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「一流エンジニアの仕事術を学び、上を目指す」〜『世界一流エンジニアの思考法』著書・エンジニア 牛尾剛さん

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写真提供:牛尾剛

44歳だった2018年12月末に渡米し、ワシントン州レドモンド市に本社のあるマイクロソフトで超巨大クラウドサービス Azure Functions 開発に携わっている牛尾剛さん。ソーシャルメディアやブログで同僚の ”一流プログラマ” から得た学びや気づきを惜しみなく発信して注目され、昨年10月、『世界一流エンジニアの思考法』として出版して話題を呼び、アマゾンジャパンでベストセラー入りしています。プログラマになりたいという強いモチベーションを持つに至った理由、そのために考えて実行している作戦、ご自分を “三流” という理由などについて、お話を聞きました。

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もくじ

インタビュー

ー 牛尾さんは営業職からコンサルタント、マネジメント、エバンジェリストとしてキャリアを積んでこられました。でも、幼い頃からなりたかったのはプログラマなんですね。どんなきっかけがあったのでしょうか。

幼かった頃、実家は勉強できるような状態ではなかったので、親戚のおじさんがいろいろと面倒を見てくれたのですが、当時は珍しかったポケットコンピュータでゲームが作れることを見せてもらった時に、「かっこいいな!」と思ったのが、今につながる最初の出来事だと思います。

それから高校に入るまで独学でプログラミングを勉強して、高校で一時期離れた後、大学でプログラミングばかりするようになりました。電気工学科だったのでコンピュータはあまり関係なかったのですが、研究結果を発表する時にエクセルでもいいものを、わざわざプログラムを書いて表示するなんてことをしたりしていましたね。才能はまったくないのに、プログラミングが本当に好きなんです。

ー 牛尾さんのブログやX(旧Twitter)もフォローしていますが、「自分には才能はない」「三流プログラマ」と書いておられます。外から見ていると、どうもそうは思えないのですが(笑)。

いやいや、はっきり言って、本当にないんです。中学生の時からプログラムを書いていたといっても、理解もできずに丸写ししていました。でも、とにかくプログラマになりたくて、大学卒業後に受けたNECの面接でも「プログラミングをやりたい」と話したのです。面接官は「わかった」と言ってくれたのですが、採用されて配属されたのは営業。人事の人はよく見てるなと(苦笑)。そんなわけで、社会人になってからは、昼間はとりあえず営業、仕事が終わってから夜中までUNIXを触るという生活になりまた。

その後、ある人がシステムエンジニアにしてくれたのですが、やっぱりまったくダメ。任せてもらえても、まるでできない。結局、プロジェクトマネージャとか、当時はまだ広く知られていなかったソフトウェアのアジャイル開発を学んで広める活動などをするようになりました。そこでわかったのは、僕はプログラミングより、マネジメントやコンサルティングが得意ということ。特に何の努力もしていないのに、技術を紹介するエバンジェリストとして登壇したマイクロソフトの大きなイベントで顧客満足度1位に選ばれたり、カンファレンスや基調講演に呼ばれたりするほどでした。これは純粋に「才能」だと思います。

でも、僕がやりたいのは、あくまでもプログラミングです。なので、自分がプログラムマネージャになって、「牛尾剛君、これをやってくれたまえ」と、自分に無理やり仕事を与えたりしていました(笑)。そんな僕に、周りの人たちは「牛尾さん、プロジェクトマネージャの才能はあるんですから、プログラミングはやめておいた方がいいですよ」と、真剣に止められたのです。それぐらい本当に向いていなくて、今でもそれは変わりません。

ー 向いている、向いていない、というのは、どういうところで判断していますか?

僕の場合、普通の人の3倍ぐらいやって、ようやく平均レベルに行ける感じなのです。わかりやすい例で言うと、中高のバスケ部でレギュラーになるために、誰よりも早く登校して、毎日ランニングして、誰よりも早く練習場に行ってシューティングの練習をしていました。そんなことをしていたのは僕とキャプテンぐらいでしたが、結局、1秒も試合に出してもらえませんでした。手を抜いたりサボっていたりしていたなら仕方ないですが、すごく努力していたにも関わらず、結果が出せない。万事がそんな感じでしたので、子どもの頃は自己肯定感も何もなく、「何かができる」ということに、すごく憧れました。

そんな僕の人生で初めてうまく行ったのが、大学受験です。和田秀樹さんの著書『受験は要領』と出会い、そこに書かれていた「点を取るための方法」に衝撃を受けながらも、「これなら俺でもできるのではないか」と、そのまま実行してみました。その結果、通っていた高校からは絶対に入れないと言われていた関西大学に合格することができたのです。それが人生で初めての成功体験でした。メソッドを学ぶことが好きになったのは、それがきっかけです。

