時に動悸を感じる人もいます。夜中に起きて、シーツを全部変えないといけないほどの大汗をかく人もいます。しかし、欧米人に比べ、日本人はほてりやのぼせの症状が軽いと言われています。糖尿病や甲状腺異常の場合も似たような症状が出ることがあるので、毎年の健康診断の際に検査をしてもらいましょう。
もの忘れ・集中力の低下
もの忘れがひどくなる人もいます。物を置いた場所を忘れて探しまわったり、知っているはずの名前がどうしても思い出せなかったりします。また、なんとなく脳の働きが鈍くなり、集中力が衰えて、新しいことを学習するのが難しくなります。若年性のアルツハイマーかと心配する人もいますが、これはホルモンの減少が起こっている間にだけ起こる一時的なものです。閉経が終わって、ホルモンが低い状態に落ち着くと、記憶力や新しいことを学習する能力は更年期以前のレベルまで戻るのが普通です。しかし、物忘れがどんどんひどくなる場合は、他の疾患も考えられるので、受診しましょう。
イライラ、怒りっぽくなる
更年期になると、生理前緊張症がひどくなることがあります。これは、更年期になると、ホルモンのバランスが脳に直接影響しているのか、ストレスに対応する能力が少し下がっているのか、あるいはこの時期の女性の生活には特別にストレスが多いのか、はっきりした証拠がありません。これも閉経が来ると落ち着く症状です。
不眠・早く目がさめる
のぼせが原因で寝られない人もいますし、眠りの質が下がってしまう人もいます。眠れないと、記憶力、学習能力、イライラなどの症状がひどくなります。
(2014年3月)