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「お客様に喜んでいただけた時は感無量」Wafu Builders 内田晃史さん

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米国国立樹木園

首都ワシントンD.C.の米国国立樹木園(U.S.National Arboretum)

ワシントン州オリンピアを拠点に、和風建築を主とした建築プロジェクトを多数手がけている内田晃史さん(うちだ・こーじ)さん。アメリカで初めて和風建築の仕事を手掛けたのは、オレゴン州スティーブンソンの禅寺内の茶室でした。その仕事を評価されてワシントン州に拠点を移したのが1997年。全米各地で個人宅から非営利団体、政府機関や公共施設や和食レストランまで、幅広く仕事をされている内田さんにお話を伺いました。

内田晃史さんがアメリカで初めて和風建築の仕事を手掛けたのは、オレゴン州スティーブンソンにある禅寺内の茶室。当時通っていた三重県四日市の茶道の先生を通じて依頼を受けたこの茶室建築の仕事を評価され、ワシントン州オリンピアに拠点を移すことになりました。

オレゴン州スティーブンソンにある禅寺内の茶室

オレゴン州スティーブンソンにある禅寺内の茶室

お客様のご要望を熟知して図面を引くことから始め、柱、鴨居、敷居、障子、襖、畳、土壁、銅版張り屋根門など、すべて自身で必要な建材を調達し、加工し、仮組みし、現場で本組みをして建築物を完成させるのが内田さん流のやり方です。

「開業当初と比べ、質の良い建材をアメリカ国内で手に入るルートも開拓できています。でも、和風建築の場合、アメリカで入手できる建材には限界がありますので、お客様のご要望に沿うために日本各地からコンテナで日本の建材を仕入れることもたびたびあります」

個人宅から非営利団体、政府機関や公共施設や和食レストランまで、幅広く仕事をしてこられた内田さんの印象に残っている作品をいくつかご紹介していただきました。

首都ワシントンD.C.の米国国立樹木園(U.S.National Arboretum)

米国国立樹木園

首都ワシントンD.C.の米国国立樹木園(U.S.National Arboretum)

www.usna.usda.gov
「使用する建材はすべて米国製で」という米政府からの指示により、2016年に盆栽ガーデンセクションの竹格子塀や木製格子塀の製作。ここには広島の原爆投下を生き延びた『Hiroshima Survivor』と呼ばれる見事な五葉松(Pinus parviflora)の盆栽があります。

オレゴン州の重犯罪刑務所

オレゴン州の重犯罪刑務所

オレゴン州の重犯罪刑務所

www.kurisu.com/project/oregon-state-penitentiary
オレゴン州の重犯罪刑務所内に2019年に完成した日本庭園。受刑者のボランティアとの共同作業プロジェクト。太鼓橋や露地門などを手掛けました。

シアトル・アジア美術館

シアトル・アジア美術館

シアトル・アジア美術館

samblog.seattleartmuseum.org/tag/wafu-builders/
2020年にリニューアル・オープンしたシアトル・アジア美術館のアジア美術のコンサベーション・スタジオ。北山杉の柱、熊本産畳表、高宮麻製畳縁など、日本から仕入れた高級建材が使われています。12帖の畳の敷き方・配置を工夫してあり、お茶事にも使用可能です。

エベレット・コミュニティ・カレッジ

エベレット・コミュニティ・カレッジ

www.everettcc.edu/programs/academic-resources/international/jcrc
1999~2003年にかけて、シアトルの北にあるエベレット・コミュニティ・カレッジの Japanese Cultural Resource Center の茶室建築および日本庭園のメインデザイン、露地門、塀、ミニ錦帯橋(岩国橋)などの建築を手掛けました。さまざまな催しも行われています。

シアトル郊外の個人宅の茶室

個人宅の茶室

個人宅の茶室

茶の湯文化にはさまざまな流派がありますが、内田さんは施主の流派に合わせた茶室をたくさん造ってきました。2020年に完成したこの茶室は、表千家松風楼の写しです。日本各地から仕入れた茶室用最高級建材を使用し、茶室、水屋など、すべての製作を手掛けました。

20代の時に製作したミニチュア茶室「晃風庵(こうふうあん)」

ミニチュア茶室「晃風庵(こうふうあん)」
ミニチュア茶室「晃風庵(こうふうあん)」

ミニチュア茶室「晃風庵(こうふうあん)」

テーブルの上に乗る大きさの茶室。掛け軸から鴨居、小さな茶道具まで、すべて天然素材の手作りです。「若かったからできた。よくやったなと思います」。

新型コロナウイルスのパンデミックの影響で公共事業等の仕事が減ったため、以前は時間がなく請けることができなかった注文家具の製作も手がけている内田さん。今のトレンドは、二枚の木を組み合わせ、その間に着色したエポキシレジンを流し込んで形成して造る「川の流れ」をモチーフにしたテーブルやキャビネットだそう。

「注文家具はある程度のご予算がないと難しいですが、やはりお客様のニーズに合わせたデザインを熟考して完成した家具をお客様に喜んでいただけた時は感無量です。これからも丁寧に自分の仕事を続けていきます」と話してくれました。

内田晃史さん(うちだ・こーじ)
Wafu Builders
略歴:1964年、三重県菰野町生まれ。四日市高校時代は柔道、鹿児島大学時代は自転車とトライアスロンの国内外の競技での優勝経験を持つ。地元の工務店で住宅建築業務の経験を積み、茶道の先生の自宅の新築工事に携わったことがきっかけで茶室関連の仕事を開始した。1997年からワシントン州オリンピアを拠点に、和風建築を主とした建築プロジェクトを多数手がけている。

掲載:2021年1月 聞き手:オオノタクミ



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