今回は民事訴訟の際の証拠開示(Discovery)の際に一般的に行われる法的手続きについての概要をご紹介します。
まず、第53回のコラムで簡単にご紹介した通り、告訴状が原告から裁判所に提出された後、被告人は争点に対する答弁をします。その後、お互いの争点と異議の内容について弁護士同士での話し合いが始まり、証拠開示を行いますが、これらの証拠開示の概要はCourt Rule 26 に説明されています。
この証拠開示の過程で、お互いの立場を実証するため、宣誓陳述書(Affidavit/Declaration)、質問状(Interrogatory)、書類提出要求(Request for Production)等を相手側に提出し、宣誓のもとで証拠提出を求めます。原告側は告訴状を裁判所に提出すると同時にこれらの宣誓陳述書(Affidavit/Declaration)、質問状(Interrogatory)、書類提出要求(Request for Production)等を被告人に要求することもできます。その後、書面上の証拠との比較と真実性を確証するために、供述録取(Deposition)や召喚状(Subpoena)を要請し、相手側の提出書類や主張に対する実証検査をします。なお、どのような証拠提出が必要とされるのかについては第62回のコラムをご参照ください。
証拠開示を求められた側の弁護士としては、相手の要求する資料/証拠書類が、案件または争点に対する解決のために必要な書類か確認する必要があります。弁護士と依頼人の間の極秘情報に関する書類の提出は避けなくてはなりません。そのため、証拠の保護命令書(Protective Order)を相手側に提出し、証拠開示資料の範囲を限定することがあります。しかし、企業秘密のような資料も、案件に関係する内容である限り、または開示を求める側が嫌がらせのために開示を求めているのでない限り、一般的には限定した範囲で開示をする必要があります。
それに対し、証拠開示によって案件関連資料を受領した側は、その内容を確認します。その際、要求したにも関わらず提出されていない書類がある場合や回答が得られない場合は、相手弁護士と詳細を確認する会議を必要とします。それでも相手側が証拠開示に協力的でない場合は、時として裁判所に強制証拠開示の申請書(Motion to Compel)を提出して強制的に証拠を開示させることも可能です。それでも証拠開示に協力的でない場合は、法廷侮辱罪(Contempt)としてとがめられます。いずれにしても、証拠資料を受け取る側としては、案件の規模によっては最終的に相手側から数百万枚ページの書類が提出されることもあります。
このように、この証拠開示過程は、米国訴訟の論点と異議の信憑性をはかるために特に重要で、争点の鍵となる書類は裁判での証拠として保管され、この証拠開示によって多くの民事訴訟の判決が下されます。しかし、上記のような過程は、往々にして時間と労力がかかり、クライアントにとっては弁護士料/裁判費用が相当な額になるので、裁判を起こす前にコストを十分考慮して慎重に解決策を練る必要があります。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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