ー そういう牛尾さんだから、現在の職場で一流のプログラマのメソッドをいろいろ見つけて、素直に取り込んでいこうとしているわけですね。

そうですね。子どもの頃からの体験もあり、また、社会人になってからADHD(注意欠如多動症)と診断を受けたこともあり、もう、プログラマとしての才能がないことにがっかりするフェーズは終わりました。せっかく過去の自分からしたら考えられない、夢のようなチームに入れたわけですから、いいプログラマになる作戦を考えて、それを実行して、フィードバックを得て、次を考えて、生き残らなくてはなりません。

でも、ご存知のように、日本からアメリカに来ると、やっぱりかなり違いますね。僕の職場環境は100倍も素晴らしくなって、超絶快適なのですが、それに驚くと同時に、これまでいかに非効率だったかが身に沁みました。開発方法の専門家として、それを本で読んだりして知ってはいても、目の当たりにすると衝撃です。そこで、一流の人たちがどんな思考回路をしていて、どんなふうに仕事をするのかを観察して、自分の参考にするためにブログを始めました。それがたくさんの方の目に留まって、今回の出版に繋がった。僕にとっては、社会貢献というより、すごくいい環境にいさせてもらっていることのお裾分けだと思っています。

ー これからエンジニアを目指す人や、エンジニアなりたいなと思ってる人にアドバイスをするとしたら?

  • 楽しむこと
    やっぱり、まずは楽しむことですね。プログラミングをやって「楽しい」「かっこいい」「やりたい」と思うならやればいいですし、そうではないなら他のことをすればいい。その人が一番幸せなことをやるのがいいと思います。
  • 理解することを怠らないこと
    次に、楽しんでいる人にアドバイスできることがあるとすれば、やっぱり「理解することを怠らないこと」ですね。今のチームで衝撃的だったことの一つは、そこなのです。僕は理解に結構時間がかかるのですが、今のチームメンバーはプログラミングも速いですし、理解力もすごくいいので、「賢い人は一発で理解できるんだ」と思っていました。そうすると、僕はそんな人たちとちゃんと仕事をするために、何か作戦を考えなくてはならない。そこで、大学を卒業したばかりの2人に聞いてみたのです。いったい、どのように新しいことを理解し、素早くプログラミングをしているのかと、一般の人も使うクラウドサービスの開発を例にして聞いてみました。

    例えば、アイコンがいろいろ並んでいて、一つクリックすると何らかの機能が利用できるようになっています。利用者にとってはなんのことはないかもしれませんが、その機能が動くために、実は後ろでいろいろなことが複雑に組み合わさっています。そんな機能ひとつひとつについて勉強できるエンジニア用のビデオが作られていて、1本の長さは1時間から1時間半ぐらい。その話をすると、その2人は「確かに、難しいですよね」と言った後、「だから、1本につき10回くらい見ている」「何回も前に戻って見直している」と言うのです。これにも衝撃を受けましたね。僕はというと、一応そういうビデオは見ますが、「こんなの最初からたくさん見ても理解できないから、実際にプログラミングをやっていく中で理解できていくのかな」と思っていたからです。

    そこで気づいたのは、自分が見て「賢い」と思わされる人は、一発で理解できているのではなく、理解する段階に時間をかけているということ。他の人を観察していてもそうです。会議をしていても、わからないことをスルーしません。僕が「後で聞いたらいいかな」と、ふわっとしたままでスルーしてしまうことも、できる人は会議を止めても理解することを怠らない。そうか、賢い人は、賢いから早く理解できているのではなく、そもそもの理解に時間をかけるという必殺のテクニックを使っているのです。

    それ以来、それを真似するようにしたら、それだけでも全然違うことがわかりました。時間をかけて理解すると、後が速いのです。新たな知識が増えた時も、その前のところをちゃんと理解できているところに積み重ねるので速いのです。もちろん、すべてを完璧に理解するのは難しいので、自分がフォーカスしているところに時間をかけて、自分のペースでしっかり理解していくのが大事。急がず、きちんと理解する習慣を身につける。そうすると、それが自分の強みになっていくと思います。
  • 試行錯誤はエンジニアとしては良くない
    エンジニアとしては、仮説を立てるというのが大事。メンタルモデルともいいますが、このシステムはこういうふうに動いているというイメージを作ると、推測ができるようになります。いろいろ考えて仮説を立てて、その仮説を証明するために行動してみる。その結果を見て、動くことが大切ですね。

ー 今年、「これはやりたい」「これはやるぞ」と思っていることはなんでしょうか。

今年やるぞと思っているのは、プログラミングにフォーカスすることです。今、レイオフの嵐が吹き荒れていますが、この仕事が好きなので、組織ごとレイオフなら仕方ないとしても、そうではないレイオフの対象になりたくありません。一流のレベルにとまでは言わなくても、せめて普通のレベルに持って行くぞと思っています。

