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アメリカの大学でネイティブと一緒に英語スピーチ・クラスを受けてみた!

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「アメリカでは人前で話す練習を子供の頃からやっている」というのはよく聞かれる話ですが、大学ではスピーチを必須科目にしているところもあります。シアトルの隣のベルビュー市にあるベルビュー・カレッジもその一つ。

今回は、社会人留学生の土屋麻由子さんに、受講真っ最中のスピーチ・クラスについて紹介してもらいました。

土屋麻由子さん

「『こんな気持ちのいいシアトルの夏に、わざわざスピーチのクラス?』 と思うかもしれませんが、これが大正解だったんです」という土屋さん。その理由は?

―― スピーチのクラスを取った理由は?

ベルビュー・カレッジのスピーチのクラスはコミュニケーション学部の一つで、ビジネス・コースでは必修科目。私は新聞社で広告営業を担当していたので、人前で話す機会はたくさんあったのですが、そもそも人前で話すのは苦手。なので、シアトルに留学しに来て、ESL を終わってビジネス専攻でクラスが取れることになっても、「スピーチのクラスをすぐに取るのはハードルが高い、最後のほうに取ろう」と考えていました。

そして、いよいよ待ちに待った夏になり、「夏学期はキャンパスでのバイトだけじゃつまらないかも」と、クラスのチョイスを見てみると、スピーチのクラスがあったのです。「とりあえず受けてみて、面白くなさそうだったらまた後で取り直せばいい」と気楽に取ったら、想像以上に面白くて。

―― クラスはどんな感じ?

夏学期は通常の学期の半分(約1ヶ月半)しかなく、クラスは週4回・毎日2時間に凝縮されていますから、ESLみたいにクラスメートと顔を合わせる回数が多く、お互いの考えを聞く機会も多いので仲良くなります。先生も留学生に理解があってフレンドリーで、わきあいあいという感じになってきました。クラスには25人ぐらい生徒がいて、大半が20代ですが、全体では18歳から50代ぐらい。私は夏学期はこれしか取ってないこともあって、すごく余裕があって、毎日が楽しみになってしまいました。夏で晴れている日が多いのも、気分が明るくなって助かります。

クラスでは考えさせられることも多いですよ。中国や台湾からの留学生も多いんですが、彼らはもう自分が将来何をやりたいかわかっていて、何をどう努力すればいいかが見えていて、着実にそのゴールに向かっている感じがします。

―― どんなふうにスピーチを勉強するの?

あらかじめ決められた大きなテーマにあったスピーチを考えます。最初のテーマは自己紹介、2回目は自分の持っているもので思い入れのあるもの、3回目は情報提供(informative speech)でした。来週のテーマは国際問題で、聞いている人を説得するスピーチ(persuasive speech)の練習です。再来週は、自分の好きな歌の歌詞を歌としてではなく、感情をこめて、身振り手振りも加えてスピーチするというのをやるそうです。そして最後は、抗議スピーチ(protest speech)となります。

プレゼン用のメモカードに、ポイントを書いておきます。

まず、テーマに従って、導入(introduction)、本体(body)、結論(conclusion)という流れでアウトラインを書き起こします。そして、そのアウトラインを生徒同士で交換し合って意見を言い合います。「ここはいいね」とか、「ここはもうちょっとこうしたら」とか。それをベースに、プレゼン用のメモカードを書き、リハーサルをみんなでやり、最後に本番です。スピーチは一人5-6分が目安。アウトラインから本番まで1週間半でやりますが、今のところ生徒が25人いるので、本番だけで3日ぐらいかかります。本番は先生が一人ひとりビデオを撮ってくれて、それを見ながら自分で評価して、次にいかせれば・・・という感じですね(笑)。

―― これまでどんなスピーチをしたの?

ついこの間、情報を提供するスピーチ(informative speech)をしましたが、私はトピックの中から宮崎駿さんを選びました。彼のアニメはよく知られているので、みんなが関心を持ってくれるかなと。スピーチの流れは、宮崎駿さんはどんな人なのかというバイオグラフィを話し、主な作品を紹介し、最後は「こんな多くの人に愛されているのはなぜか」という自分なりの分析で締めくくりました。彼の作品が愛される理由は、「手描きにこだわっている」ということと、「一つ一つの作品に重いテーマがあるものの、ジブリ全体としては平和がテーマなので、たくさんの人が引き込まれるのではないか」と私は思っています。

―― どんなフィードバックをもらった?

