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アメリカにおけるギャンブル依存症の治療

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もくじ

ギャンブル依存症は精神疾患

ギャンブル依存症は、本人の意思や資質の問題とされがちですが、
実は脳の機能に変化が起こる精神疾患です。

一般の人と依存症患者の脳内イメージを比較すると、一般人の場合、周囲の刺激に対して脳が活発に活動しますが、依存症患者の脳は活動が低下、または無反応になり、ギャンブルにだけ過剰に反応することがわかっています。

ギャンブルで勝った体験は、脳の快楽中枢に記憶され、同時に大量のドーパミンを放出させます。その刺激を反復することで、次第にドーパミンの放出量が減少し、依存者はさらに強烈な刺激を求め、より多くの金額を消費して、より頻繁にギャンブルをするようになります。結果として、ほかの娯楽や趣味を通しての快感というものがあまり感じられなくなり、ギャンブルに特異的に反応するような脳の機能変化が起こります。

成人のギャンブル依存症者が比較的多い日本

2020年(令和2)の調査で、過去1年におけるギャンブル等依存が疑われる人は全体で2.2%程度であることがわかりました。2019年10~12月に実施し、インターネットや郵送で得た、回答者は全国の18歳以上75歳未満の8223人。男女別では、男性は3.7%、女性は0.7%でした。

過去1年間に最もお金を使ったギャンブル等の種類は、男性ではパチスロ、パチンコ、競馬の順、 女性ではパチンコ、パチスロ、宝くじの順でした。
(参照:松下幸生, 新田千枝, 遠山朋海; 令和2年度 依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」, 2021年)

ギャンブル依存症の診断方法

ギャンブル依存症の診断は、DSM-5に記載されている基準に従って行われます。

DSM-5とは、The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition の略で、精神疾患の世界的な診断基準・診断分類のマニュアルとしてアメリカ精神医学会(APA)が発行しています。(出典:アメリカ精神医学会「DSM-5」)。

躁病ではなく、臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行動で、その人が過去12ヶ月間に以下のうち4つに該当すると、ギャンブル依存症であることがわかります。

  1. 期待感や高揚感を満足させるために、掛け金の額がだんだん増えてくる。
  2. ギャンブルの回数を減らそうとしたり、止めたりすると落ち着かなくなる、または苛立つ。
  3. ギャンブルの回数を何とか減らそう、または止めようと努力するが、うまくいかない。
  4. ギャンブルのことばかり考えている(例:過去のギャンブル体験を思い出したり、次のギャンブルの計画を立てたり、ギャンブルをするためのお金をどうやって得るかを絶えず考えている)。
  5. 不快な気分やストレスを感じている(例:無気力、罪悪感、不安、抑うつ)ときに、ギャンブルをすることが多い。
  6. ギャンブルで損をした後、その負けを取り戻すためにまたギャンブルをする(失った金を “深追い” する)。
  7. ギャンブルへののめり込みを隠すために、嘘をつく。
  8. ギャンブルのために、大切な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を失いそうになる、または失ったことがある。
  9. ギャンブルによって絶望的になった経済状況を何とかするために借金をする。

上記のチェックシートに回答した結果は次のとおりです。依存症が重度であるほど、該当する項目が多くなります。

軽度:4-5項目
中等度:6-7項目
重度:8-9項目

ギャンブル依存症の治療法

ギャンブル依存症の治療には、主に、以下のようなアプローチがあります。

  1. 入院治療プログラム
  2. 外来治療プログラム:CBT や MI に基づく個人カウンセリングとグループカウンセリングの併用

治療とは異なりますが、GA ミーティングと呼ばれる自助グループに参加することで、いろいろなサポートを受けたり、ギャンブル依存症に関する知識や内省を深めたりといった効果もあります。

Asian Counseling and Referral Services
橋本晴美 MA, CDP, LHMC, MAC, NCPG-II

総合商社や法律事務所の勤務を経て、1999年に渡米。臨床心理学の修士課程で精神障害、依存症、薬物中毒などを学びました。2004年よりシアトルのAsian Counseling and Referral Services にて、メンタルヘルス、薬物依存症、ギャンブル依存症などのカウンセリングやコンサルテーションを行っています。

  • Licensed Mental Health Counselor
  • Licensed Chemical Dependency Professional
  • National Certified Problem Gambling Counselor II
  • Certified Geriatric Mental Health Specialist
  • NCGC Board Approved Clinical Consultant

【電話】 (206) 695-5968
【メール】 harumih@acrs.org
【公式サイト】 www.acrs.org

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、専門家にご相談ください。

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