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「失敗から学ぶ」コストコ(Costco)国際部バイヤーの成功哲学 寛子・ハントゥーンさん

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寛子・ハントゥーンさん
もくじ

育児・仕事・学業を同時進行

出産後にワシントン大学で学士号を取得したハントゥーンさん。育児・仕事・学業は同時進行だった。

私がシアトルに来ることになったのは、日本で知り合って結婚した夫がシアトル出身で、夫の家族の近くに住んでみようと考えたから。日本の大学で英語を専攻したので、英語の読み書きはできましたが、アメリカに来た当初は話すことがあまりできず、電話を取るのが怖かったです。それでも運転免許を取得したら行動範囲も広がって、子供ができる前に短期でエントリー・レベルの仕事をし、アメリカで働くことのさわりを体験しました。

出産してからしばらくは育児に専念しましたが、子供が2歳になった頃、ワシントン大学に入学し、ビジネス専攻で学士号を取得しました。でも、卒業した時はちょうど就職難で、なかなか仕事が見つからない。ようやく、アメリカ支社を設立しようとしていた日本企業に立ち上げスタッフとして採用されましたが、社内は女性が平等に扱われず、昇進の可能性がないという、日本特有の企業文化が引き継がれていました。

それで、アメリカの企業への転職に備え、フルタイムで働きながら、シアトル大学で MBAを取得しました。シアトル大学は小さいことがとても効果を発揮している、本当にいい大学ですね。夜間クラスで学位取得に4年かかりましたが、生徒のためのメンターシップ・プログラムがきちんとしていて、4人もの良いメンターについていただくことができました。

コストコ(Costco)本社に就職

男女差別がなく、実力で見てくれる会社だからこそ、エントリー・レベルから昇進できた。

日本企業を1999年に辞め、Costco に入社しました。最初はエントリー・レベルだったので、給料は日本企業の時より40%も少なくなりましたが、男女差別がなく、実力で見てくれる会社であることは、15年働いてきた経験から自信を持って言えます。

また、倫理的で健全な会社でもあります。それはどういうことかと言うと、従業員を大切にしてくれるんですね。福利厚生もしっかりしている。だから、「会員のためにこうしよう」「こうしたらいいんじゃない?」と、自分でプロジェクトを作ったり、工夫したりする、モチベーションの高い人が集まって来ます。

そして、Costco の場合は会員制のビジネスですから、会員も大切にします。また、サプライヤーも大切なパートナーと考えています。

国際バイヤーとしての仕事

日本からの学生に Costco 店舗を案内する寛子さん

一つの商品の成功だけでなく、その国でのビジネス全体の成功をサポートする仕事にやりがいを感じ続けている。

現在、Costco は米国外ではカナダ、アジアでは日本・韓国・台湾、そしてオーストラリア、メキシコ、プエルトリコ、イギリス、スペインに店舗があります。

私は本社で約60人が働く国際部に所属する国際バイヤーとして、商品の選択、米国・各国・世界全体での売れ筋を把握しつつ、本社の意向やプログラムをそれぞれの国の購買部に伝えて、各国でのビジネス展開をサポートすることを主な業務としています。

Costco で扱っている商品の数は約3,800。一般的なスーパーマーケットが扱っている商品は1万5千から2万なのと比べると、Costco が「限定された、いい物」を「他店よりも安い価格で」扱うビジネスモデルであることがわかります。私たちのゴールは、他店よりも20%低い価格で販売することですが、商品によっては競争が激しくてそこまで節約できない商品もありますね。

アメリカの店舗で人気の商品を他国に紹介し、それがすごく売れた時などはやりがいを感じますが、一つの商品の成功だけでなく、その国でのビジネス全体が成功する必要があります。アメリカからの輸出は難しいこともあり、特に水が含まれている物はその源泉まで調査して許可を取らなくてはなりません。また、商品に貼るラベルにどのように表示するか、いつそのラベルを貼るかなど、細かなことがとても大切です。最も難しい商品の一つは、トイレットペーパー。長さや枚数や芯の大きさなど操作されやすい商品なので、品質管理部が納品されたものの長さと枚数を一つ一つ分解して数えて確認しています。そういう努力をすることが、「あちこちの店の商品を比べて買うような時間と労力をかけなくても、Costco に行くだけでいつも安心して買える」ということにつながります。

今後は、米国外の店舗で人気の商品を世界の全店舗で扱えるようにしたいですね。各国で扱っている商品の平均40~45%はアメリカの Costco で販売している商品で、残りは各国の店舗でしか販売していない商品です。今も日本で製造している伊藤園のお茶のティーバッグや、韓国で製造している韓国海苔のように、全世界の店舗で自社ブランド 『Kirkland Signature』 として販売している人気商品がありますが、例えばスペインのオリーブオイルなどを世界の全店舗で売っていけたら、もっと喜ばれるかと思います。

「私にはできない」「年だからできない」とは考えない

左から:ジム・マーフィー氏(Costco)、寛子さん、
アイリーン・ヒラノ・イノウエ氏(US-Japan Council プレジデント)、
デール・ワタナベ氏(ワシントン州日米協会 CEO)

「やる前から “私にはできない” と思わないこと。まず、やってみる。もし失敗したら、そこから学ぶ」

ワシントン州日米協会のプログラムを通して、福島大学の大学生たちにお会いする機会が昨年ありました。とてもすばらしい方々ばかりで、日本の将来は明るいと思わせてくれます。

そんな方々にアドバイスを求められた時にお伝えすることは、「やる前から “私にはできない” と思わないこと」です。まず、やってみる。もし失敗したら、そこから学ぶ。私だって、Costco で働き始めた頃、アメリカから台湾までガミーベアを温度制御のないコンテナで配送してしまったことがあります。台湾に到着してみたら、容器の中の小さいガミーベアが溶けて全部くっついて、巨大なガミーベアに!大失敗でした。

もう一つのアドバイスは、「メンターを見つけること」。前述の通り、私は MBA のコースですばらしいメンターに恵まれました。いろいろなことを話せて、質問できる、仕事のメンター、人生のメンターがいるといいですね。もちろん、助け合える、話し合える友達も必要です。

そして、年を取ると「年だからできない」と思いがちですが、どんどん新しいことをやり続けることが必要ですね。

ひろこ・はんとぅーん/愛媛県生まれ。大学進学を機に京都に引っ越し、そのまま地元企業に就職。シアトル出身の夫と結婚後、1983年に渡米。シアトルで出産し、育児をしながらワシントン大学でビジネスを専攻し学士号を取得。その後、日本企業での在職中に、シアトル大学にてMBAを取得。1999年の卒業後、Costco 社に入社し、現在に至る。ワシントン州日米協会の2015-2016年度の会長を務める。

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