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アメリカの最低賃金上昇に関する動き

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2018年から各州の最低賃金に関するニュースが人事業界をにぎわせていますが、おそらくこれには2つの大きな理由があります。

一つはアメリカ連邦法の最低賃金が2009年に現在の7.25ドルになって以来10年間も変更されていないこと。そしてもう一つは、ご記憶の方も多いと思いますが、2012年にニューヨークで起きたファストフード店従業員による賃上げデモです。これらが州や郡・市といったローカルレベルで最低賃金上昇ラッシュが起きている原因と言われています。そして2018年から2019年にかけて、実に21もの州とコロンビア特別区において最低賃金の引き上げが実施されているのです。

業種柄、チップ収入がほとんどなく、最低賃金だけで勤務していたマクドナルド、バーガーキング、ウェンディーズなど、ファストフードの従業員ら約100名が、2012年により高い賃金とより良い職場環境を求めてストライキを決行しました。生活に十分な賃金を得ていなかった彼らは複数の仕事を掛け持ちし、中にはフードスタンプ(生活保護の一種)を受給している者もいました。このストライキに共感した他都市のファストフード従業員も全米各地でストライキを行うようになり、この動きは最終的に全米150以上の都市に拡大。その後も勢いは衰えることなく、2014年末には「時給15ドルを勝ち取ろう」というスローガンへと変わっていきました。

一方、この賃上げ要求の流れを好機と捉える政治家もおり、徐々に法制化されてサンフランシスコ、ロサンゼルス、ピッツバーグなどの都市で最低賃金が15ドルになると、これに影響を受けた各州でも最低賃金が引き上げられる流れとなりました。さらに、単年での引上げに留まらず、数年先までの金額を予め設定する、毎年の物価上昇率にスライドし金額を設定するとった法律が成立する州や都市も出てきたのです。

下記は中西部・南部各州とニューヨーク州、カリフォルニア州、ワシントン州の2019年の最低賃金一覧表です。

※データは2019年1月10日現在の発表値
※各州の発表情報や雇用関連サイト情報から収集していますが、最新情報は公式情報を必ずご確認下さい。

シアトル市の規定はワシントン州とは異なり、やや複雑なため上記リストには記載していませんが、2019年1月1日から500名以上の従業員がいる大規模企業は16ドルとなりました。なお、2018年は医療給付制度への拠出有無により2種類存在した金額は2019年から一本化されています。次に、500名以下の企業は原則として15ドルですが、医療給付に対し時給換算で最低3ドルの拠出または(加えて)チップ収入が1時間あたり3ドル以上ある場合は12ドルに設定されています。

中西部のインディアナ州は、2019年も連邦法と同じ最低賃金が時間あたり7.25ドルと据え置かれています。実はインディアナでも州議員による最低賃金法案化の動きがあり、2018年1月に提出された法案では「最低賃金は時間あたり2019年6月30日より10ドル、2020年6月30日より13ドル、2021年6月30日より15ドルとし、2022年以降は物価上昇率に合わせて調整する」というものでした。しかし、この法案は翌月には早々に議会で否決され、本日現在実現に至っていません。

最低賃金をめぐる議論は、長きにわたり労働者とエコノミストの両者を隔ててきました。賃金上昇が米国経済にとって有益であるか有害であるかを判断する多くの研究は、矛盾する結論に達していたからです。

より高い賃金を支持する者は、「低賃金労働者は、物価上昇に合わせて賃金が上がれば購買意欲が増し、これが経済を後押しする」と言います。一方、反対派は、「自由市場経済が賃金を決定すべきであり、州が義務付ける最低賃金の上昇は事業運営に悪影響を与え、物価上昇を招き、失業者の増加にさえつながりかねない」と主張します。最低賃金引き上げを行う人口の多い州と、経済を優先する人口の少ない州とに二分されたアメリカ、はたして実経済はどのような結論を出すのでしょうか。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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