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第63回 雇用者が従業員の Facebook を見て解雇?

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最近は、Facebook のようなソーシャルメディアを通して昔の友人と再会したり、ざっくばらんな付き合いやコミュニケーションをしたり、また、営業活動をしたりする方が多くなりました。今月は、従業員がこのようなソーシャルメディアを通して、会社の内情や上司に対する悪口・冗談を言った場合の法的責任と解釈について簡単にご説明します。

まず、全国労働関係委員会(National Labor Relation Board)では、雇用者が従業員の保護された言動(protected concerted activity)を監視・制御することを禁止しています。米国最高裁判所では、従業員の保護された行動を、「お互いに共通の目的を持って従業員同士が話し合いをすること」と定義しています。

2010年10月27日に、ソーシャルメディアで上司の悪口をポストした American Medical Response to Connecticut, Inc(AMR)の従業員が解雇され、全国労働関係委員会が同社に対して告訴状を提出するまでは、このようなソーシャルメディアに関する雇用法の問題はそれほど浮上しませんでした。たとえば、それまで多くの企業では、「Facebook 等のソーシャルメディアにコメントや写真をポストする前に、雇用者の承認が必要である」というような従業員規則が当たり前でした。しかし、この件で、雇用者の従業員のソーシャルメディア等でのコミュニケーションを制御することが違法、つまり全国労働関係委員会法 Section 8 に反するという判決が出たため、企業の従業員規則等、ソーシャルメディアを制御する企業規則が改正され始めました。

判例(2012年)として、メルセデス・ベンツの某営業所が、顧客集めのためにホットドッグやポテトチップス等の安物の飲食物を営業所に来た顧客に提供したことに不満を持った営業担当者が、Facebook にその不満をポストし、それを見た営業所のマネジャーがその営業員を解雇したケースについてご紹介します。裁判の結果、営業担当者の行動は保護された行動(protected concerted activity)との判決が出されました。理由は、営業員はベンツを販売する立場として、営業所が安物の飲食物を提供したことによって顧客に悪い印象を与えるだけでなく、ベンツのイメージを変え、将来のベンツ販売に影響を与えるという意見を述べることにより、ベンツ営業所の改善を求めたからだとしています。

従って、仮に従業員が会社や雇用者の悪口をソーシャルメディアを通して他の従業員に公表しても、それが自分の意見を表明し、それに対する考えを他の従業員から求めているものであれば、内容が仮に上司や会社に対する軽率的または否定的な発言でも、それを理由に解雇することはできません。

ここで重要なのは、「従業員の行為・行動・発言が、保護されている発言」であることと、その目的が、「お互いに共通の目的を持って従業員同士が話し合いをする」ことが条件です。ですから、必ずしも、ソーシャルメディアでの言動のすべてが合法であり、雇用者がどのような言動に対しても従業員を解雇する権利がないということではありません。その内容や発言を受け取る相手によっては、合法な解雇の対象となると見なされることもあるということです。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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