あとは、英語力をさらに伸ばすこと。エンジニアは英語ネイティブではない人が特に多くて多様なので、仕事の話や軽い話であれば、英語ネイティブではなくても楽に話せる面があります。でも、英語圏にいるだけでは、英語ネイティブと深い話ができるようにならないことがわかりました。フルタイムで働きながら英語力を伸ばすのは大変ですが、良いメソッドがあれば学びたいと思っています。

ー ありがとうございました。

牛尾剛(うしお・つよし)略歴
1971年、大阪府生まれ。マイクロソフトAzure Functionsプロダクトチーム シニアソフトウェアエンジニア。関西大学卒業後、大手SIerに就職、営業職で経験を積み、2009年に独立。アジャイル、DevOpsのコンサルタントとして数多くのコンサルティングや講演を手掛けてきた。2015年、米国マイクロソフトに入社。エバンジェリストとしての活躍を経て、2019年より米国本社でAzure Functionsの開発に従事する。著作に『ITエンジニアのゼロから始める英語勉強法』などがある。

牛尾剛さんの講演会レポート

去る1月16日、牛尾さんの特別講演会を Seattle IT Japanese Professionals と共催しました!留学生から社会人まで幅広い層の参加者約50人が集まってくださり、和気藹々とした雰囲気の中、熱心に聞き入ってくださいました。

インタビューでお話ししてくださった「観察」と合わせて、牛尾さんが語った仕事術とは:

  • 観察する:できる人を観察して学ぶ。
  • 差別化する:自分にある、他の人と違うところを見つける。
  • 何をやらないか決める:スピードを上げることには限界があるので、結果につながること、会社により大きなインパクトを与えられることを考えて選び、生産性を上げる。
  • 二つ上:二つ上の上司や、二つ上のレベルの人とコミュニケーションをとり、何が求められているか、何をやらないかを決める。
  • 難しいことをやる:さらにレベルを上げることは大変にもなるが、ある程度のレベルになってやると、自信をつけられる。
  • サイドプロジェクトをやる:仕事以外のハッカソンなども含まれる。コミュニティにも貢献する。

参加者・運営担当者からのコメント

ワシントン州日米協会スモールビジネス部 プログラム・コーディネーター スミス美季さん

二つ上の仕事をすること、自分の仕事の全体像を理解した上で仕事をすること、学んだことをフィードバックすることなどは、全業界に共通する仕事の極意だと感じました。仕事ができる人ほど、「自分はできない」と言います。まさにその典型の姿を拝見しました。

カナダでクリエイターの海外留学・就職を支援するFrog経営・セナさん

カナダで450人ぐらいが参加しているエンジニアのコミュニティを運営しているのですが、この会を共催したSIJPのメンバーがそのコミュニティにもいるので、牛尾さんの講演会について知ることができました。牛尾さんの著書も読ませていただいていますし、僕のポッドキャスト『バンクーバーのえんじに屋』でもレビューしております。今回、カナダから国境を越えて来て、牛尾さんにお会いしてお人柄を知ることができて良かったです。著書には書かれていないお話も聞くことができて、すごく勉強になりました。

このような講演会の開催やIT関係のネットワーキングにご興味のある方は、
SIJP についてぜひチェックしてみてください。

SIJP メンバーの留学生・藍美さん(講演会の企画運営を担当)

イベントリードを通じて、自ら行動して何かを作り出せた時の達成感や経験が、自分の人生を豊かにしていると改めて感じました。牛尾さんのお話からは、特に「やらないことを決めること」が、今の自分に響きました。シアトルに来てから、新しいチャレンジにも躊躇なく取り組んできましたが、自分のやりたいことの方向が見えてきた今、時間をどのように使うか改めて考え直し、決断したいと思えるきっかけになりました。

SIJP メンバーの留学生・ななみさん(講演会の司会を担当)

牛尾さんの講演で特に印象に残ったアドバイスは、「自分の実力で悩んでいる時は周りにいる”すごい人”を観察する」ということと、「自分の二つ上のレベルの人と定期的に話す」ということです。課外活動やバイトもしながら、高い成績を維持している学生を見ては自分の不甲斐なさを感じていましたが、私もそのような人たちがどうやって素晴らしい成績をとっているのか、「観察」してみようと決意しました。また、今回の講演会では、私の掛け声に答えてくださったり、笑ってくださったり、とてもノリの良い方々ばかりで、牛尾さんはじめ、この会を主催してくださった方々、そして集まってくださったみなさんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。エンジニア、サイエンティスト、ビジネスパーソン、コンサルタントなど、さまざまな業界の多様なバックグラウンドを持った方々と繋がることができ、今後のキャリアを選ぶにあたって、「こんな業種があるんだな」「こんな生き方もあるんだな」などと、参考になることがとても多かったです。これを機会に、シアトルの日本人の交流が深まり、このコミュニティがみなさんの人生にとってより良いものになることを願っています。

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