「パワーポイントがよかった」(笑)。私の場合、英語の発音が良くなかったらわかってもらえないんじゃないかと心配なので、パワーポイントで情報を補うことが多いんですね。それがわかりやすかったと言われるのはうれしいことではあります。改善点としては、一つ一つの文章をもっと長くするということ。今の私の書く文章をもう少しつないで長くする方が、逆に相手には伝わりやすい場合があるようです。

―― アメリカ人はスピーチが上手?

アメリカ人でもいろいろな人がいます。スピーチがうまい人は、誰かの目を見て話していて、余裕があるんだなと感じます。メモを持っていてもほとんど見ることもなくて、頭の中に入っていますし。あと、スピーチ自体もそうですが、もっとわかりやすくなるように工夫しますね。たとえば、建築についてスピーチをした人は、模型を持ってきて、平面のパワーポイントではわからない部分を補っていました。話をしながらちょっと歩いてみたり、ちょっと間をおいて考える演技をするのは、日本では見たことがないなと思いました。

また、メモカードを持っている手が震えている人もいたりして、ネイティブでも緊張するんだなと。逆に、私はクラスではそんなに緊張しません。前職で「失敗できない」というのをたくさん経験してきているので、クラスのスピーチで失敗してもキャリアに影響がない、逆にここで失敗して練習しておいたほうが、今後に役立つかなというぐらいの思いでやっています。

それから、スピーチの中にジョークを仕込んでますね。「これがアメリカン・ジョークか!」と(笑)。スピーチがうまい人は笑わせてくれて、スピーチの内容が印象に残ります。そうして観客を巻き込んで、飽きさせません。逆に、メリハリがないと、何のスピーチをしているのかわからず、印象に残らないものですね。

―― これからどんなところを工夫したい?

アウトラインの段階で文章をガッツリ作って、もっと練習すること。そして、私もジョークで笑わせたい!(笑)あと、スピーチの最中の自分にもっと余裕がほしい。TEDでスピーチをする人のように。それには、もっともっと練習が必要です。慣れない身振り手振りも、英語だと少し恥ずかしさが消えるのが面白いですが、ぎこちなくないかな、自然にできているかなということが気になります。

このクラスを取っていて感じたのは、私は作ったり伝えたりするのが好きということ。自分が何を考えているのかをブレーンストームして、アウトラインに落とし込んで、リハーサルして、スピーチして、フィードバックを受ける。このクラスでは、そういう「伝える」ことのプロセスを改めて教えてもらっている気がします。

私の場合、必須でなければ、自分からスピーチのクラスを選ぶことはなかったと思います。もともと人前で話すのは得意ではないので、英語でスピーチなんて、勇気がなくて。でも、この授業は自分にとてもプラスになっているので、ちゃんと終わらせることで自信にもなり、仕事でもスピーチがうまくできるようになると思います。

アメリカに留学して、スピーチをする自信をつけることができたら、今後の就職活動でもアピールになるかもしれません。スピーチとまでいかなくても、何かを伝えたいというビジネスの提案をする時にも効果的だと思います。

先生からコメントもいただきました!

日本人の学生の専攻はビジネスやホスピタリティが多いですね。全員が時間を守りますし、ポジティブで一生懸命です。

アドバイスとしては、スピーチの構成や発音、スピーチ全体でのパフォーマンスに気をつけながら取り組むこと。特に、ネイティブでない人は、文法をチェックしてもらってからスピーチに臨むことを勧めています。例えば、チューターが手伝ってくれるライティング・ラボに行ってみるのがいいでしょう。

もちろん、アメリカ人よりいいスピーチをする生徒は日本人にもたくさんいます。成功の鍵は、どんな人であってもひたすら練習して、スピーチの各チャプターのバランスを取ることです。

掲載:2016年7月

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