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第92回 ワシントン州の有限会社法改定のお知らせ

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2016年1月1日をもって、ワシントン州有限会社法(Limited Liability Company Act)が大幅に改定されることになりました。

有限会社法は、一般的に株式会社法に比べ、組織としては柔軟性のある企業体ですが、新しい法律であるため法律自体が経営者同士の契約に依存することが多く、経営者同士の法的問題解決が複雑かつ困難であると言われてきました。したがって、裁判所での問題解決も時間と費用がかかり、裁判諸を通して権利を主張し、損害賠償を要求しても、裁判所費用や弁護士料が賠償金を上回る結果になることがあります。

これを受け、ワシントン州立法機関は、ワシントン州弁護士協会の協力の下、2015年に有限会社法の改定を承認するに至りました。これにより、2016年1月1日をもって、多くの条項が改定されるか、新しい条項が追加されます。

新条項のうち、おそらく経営者の権利と義務に直接大きく影響するのが、「経営者の法的責任の基準」(RCW 25.15.038)です。この条項では、Manager と Member 両者(経営者)に対する会社への忠義と配慮の基準を明記しています。

例えば、A という有限会社経営者3人のうち1人の経営者が別の企業経営をすることによって、有限会社 A の営業利益に悪影響を与えたり、その1人の経営者が有限会社 A の情報を自分の経営する他企業の利益のために使用したりすることは法的に禁止しています。

つまり、既存の有限会社法にはこのような競合禁止を法的に義務付けていなかったのに対し、2016年度からは、経営者同士が競合禁止契約を結んでいなくても、競合をすることによって会社に不利になるような経営をする経営者を法的に裁判所を通して訴えることが可能になります。

特に、経営者同士の関係が悪化し、経営者解散や分離の話が進んでいる期間に経営者の違法行為が過去多く発生してきたため、この改定法により経営者の不法行為や誤った管理に対する制裁がより明確になります。

また、同条項では会社に対する配慮を怠ったり意図的に会社に損害を与える経営者の行為を法的に禁止し、さらに経営者同士の公平な経営を義務付けています。

したがって、経営者同士で共同経営契約書(Operating Agreement)が結ばれている場合でも、経営者の行為(無配慮)によって損害を受けた場合は、裁判所を通しての解決がより安易にできることを予測しています。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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