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「職業人生をミュージカルに捧げたい」 Sage Suzerris(星児・スゼリス)/鈴木星児さん ミュージカル俳優/ビレッジ・シアター 子どもプログラムインストラクター

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ワシントン大学在学中の2020年に、シアトルの 『5th Avenue Theatre』での公演『Baseball Saved Us』に出演した鈴木星児さん。2021年にミュージカル・シアターの学士号を取得し、現在は、ミュージカル俳優、そしてビレッジ・シアターの子どもプログラムインストラクターとして活動しています。
※インタビューは英語で行い、日本語に翻訳しました。

星児さんとは、まだ小学生だった頃にお会いしたことがあります。その後、演技や歌に夢中になっておられることを、お母様との共通の友人から聞いていました。シアトルの『5th Avenue Theatre』で行われたミュージカルに出演されたことを、たまたまお母様がFacebookに投稿されたのを拝見したのがきっかけで、今回お話をしていただけたらとご連絡しました。

『5th Avenue Theatre』での公演『Baseball Saved Us』は、2020年に上演されたものです。当時まだワシントン大学の学生だったのですが、フルタイムで雇ってくれるということで、2学期休学して出演しました。

『Baseball Saved Us』は巡回型の教育プログラムで、ワシントン州とオレゴン州の小・中・高校を回り、校内のステージでも、カフェテリアでも、学校が公演をするように指定した場所で、舞台セットや小道具を設置するんです。パンデミックの影響で、予定より早い2020年3月に公演を終了しましたが、『5th Avenue Theatre』は子供向けの教育ビデオを制作することになり、2021年に再び呼ばれ、2020年に演じたキャラクターとして声優の仕事をすることになりました。先日、その教育ビデオが完成したことが発表されました。

今は別のフルタイムの仕事をしながら、ミュージカルの舞台に出演できるよう、オーディションの機会を待っているところです。

プロフェッショナルの俳優になりたいと思ったのは、いつ頃ですか?そのように思うようになった出来事があれば教えてください。

13歳の時、教会のクリスマス礼拝のステージで、詩を朗読するように言われました。それまでにもステージに立ったことはありましたし、それほど大げさなことではないと思っていましたが、詩を読んでいる最中は、自分でも驚くほど緊張し、倒れたり気絶したりしなかったことが不思議なぐらいでした。

そこで、「人生で何をすることになっても、人前で何かを発表するのはこれが最後ではない」と考えたのです。その日以来、人前で何かを発表するチャンスを逃さないようにしました。「この緊張に打ち勝つことが、後々の人生を左右することになる」と思ったのです。

高校に入学した頃、学校で毎年ミュージカルを上演していると聞いていました。1年生は出られないと言われていたので、あまり期待はしていませんでした。でも、オーディションを受けて損はないだろうと思って挑戦して、出演できることなったのです。ミュージカルに出演することは、放課後を過ごすには悪くない方法でしたが、とても大変で、ミュージカルが終わってもっと自由な時間が持てるようになることが楽しみでした。でも、公演が終わると、自由な時間をどうしたらいいのかわからなくなり、結局、ミュージカル以外にやりたいことはないことに気づいたのです。

高校3年生になり、大学で何を学ぶかを考えたとき、自分が一番好きなのはミュージカルであり、職業人生をミュージカルに捧げたいと思い、ミュージカル・シアター・プログラムのある学校を探しました。

13歳とは思えないほど、大人びた決断だと思いました。その前に、「やっぱり苦手だからやめよう」と思ったり、親のせいにしたりするのではなく、そのような考え方に至るまでには、何らかの経験があったのでしょうか?

正直なところ、その時の自分の反応には、普段の僕らしくないところもありました。(そのような体験をしたら)「怖い経験だったから、一生避けよう」と思うかもしれませんが、なぜかその時はそのように思わなかったのです。

幼い頃、母親が音楽関係の仕事をしていたこともあり、僕も合唱団で歌っていましたし、5歳からピアノも習っていました。どちらも好きではなかったのですが(笑)、人の前でパフォーマンスをすることはありました。つまり、そういうことに慣れていたので、なぜ詩を朗読した時はあのように不安になったのかわかりません。

テレビや映画ではなく、舞台に立ちたいと、幼い頃から思っていましたか?

いつもミュージカルのステージに立ちたいと思っていました。テレビや映画では、観客が参加することはなく、歌ったり踊ったりすることは、基本的にありません。また、カメラは必要なだけ出演者に近づくことができるので、動きや顔の表情はより小さなスケールで表現しなければなりません。

でも、生の舞台では、もっと身体を使って表現しなければならないので、一番遠くにいるお客さんにも動きが伝わります。また、コメディでない限り、ほとんどの演劇はとてもシリアスなテーマを扱っているので、あまり演劇には出演したくありません。

僕がミュージカルを観に行く理由は、演劇のように深刻なテーマについて3時間のセミナーを受けるよりも、楽しくて幸せな時間を過ごすためだからです。

幼い頃から、よくミュージカルを観ていましたか?一番好きな作品があれば教えてください。新しいミュージカル作品で好きなものがあれば。

幼い頃から、とても人気のあるミュージカルで映画になったものを観ていました。『The Sound of Music』『Godspell』『Mary Poppins』『Jesus Christ Superstar』などです。子どもの頃に生の舞台も観たことはありますが、たまに観に行っただけで、子ども時代の大きな部分ではありませんでした。

