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第4回 子どもと敏感期

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モンテッソーリ教育

モンテッソーリ教育のことを少し調べてみたり、勉強をしてみると、「敏感期」という言葉がよく出てきます。

敏感期というのは、マリア・モンテッソーリがいう「子どもが何かに強く興味を持つ一定の時期(特別に敏感な感受性を持つ時期)」のことで、敏感期の間、子どもは特に「集中して同じことを繰り返す特徴」があることが指摘されています。

敏感期にはいろいろな種類があり、特に子どもが誕生してから6歳までの幼児期に、さまざまな特徴が見られます。

今回と次回は、この敏感期とその種類についてお話したいと思います。

敏感期とその種類

モンテッソーリ教育 敏感期とその種類

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敏感期には「運動」「秩序」「感覚」「言語」「書く」「読む」「数」「文化」などがあり、これはモンテッソーリの園にあるエリアとよく重なります。

つまり、モンテッソーリ園の環境はいろいろな敏感期にいる子どもに寄り添ったクラスルームになるように考えられているのです。

モンテッソーリは子どもの敏感期に気づいてあげることが重要であると述べました。敏感期にはその事柄の学習意欲が高く、繰り返して練習することを喜んでする時期なので学びも早いのですが、その時期を逃すとその勢いが消えてしまうからです。

運動の敏感期類

「運動の敏感期」は自分の身体を思い通りに動かせるように、生活に必要な運動能力を獲得しようとする時期です。生後6ヶ月から4歳半くらいまで続きます。

子どもは自分の身体の主人公になりたがっている、とよく親御さんにお伝えするのですが、子ども達は周りにいる大人の動きをよく見ていて、何でも真似をしようとします。
0~3歳の子どもは自分の身体を思い切り動かし、立つ、歩く、つかむ、押す、引っ張る、はめるなどの動きを、目を輝かせながらやっていきます。動きをマスターすることに喜びを感じるのです。

3~6歳になると、今度はマスターした一つ一つの動きを組み合わせ、使いこなし、日常生活に活かしていくことに喜びを感じます。

ちなみにモンテッソーリのお教室では、教具に取り組むことを「お仕事」と呼んでいますが、これは大人の考える仕事とは異なります。子どもの「お仕事」は子どもが成長をするために必要な能力や知性の芽を引き出してくれる活動のことを意味しています。

例えば、お皿を片付けるという行為を、大人はお皿を片付けてテーブルをきれいにするという目的達成ために、どうやったら効率良く行えるか考えお皿を運びますが、子どもの場合はお皿を運ぶ行為そのものが楽しく、1枚づつその動きをマスターすべく何回でも繰り返し運びたがります。

動きの敏感期にある子どもの行動の特徴としてはさまざまな例がありますが、階段を降りることを覚えた子どもが何度も階段を上り下りしたがったり、テッシュを箱からすべてひっぱり出したり、葉っぱや石を下水道の穴に落とすことに夢中になったり、ボタンというボタンを押したがったり、ドアノブや鍵に夢中になったり、などがあります。私の息子も2歳の頃に卵を割ることに夢中になった時期がありました。

少し大人が不思議に思う行動やイタズラに思える行動も、敏感期について知っていると、成長のヒントとして腑に落ちるかもしれません。

秩序の敏感期類

「秩序の敏感期」は順番や場所、習慣にこだわりを見せる時期で、6ヶ月から4歳頃に強く見られます。

スポンジのように何でも吸収していく中で、子どもは世の中の仕組みを秩序立てて理解していきます。そして、その秩序が乱れると不機嫌になったり、泣き出したりするといったことがあります。

例えば、いつも同じ道を通って公園から帰る道を別の道で帰ろうとしたら子どもが泣き出すなんてことも。私の息子もまだ幼かった際にガレージのドアを開けてから、車に乗るという順番で日々過ごしていた中、ある日ガレージのドアを開けずに車に乗ったらとても機嫌が悪くなったということがありました。順番がいつもと違うことに違和感を感じたのですね。

ストローラーをお母さん以外の人が押すと怒りだしたり、いつもお父さんが座る席にお母さんが座ると嫌がったり、そんな体験をされた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。秩序の敏感期には規則正しい生活習慣を持ってあげることが、子どもの心の安定にも繋がります。夕ご飯を食べて、お風呂に入り、静かな遊びをしてから、歯磨き、絵本を読んで就寝など毎日の流れが同じように続くことで、子どもは生活の中に秩序を感じ、安心します。

また、おもちゃや持ち物が同じ場所に置いてある環境も、子どもが安心感を得て、自分で出して片付けるといった習慣作りに役立ちます。秩序の敏感期は、まさに子どもがこれから世界へと踏み出していく上でのコンパスを心の中に構築していく時期と言えます。

感覚の敏感期類

モンテッソーリ教育

「感覚の敏感期」は、0歳から6歳と長く続きます。

その前半は感覚ですべてをたくさん吸収する時期で、3~6歳、つまりプリスクールからキンダーガーテンに通う幼児期は、五感が大きく磨かれ洗練される時期となります。

人は五感(見る、聴く、嗅ぐ、触れる、味わう)から世界の情報を取り入れていきます。詳しく言うと、身体全体を使って感覚器官からの刺激が脳へと伝わり、脳から運動器官へと伝わります。五感は大切な世界を理解する窓口というわけです。

幼児期はこの感覚器官を使うことによって、それぞれの期間の機能を洗練させることのできる時期。つまり、「感覚の敏感期」は一生に一度きりの、感覚を素晴らしく洗練されることができる時期なのです。

子どもの特徴としては、小さなアリの様子にとても興味を持ってじっと見つめて動かなくなったり、色ごとにおもちゃの車を一列に並べたり、お花の匂いをかぐことを喜んだり、小さな音や微かな音に気がついたりします。また、味覚に関してもこの頃に「家庭の味」を覚えると言われています。少しの塩加減だったり甘味にも敏感な時期ですが、味覚の記憶が将来へと繋がる敏感期になりますので、子ども達にはぜひ栄養あふれる手作りの味を楽しんでもらいたいですね。

幼い時に食した「家庭の味」が、生涯に渡り、子どもの心を温めてくれると考えると、責任も感じると共に楽しい食卓を作っていきたいと思いますね。

今回は三つの敏感期について触れましたが、次回は「言語」や「数」などの他の敏感期についてお話できたらと思います。

掲載:2021年4月

文・写真:斉藤カルコーヴァン智美
慶應義塾大学文学部、シャミナード大学院幼児教育学科卒。ワシントン州ベルビュー市にある日本語と英語のバイリンガル幼稚園、ピカケスクール園長。日本では株式会社オリエンタルランドが経営するチャイルドセンターの立ち上げに携わり、プログラム・マネージャーを務めた。渡米後はモンテッソーリの教員として、ハワイとシアトルで約14年間勤務。2017年夏にベルビュー市でピカケスクールを創立。

Pikake School
www.pikakeschool.com



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