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パンデミック【体験談】(7)「家族の幸せを最優先したい」 エンジニア

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散歩

家族との散歩時間が増えた

新型コロナウイルスのパンデミックで、ワシントン州では2020年3月から経済活動・社交再開に規制のある生活が続いています。日々の生活はどのように変化しているのでしょうか。

第7回は、長期の在宅勤務は初めてというエンジニアの方にお話を伺いました。

– 自宅待機命令で、生活はどのように変わりましたか?

夫婦共働きで子どもが2人いるのですが、私が一番感じるのはスケジュール管理に前より気を使わないといけないということです。

つまり、家族4人それぞれにオンラインミーティングがあり、絶対に動かせない予定があるわけですが、それがバッティングすると、どうしても調整しないといけません。仕事のミーティングの間の時間はダウンタイムと言いますが、その間でも私たちは子どもの様子を見ないといけないし、仕事もしないといけないので、今はダウンタイムがない状態です。例えば、「午後3時から午後4時まで何があり、午後4時から午後5時まで何があるので、何を誰が面倒をみなくてはならない」というように、複雑ですね。

オンラインカレンダーは、夫婦それぞれの会社、子どもたちそれぞれの学校で違います。また、習い事もオンラインに移行しているので、子どもたちの予定でオンラインカレンダーに入っていないものは入れなくてはなりませんが、入れ忘れたものがあれば、その責任は誰にあるのかとか、新しい問題が出てきました。最近は自分が子どもを同僚として見ているような感じさえしてきました(笑)。

どうしても誰も面倒を見ることができない時子供たちはYouTubeを見ています。見ている内容は親がチェックしていますが、常にそばにいて教えられないという罪悪感がありますね。

食事は地元のレストランからの宅配と自宅での料理と半々にするようにしています。ウイルスが心配なので、テイクアウトをそのまま食べるのではなく、もう一度フライパンで焼いたりしています。こういう状態だと栄養のバランスが大事ですが、私はあまり野菜の料理を知りませんし、食材の購入は今のところすべて配達サービスにしています。日本食品はアメリカのアマゾンで安いものを見つけて買うのが楽しみになっています。

– 長期の在宅勤務は初めてとのことですが、どんな感じですか。

私がこれまで働いてきた企業では長期の在宅勤務は推奨されていませんでしたから、連日で在宅勤務というのは今回が初めてです。以前は医者に行くなどの予約がある時は同僚に連絡して自宅勤務ということはありました。でも、今はみんなが在宅勤務になりました。以前は、会社のカレンダーで「Work From Home(WFH)」と書けばチームに共有されるという形をとっていましたが、みんなが WFH なので、それもなくなりました。Twitter などは無期限で自宅勤務になるそうですね。

私にとって一番大変なのは、オンラインミーティングです。会議室なら、携帯やラップトップを見ている人が何人かいても、こちらを向いて聴いてくれている人がほとんどだとわかれば、「だいたい聴いてくれているからOKだ」と考えたりします。でも、オンラインミーティングは画面を共有して、それを見ながら話をするのが基本で、10人が参加しているミーティングでも自分のカメラをONにしていない人が多いので、私が話をしていても参加している人のフィードバックが見えないんです。マネジャー自身もカメラをオフにしているのでいったい何をしているのかもわからない。発表の後、質問やコメントがなかったらがっかりします。そんなふうに、状況がわからないまま話すのはとても難しく感じます。発言を待っている顔、うなずいている顔、相槌など、アバターでもいいから、自分が話をしていることに対する nonverbal(非言語的)のフィードバックが、何かしらあればなと思います。

あと、10人ぐらいの英語ネイティブの人が話をしている場合、質問があっても、話に割り込むタイミングが難しいです。誰かが話していて、話が終わったと思って "I have a question." と言ったら、まだ話が続いていたことがありました。そして "I’m sorry." と言って私が質問を言うのをやめたら、別の人が入って来て質問してしまい、"Go ahead." "You go ahead." の繰り返しになる。さらに、自分の質問は皆の役に立つような質問かどうか考えてしまって質問しなくなってしまったり、逆にみんなが興味のないことを話してしまったり。

私が英語のネイティブじゃないということもあるのでしょうし、日本語だともっとうまく言えるのかもしれませんが、英語でこういう訓練を受けてこなかったので難しいと感じます。英会話とか発音、文法、ライティング、そういうものはたくさんありますが、「オンラインミーティングのためのコミュニケーション」というクラスがあれば受けたいですね。ある程度みんながわかってくれて、会話のキャッチボールをどのようにするか、そういうレッスンがあればいいなと思います。また、「dos and don’ts」のように、ミーティングのエチケットがあればいいですね。

