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社内でワクチン接種を推奨するためにすべきこと

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4月4日現在、全米で約32%が最低1回のワクチンを接種(USA FACT データより)しており、現在弊社でも既に半数が1回目の接種を完了しています。

国を挙げてワクチン接種を推奨していますが、非常に慎重になっている人、接種率が上がるまで様子見する人、接種したいが情報が不十分な人等、様々な理由でワクチン接種をしていない人達もいます。

雇用主の立場上、従業員の健康対策や感染リスク軽減を考えると、できるだけ早く全員がワクチン接種を完了して欲しいのが本音ではないでしょうか。

「雇用主は従業員に接種を強制できるか?」という疑問の声は、新型コロナウィルスのワクチンが完成した頃から出ていました。結論から言うと、法的に問題ありませんが、必要性の立証と訴訟リスクを考えると、顧客と頻繁に接触する業種以外では推奨しないというのが模範解答になるかも知れません。そこで、今回は従業員にワクチン接種を促すために雇用主ができることについてまとめてみました。

疾病管理予防センター(CDC)は、これらの従業員を接種へと動かすには、雇用主がCOVID-19ワクチン接種に関する情報を提供し、サポートを実施する仕組み作りが必要であると説明しています。ワクチン接種を迷っている従業員が知りたいことは、大きくわけて下記の3点と思われます。

  • 副反応はあるのか、安全なのか、効果はあるのか
  • どこで受けられるのか、どのように予約できるのか。
  • 平日しか予約できない場合、有休扱いにできるのか、接種後体調が悪く仕事ができない場合の補償があるのか。

これら情報の周知方法についてまとめてみましたので、是非参考にしてください。

もくじ

ワクチン情報

まず、ワクチンの安全性や効果などの情報ですが、これは CDC がポスターを用意しています。インターネットでは重篤な副反応が出た事例や死亡事例などが紹介されていますが、実際は筋肉注射が痛いといった COVID-19 でなくても一般的なワクチン接種と同じ症状で終わっていることが多いです。

もちろん個人差があるため、健康体であっても副反応がないとは言い切れませんが、雇用主は出所の確実なデータを従業員に提供する必要があります。

予約方法

予約方法は各自治体によって異なるため、雇用主の情報収集が必要です。

弊社オフィスがあるオハイオ州ハミルトン郡ではワクチン接種受付サイトを立ち上げ、受けたい日にちと場所(Zip Code)を入力すると、予約可能な施設リストが表示され予約できるようになっています。

この他、Walgreens などのドラッグストアチェーンや Kroger などの大手スーパーマーケットのドラッグストア部門でも独自に予約を受け付けています。現在はまだ希望通りに予約を取るのがやや難しいようですが、日に日に予約は取りやすくなる傾向にあるようです。また、急にキャンセルが出ることもあるので、「頻繁にチェックし継続して探し続けることが重要」と接種を受けた弊社の従業員は話していました。

従業員による体験談

接種した弊社従業員の一人は、「接種から2日経過したが、副反応は特になく注射した場所に触れたり、腕を動かすと少し痛い。ぶつけて青あざができたような感じだ。他にあえて言うならば睡眠不足のように少しだるい程度で、これが副反応か他の要因かわからない」「副反応の報告は2回目の接種時が多いようなので追って報告する」とのことでした。

一方、週末にワクチン接種したもう一人の従業員は、「注射直後は特に何の違和感もなく、規定通り15分休憩して帰宅したが、接種した2時間後位から急に全身がだるくなり、軽い頭痛と微熱もあった」「1時間程度横になり、うとうとして目が覚めたらほぼ治っていた」と語っていました。もし平日に接種後出社していたら、この従業員は恐らく早退していたと思われます。

このような実際に接種した人の話を聞くことで、「特にネガティブ要素がなければ受けた方が良さそうだ」と考える従業員は増えるでしょう。

ここで重要なのは、CDCが推奨するように、雇用主が従業員にこれらの情報提供を依頼する場合のトラブルです。情報提供者を匿名にして体験談やFAQをSNSやイントラネット等で広く発信する、個別の質問は人事を介し直接コンタクトをしないなど、法的リスク回避はもちろん、社内トラブル回避への工夫も必要です。

また、自発的でも医療知識のない情報提供者が「妊娠していても接種に問題ない」などの不適切なアドバイスを避けるよう徹底する必要があります。さらに、個人的な会話を耳にした従業員が誤った情報を信じる可能性も念頭に入れなくてはなりません。

CDC では専門知識に関して地元の医療関係者から話を聞いたり、質問できる機会を作る方法も提案されています。

ワクチン接種のための休暇

昨年から臨時的に作られたCOVID-19関連の有給休暇制度であるFFCRA(従業員数500名未満の雇用主は税控除となる)が、任意ではありますが、2021年9月末まで延長されました。その際、その用途に関しても使用できる条件が追加され、ワクチン接種日、接種後の体調悪化により勤務できない期間、COVID-19の検査後に結果が出るまでの待機期間にも適用されることとなりました。

これらを従業員に周知することで、ワクチン接種を促進する効果が期待できます。ただし、接種後に証明書類を提出する義務がありますが、接種後の体調不良時やCOVID-19の検査後の結果判明までの待機期間は書類が提出できない場合があるため、制度悪用の可能性が否定できない点は注意が必要です。このように、ワクチン接種のために有給休暇を提供する場合、計画的な接種を推奨することが必要となります。副反応による休みの可能性も念頭に置き、各従業員の予約状況を確認してオペレーションに支障がないよう配慮しなくてはなりません。

ワクチン接種しない人への配慮

ワクチン接種を促進するあまり、個人の信条や諸事情により接種しない従業員が差別的対応を受けないよう注意することを忘れてはいけません。

例えば、ある部門では全員接種が完了してマスク不要となりましたが、別部門では数人が接種していないためマスク着用を義務付けられている場合など、接種していない従業員を非難するような事態も想定されます。

現場を管理するスーパーバイザーにワクチン接種を原因とした差別が起こらないよう教育する必要があります。

ワクチン接種後のマスク着用

ジョンソン&ジョンソン製ワクチンの場合は1回の接種、その他の場合は2回の接種が終わった後、2週間経過すると Fully Vaccinated(予防接種完了)状態となります。

CDCは、この状態では室内に集まっても良い、マスク着用も不要としています。しかし同時に「ワクチンが有効か不明なため、引き続きマスク着用を推奨する」という混乱を招く対応をしています。

公共の場でのマスク着用は現地の法令が解除されない限り、引き続き必要ですが、職場でのマスク着用に関して大半の弁護士や人事関係者は、ワクチン接種が完了していてもマスク着用を継続すべきという意見です。これは訴訟リスクを回避するためと考えられます。

ただ、現実的には一定エリアの全従業員がワクチン接種を完了しているのであれば、CDCから許可されている少人数の集まりとみなされ、マスク着用はしなくてよいと考える人もいます。この辺りの判断は現場によりますが、リスクに対して慎重を期するなら、やはり着用を継続させるのが妥当と思われます。

結局のところ、ワクチン接種の効果は接種完了者が増加してみないとわからないことが多いです。しかし、従業員にワクチン接種を促進することで、自社のオペレーションを正常化し、社会全体のコロナ収束にも貢献することができます。この点も含めて社内で情報発信し、ぜひパンデミック終焉を早める一翼を担っていただきたいと思います。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

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