MENU

第17回 駐在員(出向社員)と現地採用社員の雇用労働条件とその法的権利

  • URLをコピーしました!

外国企業がアメリカに子会社・関連会社を設けた場合、そこでの事業拡大のために必要な人材を採用しなければなりません。多くの企業は本社・親会社から別会社である子会社に従業員を派遣するとともに、現地での採用を行います。

今回は、駐在員(出向社員)と現地採用社員のアメリカ子会社での法的権利と、日本本社とアメリカ子会社のアメリカにおける企業体としての法的責任の仕組みについて簡単にご説明します。

現地採用社員は親会社とは別会社となっている子会社のみと雇用契約を結びますが、駐在員は親会社と子会社の両方と雇用契約を結んでいます。

例えば、ある社員がアメリカ子会社に駐在員として派遣される場合、たいがい数年間の契約で、その間はアメリカ子会社の従業員のように業務を遂行し、その後は本社に戻ります。給料は親会社が駐在員に直接支払う場合と、子会社が駐在員に支払い、子会社がその額を親会社に請求する場合などがあります。いずれにしても、契約上は親会社の雇用者が駐在員の監督をまかせられているため、子会社で人員削減のための解雇があったとしても、法律上は駐在員はその対象外とすることができます。過去に現地採用のアメリカ人が解雇されながら駐在員は解雇されなかったため、解雇された現地採用社員のアメリカ人が国籍と民族に対する差別を理由に日本企業の本社と子会社を訴えたケースがいくつかありましたが、いずれも原告のアメリカ人が敗訴しました。

ただし、企業の駐在員に対する雇用契約の内容と管理の度合いによっては、企業側が敗訴することもありえます。こうした訴訟や駐在員と原地採用社員間の雇用問題を避けるには、日本の本社は駐在員に給料を直接支払ったり、駐在員の日常業務を管理したりするなどして、できる限り駐在員を本社の管理下におく必要があります。

次に、親会社が子会社の日常業務を管理することによって、親会社が法的に不利な立場になる例ご紹介しましょう。

一般に、法律上は日本の本社は子会社とは別の企業体なので、別の組織として運営されている限り、アメリカで子会社が訴えられても子会社の責任であって、本社に法的責任が問われることは通常ありません。

ただし、日本の本社が日常業務の管理を含め子会社の社員規定などを管理しすぎると、親会社も子会社同様、法的責任を負うことになりかねません。例えば、本社が子会社での退職年齢を設定したり、性別によって雇用形態を変更したりしたために、子会社の元社員が差別を理由に本社と子会社の両方を訴えたこともあります。

また、企業がグローバル企業として本社と子会社ともにリストラを計画していた場合は、アメリカ子会社の現地社員同様、駐在員もアメリカの雇用法に基づいた処遇を受けます。例えば、リストラにおいて年齢・性別・国籍・民族などの理由で、あるアメリカ子会社勤務の現地社員または駐在員が不当に解雇された場合は、日本の本社も子会社と一体の事業体として告訴される可能性があります。この場合、駐在員も子会社だけでなく親会社に対して差別に対する主張をすることができます。

実際には原告側が子会社と本社の両方を相手に賠償金を求めるケースが非常に多いです。本社が子会社の日常業務の管理をすればするほど親会社が告訴される可能性が高く、訴訟の際は証拠となるあらゆる資料を提示するようアメリカ側から求められます。

いずれにしても、社員を解雇する際は、業務評価と部門評価に基づいて計画的かつ公平な人員削減をすれば、アメリカ子会社と日本の本社との業務管理関係にかかわらず訴訟の可能性を減らすことが可能です。同時に、アメリカ子会社レベルではもちろん、日本本社内での社員教育の一環としてアメリカでの差別に関する教育をすること、そして社員の手引きにアメリカ雇用法に関する情報を盛り込むことによって、社員の認識を高めることも、アメリカでの訴訟の可能性を減らす大きな要素になります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

  • URLをコピーしました!

この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!

もくじ