あと、オンラインミーティングでどう生産性をあげるかにするかも考えたほうがいいと思います。ミーティングが終わったら本当に終わりで、ミーティング後にミーティングはどうだったかとか、ミーティングのフィードバックする機会がありません。1時間に10人の参加者がいたら、その1時間にどれだけの給料を払ってるいるか考え、それに見合うだけの価値があるミーティングかというところまで考えたほうがいいと思います。

あと、気になるのは、気軽な世間話ができないこと。やはり同僚の顔が見えないので、気軽に話しかけられないのです。顔を合わせてなら、"how’s going?" と気軽に聞けたのが、今のようにチャットだと、自分がそう言ったら、相手は「何か用事があるのか?」と思ったりしますし、そもそも相手が世間話をできる状態かわかりません。以前なら世間話から仕事の話に持っていけたのに、今はいきなり仕事の話を始めることになってしまう。なので、世間話をしなくなりましたね。向こうも忙しくて世間話をするひまもない。マネジャーはチームのコーヒータイムとか設定してくれるのですが、無理やりな感じがしてそこまで盛り上がらないですね。

あと、インターネットはライフラインであることを認識しました。インターネットの調子が悪かった日には家族みんなのストレスが最高レベルまで上がり、正直、泣きたくなりました。別のプロバイダーと契約するか、2つのプロバイダと契約するか、検討しています。

– お子さんの勉強はどうですか。

子どもは2人ともリモート学習になっています。オフラインで課題をやって、たまにあるオンラインで、おしゃべりのミーティングがあったり、先生と個別のミーティングがあったりします。

普段は見る機会のない授業を見られるのは、いいですね。たまに校長先生が出てきてくれます。幼い方の子供の授業を見ていると、先生が優しく、「楽しい」という雰囲気を子どもたちに味わってもらおうとしているのがリモートでも伝わってきます。集中できる時間が短いので、なんとか集中させようと工夫してくれているのがほほえましい。子どもたちにとって、授業を聴くだけではなく参加するというのは大事ですね。私もこんな授業を受けたかったなと思いました(笑)。図形など、算数でも知らない単語があるので、私にとって英語の勉強にもなりますし、学び直している感じです。一方、大きい方の子供は、放任すると勉強から遅れたりといろいろ問題が出てくるので、難しいです。管理しすぎてもいけないし、管理しなさ過ぎてもいけないし。最適なところを探すのが難しいですね。

今のところ、こんな感じで精一杯です。以前は私ががんばって日本語教育をやっていましたが、今はそれをやる気力もなくなりました。上の子は日本語をもうやめましたし、下の子はまだ続けていますが、これからどうなるか。日本語の学校も、読書グループやみんなでビデオを見てからディスカッションとか、日本のカリキュラムに従わなくていいから、参加型にしてもらえないかと思っていますが・・・。楽しい物じゃないと持続しないですね。

– 今の状況で、どんなことを考えていますか。

散歩

わざわざ一つの場所に集まることのメリットがないのにオンラインでやらないことに対して、「なぜオンラインでやらないのか?」という疑問が常々ありました。学校の PTA のミーティングなどがその例です。それが、こういう状況になってすべてオンラインになったことは喜ばしいことです。これからもそれが標準となってほしいですね。

この状況では旅行などに行けないことは残念ですが、夫婦ともにこのような状況で仕事ができることに幸せを感じています。また、今のところ日本にいる家族や親戚も健康なので、それも幸せなことだと思います。通勤時間がなくなったことで突然できた散歩やゲームナイトなどの家族との時間を大切にしたいと思っています。家族の幸せを最優先にしたいです。

また、私たちはアメリカにいるので、そこで私たちができることをやっていくことが大切だと思っています。例えば、地元のレストランをサポートするとか、社会的距離の維持とか、自分でできることがあります。それが自分にはしっくりきます。新型コロナウイルス対策をしている NPO などにも積極的に寄付しています。それで少しでも自分たちが住んでいるところの状況を変えることができればと思っています。

– 在宅勤務についていろいろな方のお話を伺ううち、企業は「全員ができるべきで、できないのは自己責任」とせず、個人の状況や希望にあわせてフレキシブルに対応する必要があると思うようになりました。今回の自宅待機では、自分と家族との関係、自分とまわりの人たちとの関係がますます大きな位置を占めるようになり、さまざまな話を聞くことがあります。エンジニアさんが家族の幸せを最優先に考えて動きたいと思うことはすばらしいことですね。おっしゃるとおり、地元経済への貢献も続けたいと思います。

掲載:2020年5月 聞き手:オオノタクミ



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