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山東 貴司さん (シーベルベーカリー オーナー )

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現在私たちが使っている “パン” という単語は、フランス語 “Pain” が日本語になったもの。でも、パンの原形とされるものが人類史上に登場したのは、なんと今から約6,000年ほど前のメソポタミアでした。その頃は、小麦粉を水で練った物を無醗酵のまま焼いただけでしたが、それがエジプトで偶然にも醗酵パンとなってからは、ギリシャを通って、ヨーロッパ、アジア、アフリカまで広がっていきました。

日本の歴史にパンが登場するのは、鉄砲やキリスト教が伝わった戦国時代です。最初は諸処の理由からあまり脚光を浴びませんでしたが、開国後には横浜や神戸といった港町が中心となって、あっという間に表舞台へデビューしました。1869年には、現存するパン屋でもっとも古い木村屋総本店が銀座に開業、日本独特のあんパンを発売するなど、日本風のパンも続々登場。以来、私たちの食卓に欠かせない存在となっています。

さて、そんな日本風のパンを、このシアトルで作り続けているシーベル・ベーカリーのオーナー、山東貴司さんにお話を伺いました。
※この記事は2000年2月に掲載されたものです。

シーベル・ベーカリーの歩み

シーベル・ベーカリーができてから、もう数年になりますね。

1995年5月にスタートしたので、今年の5月で丸5年になります。

ベーカリーを開業されるきっかけはなんだったのですか?

大学2年生の時、栃木県でパン屋をやっている叔父が倒れたので、手伝いに行ったのがきっかけでした。いろいろと仕事をさせてもらっているうちに、「パン屋をやろう」と思うようになったのです。叔父もすぐに元気になり、いろいろアドバイスをしてくれたので、決心が固まっていきました。そして、こちらに住んでいた両親を訪ねて遊びに来た時、「ここでパン屋をやろう!」と決めたというわけです。この地域はまだまだ日本人の人口が少ない為、市場調査の結果は思わしくありませんでしたが、その決心を変えることはなかったですね。とにかくチャレンジしてみたかったのです。

こちらに来られてから開店まで、どのようなことをされたのですか?

1994年に移住し、それから約1年は準備に費やしました。まず、店舗を構える場所を探すのには苦労しましたね。パン作りには大量の電気が必要なので、それを許可してくれるところがなかなか見つからなかったのです。しかし、ある日、偶然このファクトリアモールの傍の店舗が空いていることがわかり、やっと決めることができました。それからは、電気系統の設定はもちろん、店内のデザインや、パン製造に使う機械の購入や配置のデザインなどなど、あっという間に時間が過ぎて、1995年5月にオープンにしました。

名前の由来

この、Seabell (シーベル)という名前は、山東さんのアイデアですか?

そうです。昔、生クリームと小豆クリームがコルネの中に入っているパンがありました。それが浜昼顔という花に似ているということで、その英語名である Seabell という名前がつけられていました。生クリームという西洋の物と、小豆クリームという和風なものが合わさっているというのは、なんともユニークですよね。それが頭の中に残っていて、ここの名前になったわけです。お客様には、Seattle と Bellevue をかけあわせたもの、と思われることが多いのですが、なんだかそれにもぴったりあてはまる名前ですね(笑)。

人気のパン

オープン以来、どのようなパンが人気なのでしょうか?

やはり食パンです。この食パンは、もともとアメリカの食堂車で出されていたプルマン型というものなのですが、今ではアメリカにはないようですね。うちの食パンの特徴は、普通よりもミルク(脱脂粉乳)の量が多いので、風味が豊かであるということでしょうか。また、粉はもちろんのこと、その他の材料も厳選されたものだけを使っています。その次に人気があるのは、アンパン。日本のパン屋はあんこ屋からあんこを買っていますが、うちではすべて手作り。こちらで小豆のいいものを入手するのは一苦労ですが、やはり買ったものとでは味が全く違いますから、大切な仕事です。その次の人気はサンドイッチです。種類はひらめきで決めてしまうのですが、オーソドックスな卵サンドイッチから、カニクリーム・コロッケ・サンドイッチなどの新しいものなど、約10種類取り揃えています。

これだけいろいろな種類のパンを作られるのは大変な作業だと思いますが、山東さんの標準的な1日というのは、どんな感じなのか教えてください。

朝5時に店に入り、まず食パン用の粉をこねる事から始めます。そして、食パンの第1号を焼いている間に、サンドイッチ用のパンを焼き、その後、菓子パン、バターロール、イギリスパン(山型パン)、フランスパンといった順番で焼きます。日によって違うのですが、食パンを宇和島屋さんに卸す日などは、ここで食パンの第2号を焼きます。そして、また菓子パンを焼いて、それからまた食パンの第3号を焼くこともあります。これをたいてい午後1時ぐらいまでに終わらせ、その後は、あんをこねたり、リンゴの皮をむいて煮たり、カレーパン用のカレーを作ったりする作業があります。あんは、1時間程ひたすら鍋の中をかきまわさなければならないという大変根気の要る作業です。そして、平日は午後6時、土曜は午後5時に閉店、というのが、だいたいの1日でしょうか。

お客様のご要望で追加したパンはありますか?

そうですね、土曜日だけにカレーパンをいれていますが、これはお客様からたくさんのお問い合わせをいただいて追加させていただいたものです。

これからの展望をお聞かせください。

私はとにかくパンを作るのが大好きなのです。これからも、おいしいパンを皆さんの食卓にお届けするよう努力したいと思っています。

【関連サイト】
Seabell Bakery

掲載:2000年2月

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