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2020年8月:学生ビザ保持者のオンライン授業に関して

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7月は、学生ビザ保持者(FまたはMビザ)のオンライン授業に関して、大きな動きがありました。トランプ政権により一度発表された学生ビザ規制が一部撤回されたり、米名門大学や州の司法長官によるトランプ政権提訴など、目まぐるしく状況が転換しました。今回のコラムでは、この大混乱のタイムラインを説明しながら、執筆時点での状況をお伝えします。

新型コロナウイルスの感染拡大を避けるため、春以降多くのアメリカの大学はオンライン授業を実施していました。これを受け、学生ビザプログラムを管轄するICE(米国移民局関税捜査局)は、春と夏学期に関しては、留学生はアメリカに残りオンライン授業を受けることができるとしていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず秋学期も対面授業を再開しないと発表した大学が多くなると、7月6日、トランプ政権は、秋学期にオンライン授業のみを実施する大学に通う留学生の滞在は認めない、そして、そのような状況でもアメリカに滞在し続ける留学生に対しては、国外退去の手続きを開始すると発表しました。そのため、留学生は、母国に戻る、または、対面授業を実施している、あるいはハイブリッド式授業(対面授業とオンライン授業を併用)を実施している大学へ編入するという選択を余儀なくされるという状況になりました。

このトランプ政権の突然の発表に対しては、発表と同時に、留学生の教育機会を奪っている、無理矢理ハイブリッド式の授業を実施すれば、留学生はもちろん、アメリカ人の生徒や職員の健康を危険にさらす可能性があるなど、多くの批判が集まりました。また、多くの大学にとっては留学生が支払う学費が大きな収入源となっていることもあり、当然、大混乱を招くことになりました。

トランプ大統領は、「学校は秋学期には対面授業を再開しなければならない」と繰り返しているだけで、特にこの規制のベースとなる理由には触れなかったため、留学生を盾に強制的に対面授業を再開させようとしているという声もあり、発表の2日後には、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学が、規制の差し止めを求め、米政府を提訴しました。これを複数の大学が支持し、留学生がアメリカに滞在しオンライン授業を受けられるよう要請しました。また、17州とワシントンDCの司法長官も米政府を提訴するという状態にまで発展しました。結果的に、14日、トランプ政権は、新規制を撤回することを決定しました。よって、執筆時の7月30日時点では、留学生は、3月9日の時点で大学に在籍していた場合は、秋学期がオンライン授業のみであっても、アメリカで学業を続けることが可能になりました。しかし、新入生としてビザが必要な留学生の場合は、対面授業またはハイブリッド式の授業を実施しない限り、ビザは発給されません。

なお、大阪米国総領事館、福岡米国領事館および札幌米国総領事館では、ビザ発給・渡航制限の対象外の学生・交流訪問者(F・M・J)ビザ、貿易駐在員・投資駐在員(E1・E2)ビザを含む一部の非移民ビザサービスが再開されています。しかし、対応できる申請に制限があるため、ビザ発給には通常よりも時間がかかることが予想されます。また、東京都内での新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、東京米国大使館では、現在も非移民ビザ、および移民ビザの面接は停止しており、具体的な再開の日程は現段階では決まっていません。

琴河・五十畑法律事務所 弁護士・琴河利恵さん
Kotokawa & Isohata, PS
6100 219th Street SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043. USA
Phone: (206) 430-5108
www.kandilawyers.com

コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。また、移民法は頻繁に改正があります。提供している情報は、掲載時に有効な情報です。読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法の弁護士にご相談ください。

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