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田中 晶美さん (Silver Lake Animal Hospital 獣医師)

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広告代理店勤務時代に出会った獣医師に感激したことがきっかけで、獣医になることを決意。猛勉強の末、見事その夢を実現された、シルバー・レイク動物病院の田中先生にお話を伺いました。
※この記事は2003年10月に掲載されたものです。

田中 晶美(たなか まさみ)

1980年 渡米。ハワイ大学入学。

1984年 ハワイ大学スピーチ学部卒業。

1990年 シャミナード大学大学院卒業。

1997年 ワシントン州立大学獣医学部入学。

2001年 ワシントン州立大学獣医学部卒業。獣医免許取得。同病院で勤務を開始し、現在に至る。

渡米

アメリカに来られたきっかけについて教えてください。

中学校を卒業後、実家の近所にあったカナディアン・アカデミーというインターナショナル・スクールに入学。当時は同アカデミーが日本で生まれ育った日本人にも入学をすすめていた時期で、また、私自身も日本の高校に行くことには興味がなかったため、これはチャンスだと思ったのです。それがきっかけで、「アメリカで勉強したい」と思い始め、高校卒業と同時にハワイ大学に入学しました。

ハワイ大学では何を勉強されたのですか?

「アメリカと日本とつなぐような仕事をしたい」と思っていましたので、最初はコミュニケーションやビジネスを勉強し、スピーチ専攻で卒業しました。その後、ホノルル郊外のシャミナード大学でMBAを取得し、卒業後はハワイの広告代理店に勤務していました。

それからなぜ獣医学を学ぶことになったのですか?

昔から動物はとても好きでしたので、普段からペット・ショップやヒューメイン・ソサエティに遊びに行ったりしていました。そのうち、当時飼っていた猫の獣医さんのところでボランティアを始めたのですが、私の猫に悪性腫瘍が発見された時、その獣医さんが猫の治療だけでなく、私の心のケアまでしてくださったことがきっかけで、私も人間と動物の絆を大切にする獣医になろうと決心。ハワイ大学に再入学して理系のクラスをとり、その後、獣医学では全米で上位にランクされているワシントン州立大学に編入しました。

まったく違う分野の獣医学で、どのような勉強をされましたか?

ものすごい勉強量でした。「明日までにあの本とこの小冊子を読んできてください」と言われるのが3科目も4科目もあるという状態でしたから、入学後は午前7時または8時に授業が始まり、午後6時ぐらいに帰宅してすぐに眠り、午前12時~午前1時頃に起き、食事の時間も、寝る時間も惜しんで、朝まで勉強しました。1日に3~4科目のテストがあることは日常茶飯事。日本からの日本人は私だけで、クラスメートは全員が英語を母国語とする人たちばかりでしたが、そのようなスケジュールではネイティブでもテキストを読みこなすのは不可能です。いくら勉強してもしたりないという感じでした。春休みや夏休みも、次の学期の予習にあてました。とにかく、苦しかったですね。今だったらもうやりたくありません(笑)。

現在の病院で仕事を見つけられた経緯について教えてください。

大学3年生から簡単な手術を始め、大学4年目は実習生として病院で勤務します。実際にクライアントが来院し、ドクターの監視のもとで対応を行いますので、卒業する時には去勢・避妊手術などの基本的なことはできるようになっています。この仕事は、”Washington Veterinary Medical Association” の求人広告で見つけました。大学4年生の時に面接に来たのですが、幸いなことに採用していただくことができました。病院にはきちんとした設備があり、スタッフもとてもいい人たちばかりなので、私自身もとても気にいっています。

今のお仕事について教えてください。

予防注射から身体検査、血液検査、便・尿検査、レントゲン、避妊・去勢の手術、腫瘍切除、デンタルなど、さまざまな業務があります。現在はドクターが私を含め4人、テクニシャンが5人勤務していますので、それぞれのスケジュールは担当者が1ヶ月ごとに決めてくれます。基本的なシフトは7時~4時半、8時~5時半、9時半~7時となっていますが、この病院は基本的に予約制であるものの、ウォークイン(予約をしていないクライアント)や急患も受け付けていますので、シフト通りに仕事をすることはまずありません。特に、猫や犬の出産が多く、外に出る機会も多い春や夏には来院されるクライアントの数は多くなりますね。なお、私は犬猫専門ですが、ここでは犬猫だけでなく、爬虫類や鳥類を担当されている医師もいます。

お仕事ではどのようなことに喜びを感じられますか?また、どのようなことに苦労されていますか?

生命に関わる仕事ですので、毎日同じ日はありません。病気になっていた動物が元気になったり、新しい生命が生まれたりすると嬉しいですし、年老いた動物が死んでしまったりすると、とても悲しいです。でも、毎日がエキサイティングで、やりがいがあります。ただ、自分がいつも診ているクライアントには情がうつってしまい、病院でしか会わないものの、なんだかとてもよく知っているような気がしてきます。特にアメリカでは動物を “ペット” としてではなく、”自分の家族” として一緒に暮らす人たちが多いですよね。子供たちも、”ブラザー” “シスター” と呼んでいたりします。でも、重病で助からないだろうという場合に、安楽死というオプションを医師として飼い主に話をしなければならない時は、感情のコントロールに難しさを感じることがあります。

これから動物を飼おうという人へのアドバイスをお願いします。

動物もやはり生き物ですから、責任を持って飼いましょう。それができないのであれば、飼わないほうがいいと思います。衝動買いをしたり、また、クリスマスや誕生日に「前から動物を欲しいと言っていたから」とプレゼントで動物をあげるというのは、いただけません。動物にもそれぞれ性格がありますので、飼い主自身が自分の性格やライフスタイルにあわせてきちんと選ぶ必要があります。また、アメリカでは予防を重視した医療を行っていますので、年に1回は健康診断と予防注射が必要です。特に7~8歳になれば毎年血液・尿の検査をするべきです。飼い主が気づいていなくても、血液検査で腎臓や肝臓に問題があることがわかれば、病気になる前に食事の改善を含めた予防策をとるチャンスもあります。飼い主が気づく時には、既に手の施しようがないほど病気が進行しているケースが多いです。また、歯の掃除を怠ると、心臓病につながることもありますので、動物にとっては歯も大事です。最後に、避妊・去勢手術をすることは、妊娠を防ぐと共に、生殖器のガンになる可能性を抑えるため、アメリカではとても大切なこととされています。私も、生後5ヶ月になった犬や猫には、その手術をすすめています。

今後の抱負について教えてください。

獣医になって良かったと思う毎日で、人生がとても充実しています。今後も良い獣医として、動物達のためにがんばっていきたいと思います。

【関連サイト】
Canadian Academy

University of Hawaii

Chaminade University

Washington State University

Washington State Veterinary Medical Association

掲載:2003年10月

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