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第24回 秘密保持契約(NDA)とは?

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秘密保持契約(Non Disclosure Agreement-NDA/Confidentiality Agreement)とは、通常、企業間の契約で業務契約を終結する以前の交渉の段階で結ばれる契約で、企業秘密を外部に漏らさないことが目的です。

企業の業務契約を結ぶには、相手の企業の業務を知る必要がありますが、その企業の情報の中には第三者には知れられたくない情報があるため、その漏洩を最小限にとどめるのが目的です。例えばそれぞれの業界には競合関係にある企業が存在しますが、その競合他社に自社の経営や利益向上のための戦略を知られ、アイデアを盗まれたり、利用されたりすることによって自社の利益に悪影響が及ぶこともあるからです。特に特許を所有する企業にとっては、この秘密保持契約書は業務提携にあったての交渉条件として重要な契約書になります。

内容としては、1)どの内容・企業情報をお互いに開示するか、 2)どのような情報を企業秘密として定義するか、3)例外として開示できる情報は何か、4)開示された情報をどのように利用していくか、5)情報(特にコンピューターに保存されている情報)の移動や持ち出しに関する制限、6)開示する期間と企業秘密保持の期限、7)どこの法律に準拠するか、ということが契約書の主な条項としてあげられます。

上記の条項をどのように規定するかはお互いの力関係と交渉力によります。例えば、ある製造業者または販売業者がある大手スーパーマーケットチェーン店に商品を置く交渉をしたところ、スーパーマーケットが企業秘密保持の期間を無制限にし、準拠法律もそのスーパーマーケットの本社が位置する州になっている契約に一方的に署名することを要求する場合があります。もし販売業者が条項の内容変更を求め、それに応じずに署名をしなければ業務提携をしないとスーパーマーケットが主張した場合は、交渉力が販売業者にまったくなくなります。多くの州ではこうした大手企業の中小企業を相手にした支配的な契約を認めず、契約書そのものを無効にすることがあります。特に秘密保持も期限のない契約は不当な契約とみなされるので、署名をする前に期間・期限は十分考慮し、相手側企業に正当な期間を設定するよう要求するべきです。ただし仮に契約の条項が一方的な内容であったとしても、カリフォルニアでは案件が法廷に持ち込まれた場合は裁判官が契約書の書き換えをすることもあります。

さらにその後業務提携が結ばれ、企業間に紛争があった場合ですが、どのように紛争解決をするかによってこの秘密保持契約書が重要な役割を果たします。例えば、この秘密保持契約とは別に企業間の業務契約上で紛争を調停にて解決すると規定していた場合は、この秘密保持契約書なしでは調停の内容が外部に漏れる可能性があります。それは関係者やその争点等を内密に進める法廷を通した裁判とは違い、調停の内容は秘密にする必要がないからです。このようにもし調停の内容が外部に漏れたら企業秘密も漏れる可能性があるので、もし企業間のもろもろの業務契約上で紛争解決法を調停を通してすると規定していた場合はなおさらのこと事前に秘密保持契約書を結んでおくことが重要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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