第26回のコラムでは、未支払金回収の法的権利について簡単にご説明しましたが、今回は、その法的権利を実際に執行する際(債権回収)の法的手続きについてご説明します。
どのような取引でも、契約によって支払いの時期が決められていますが、場合によっては、正式契約がなされなくても請求書によって支払いが義務づけられることがあります。期日を過ぎても支払いをしなければ、債権者が滞納の通知を出し、それでも未払いのままであれば多くの場合は 債権者が裁判所を通して支払い請求をするか、裁判所を通さずに法的書類提出をすることによって法的財産の差し押さえが可能になります。
さて、債権者としては、支払い命令が裁判所から出た段階で、債権回収の法的権利が発生しますが、これだけでは実際に未払金を回収できるという保証はありません。従って、差し押さえの具体的方法として、ワシントン州法 Title 60 RCW(Liens)では、差し押さえの一般的種類と方法を定義しています。また、ワシントン州法 RCW 4.56.190(Judgment Lien)では上記のように裁判所を通して判決の出た債権者の差し押さえの権利 について規定しています。さらに、債権差し押さえ手続きを通して、RCW 60に従った債務者の土地や家だけに対する差し押さえだけではなく、ワシントン州法 RCW 6.27(Garnishment)では、債務者の給料/収入の一部、または債務者の銀行口座等から自動的に負債額の支払いを 受ける方法を規定しています。この債権者財産の差し押さえ手続きについては、裁判所手続きが別途必要となります。
例えば、家主が家の修理の為にコントラクターを採用し、その支払いを怠った場合は、裁判所に告訴状を出さずに、滞納期日または作業終了日から90日以内であれば、債務者の家の差し押さえの権利を確保することができます。さらに、もし債務者が債権者と訴訟中で、その想定請求額/賠償額が100,000ドルの場合、訴訟が終了するまで家の評価額からこの100,000ドル分を差し押さえることができます(Prejudgment Lien)。この場合、訴訟が終了し、損害額が決定され、その支払いを終えるまでは、 債権者への支払い、または了解なしでは、債務者は家を売ることが難しくなります。
このような手続き方法は、どのような業務委託にも該当します。債務者としては支払い滞納を無視せず、 債権者の要求額や業務 に問題があるのであれば早いうちにそのことを債権者(業者)と話し合うか、請求金額の分割払いについての交渉をするなどして、 裁判所の介入を避けることが重要です。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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