一番好きなミュージカルは、幼い頃は『Godspell』。僕は覚えていないのですが、3歳のころにビデオで何度も何度も観ていたそうです。今一番好きなものは『Something Rotten!』です。ミュージカル好きなら好きだと思います。シェイクスピアが生きていた時代が舞台なので、シェイクスピアが好きな方なら好きかもしれません。ある脚本家の兄弟がシェイクスピアを上回るものを書こうとしていたのですが、ビッグスターであるシェイクスピアを上回る成功する作品が書けない。そこで彼は、「次はミュージカルだ」と言われ、最初のミュージカルを書くことになるという話で、現代の人気作品がいろいろ登場します。面白いですよ。

一番影響を受けた人は?その理由も教えてください。

特にミュージカルで影響を受けたというわけではありませんが、僕は作曲もするので、日本のGalneryusというバンドに最大のインスピレーションを受けました。いつか彼らのような驚異的なライターやパフォーマーに何分の一でもなれたらいいなと思います。

これまでに体験した、最大の困難や逆境は何でしょうか。

パンデミックは最大の逆境でした。『5th Avenue Theatre』で初めてプロの演劇人の仕事を始めた矢先、突然パンデミックによって公演が早期終了してしまい、それ以来、ミュージカルには出演できていないからです。

Zoom でのミュージカルや『5th Avenue Theatre』の声優の仕事は、周りの仲間と一緒に歌い、踊ることで得られる生のパワーにはかないません。自分の情熱の海にどっぷりつかるような感覚です。この2年間は、自分でもどうしようもない問題でミュージカルを上演できず、モチベーションを保つのがとても大変でした。いつ終わるとも知れないパンデミックの終わりが来るのを、ただじっと待つしかなかったのです。

劇場の状況は、徐々にパンデミック以前の状況に戻りつつあるのでしょうか。私自身、2020年の3月から2年間、劇場に足を運びませんでしたが、先日、生の舞台を観る機会がありました。

大型の劇場は、人数が少なくて済む小さなプロダクションを上演することで、再開し始めています。これから徐々に大きなプロダクションに移行していくのでしょう。コミュニティ・シアターなどの小劇場も再開し始めていて、先日 Seattle Gilbert &Sullivan Society のオーディションを受けて合格し、『The Pirates of Penzance』に出演することになりました。7月にBagley Wright Theatreで上演されます。

もともとニューヨークに引っ越して、ブロードウェイのオーディションに挑戦したいと思っていました。でも、組合に入らなければオーディションを受けるのは難しいですし、組合に入るには組合に入るためのポイントを得られるショーに出演していないといけません。ニューヨークの中心地にしか行ったことがないので一概に言えませんが、特に好きではないこともわかりました。シアトルは大好きですが、シアトルの中心地だけで判断するなら、そんなに好きではないと言ってしまうかもしれませんので、ニューヨークがそれほど気に入らなかったと決めつけるのはいけないかもしれませんが。

それよりもシアトルに留まって、ここでプロダクションに出演するようにしたいと思います。将来は『5th Avenue Theatre』や『Village Theatre』で、もっとフルタイムの出演をしたいと思っています。

ニューヨークはたくさんの劇場があり、チャンスもたくさんありますが、競争も非常に激しい。一方、シアトルは大型の劇場は3つぐらいしかありませんが、IT業界などの成長で人口が増え、街として成長し続けていますし、劇場などのエンターテイメントも成長しています。パンデミックが収束していけばさらに成長が見込めるでしょう。それにシアトルは、いつからそうなったのかわかりませんが、新しいミュージカル作品がアメリカで上演される最初の都市になることが多いですね。例えば『Wicked』がそうでした。そういったこともあって、これからもシアトルにいるのもいいのではないかと思っています。そして、チャンスがあれば日本でも俳優やミュージカル、ミュージシャンの仕事をしてみたいと思っています。

もしシアトル周辺で育った人がこの記事を読んで、自分も俳優の道に進みたいと思ったら、どんなアドバイスをしますか?

高校生までなら、『5th Avenue Theater』の『Rising Star Project』と『Village Theater』の『KIDSTAGE』をチェックすることを強くお勧めします。

残念ながら、僕がこれらのプログラムを知ったのは、参加できる年齢を上回っていたり、忙しすぎて参加できない状態の時でした。でも、これらのプログラムでは、プロの劇場で見られるようなあらゆる設備が整ったプロダクションで、指導を受けられ、作品に参加することができます。

また、コミュニティ・シアターのオーディションを受け、プロダクションに参加することもお勧めします。フルタイムの給料はもらえませんが、プロフェッショナルの劇場よりも入りやすく、エチケットやスキルを身につけるには最適な場所です。

ありがとうございました。

Sage Suzerris(星児・スゼリス)/鈴木星児さん 略歴: ワシントン州シアトル生まれ。高校時代に学校のミュージカルに出演したことがきっかけで、職業人生をミュージカルに捧げたいと思うようになる。ワシントン大学在学中の2020年に、シアトルの 『5th Avenue Theatre』での公演『Baseball Saved Us』に出演。2021年にワシントン大学でミュージカル・シアターの学士号を取得。現在は、ミュージカル俳優、そしてビレッジ・シアターの子どもプログラムインストラクターとして活動中。

聞き手:オオノタクミ

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