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アメリカにおける従業員のソーシャルメディア利用と雇用主のリスク対応

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下記はアメリカのソーシャルメディア利用者に関するデータです。グラフを確認するまでもなく、ツイッターや Linkedin などソーシャルメディアの利用は世代を問わず生活の一部となり、ビジネス利用も珍しくなくなっています。

アメリカのソーシャルメディア利用者に関するデータ

手軽に情報発信できることが魅力のソーシャルメディアですが、それ故にトラブルも見受けられるようになりました。多くの企業ではソーシャルメディアの個人利用に関し、法令順守の範囲で就業規則内に規定を設けていると思いますが、今回は雇用主としてどのような対策をとるべきかあらためて考えてみたいと思います。

もくじ

従業員のソーシャルメディアへの書き込みで企業に損害が生じる

情報発信が簡単であればこそだが、深く考えずにした些細な書き込みが原因で大きな問題へと発展する場合もあります。

・炎上
まだ記憶に残っている方もいると思うが、2017 年に開催されたインディ 500 自動車レースで、日本人の佐藤琢磨選手が優勝したことに対し、デンバーポストの記者(個人アカウントから投稿したが、雇用主を公開していた)が「メモリアル・ウィークエンド(戦没将兵追悼記念日の週末、インディ 500 の開催時期)に(第二次世界大戦で敵国であった)日本人が大会で優勝したことは不快である」とツイートしたことが人種差別として大炎上した。

・情報漏洩
日常的に機密性の高い情報に接していると、機密情報への注意が不十分になることも少なくない。例えば軍人が個人のフェイスブックを通じ内部写真や資料、パスワードなどの機密情報を意図せず漏らしていることは度々指摘されている。また、パンデミック以降は、企業の人員削減情報が公式発表より先にソーシャルメディアに拡散される事態も起きた。エクソンモービル社では、株主総会で人員整理は実施しないと発表したものの、「パフォーマンスが悪い」と評価する従業員数を増加させ大量解雇しているという内部情報が、元従業員によってソーシャルメディア上に漏洩したことは記憶に新しい。

・会社への不満
会社への不満をソーシャルメディアに書き込む人も多い。上司が不愉快な発言をした、仕事が面白くない、顧客から無理な要求をされた、競合他社に価格競争で負けた、品質問題がトラブルとなっている等々、これらはニュースにならない些細なものであるが、会社の評判を貶めるには十分すぎる情報である。しかしながら憲法で保障されている言論の自由もあって、これらを一概に禁止することはできない。

従業員のソーシャルメディア利用規定と NLRA

雇用主は従業員にソーシャルメディアの利用を禁止することはできません。また会社の悪評、職場環境への不満、福利厚生や給与などに関して書き込むことを禁止することもできません。これらの書き込みは、NLRA(National Labor Relations Act)という労働関連法で従業員の保護される活動の一環とみなされるからです。では、従業員のソーシャルメディアでの発言を制限することはできないのでしょうか。

ソーシャルメディアの書き込みを会社の規則によって統制することは可能です。例えば先の記者の書き込みによる炎上に対し雇用主のデンバーポスト社は翌日、「我々の記者が無礼なツイートをしたことを謝罪する。彼はすでに弊社の社員ではなく、当該ツイートはわが社の信念や意見を代表するものではない」と公式に謝罪、問題となった記者を社内規定により即時解雇したことと併せて会社への被害を最小限に食い止めました。

一般的に就業規則に記載すべきソーシャルメディア関連の項目は下記の通りです。

  • 書き込む前に書き込みの影響も含め熟考し、特に差別などの法的問題がないか検討する
  • 社内や取引先に関する情報は一切書き込まない
  • 会社を代表するような発言をしない
  • 虚偽や不確実な情報を書き込まない
  • 会社に不利益となるような発言をしない
  • 勤務時間内のソーシャルメディア利用を禁止
  • 会社への不満は、ソーシャルメディアよりも社内の問題解決手順に則り申告する方が解決の可能性が高い

※就業規則にソーシャルメディア項目がない場合は、すぐに人事マネジャーやコンサルティング会社等に相談することをお勧めします。

また、さらに統制したい企業は下記についても従業員に求めています。

  • 自身のプロフィールに社名を公開する場合は承認が必要
  • 会社・業務に関する情報開示は管理職以上のみ許可
  • 会社関連の情報は人事が書き込みをした内容のみリツイート可能

このような社内規定に違反した場合は罰則があり、解雇もありうることは従業員に周知すべきです。また、雇用主も定期的にソーシャルメディアを監視し、規則違反を放置しないようにすることも肝要です。遵守されていない規則は存在しないも同然とみなされるからです。規定違反の投稿が見られた場合は直ちに投稿者本人に注意し、削除・修正を依頼、同様の内容を他のソーシャルメディアにも投稿していないか確認する。悪質なものは口頭や書面での警告の他、解雇対象となり得ることも告知すると同時に、投稿された不満に対し雇用主が可能なことは改善することも重要です。

ソーシャルメディア関連トラブルの対処

もし従業員によるソーシャルメディアの書き込みで問題が起きた場合、雇用主としてどのように対応すべきでしょうか。

最も重要なことは迅速な行動です。コメントの修正や削除、顧客や取引先に関するものであれば不適切投稿への謝罪、会社としての見解発表など事実確認ができた時点で速やかに実施することが必要です。ソーシャルメディアへの投稿内容は驚異的な速さで全世界へ拡散されてしまうためです。その後投稿した従業員への懲戒、社内注意喚起やトレーニングの実施など、再発防止を徹底することも忘れてはいけません。このように問題を引き起こす可能性もあるソーシャルメディアですが、広報、採用、コミュニケーション等に活用できる情報発信ツールとしての価値は非常に高く、ビジネス利用も飛躍的に伸びているのが現状です。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

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