春が深まってくる頃、シアトル地域の公園や道路など、あちこちで雪が舞うように白いふわふわしたものが飛んでくることがあります。これは、コットンウッド(cottonwood)と呼ばれる木の種で、綿毛は種を風に乗せて遠くまで運ぶための自然の仕組みです。ここでは、この自然現象についてまとめました。
コットンウッドとは

コットンウッドはポプラ属(Populus)に分類される木で、湿地や川沿いに多く見られる落葉高木です。特にワシントン州やオレゴン州など、太平洋岸北西部(Pacific Northwest)では、ブラック・コットンウッド(Populus trichocarpa)という種類が自生しています。この木は非常に成長が早く、時には30メートル以上にもなります。
シアトル・タイムズの記事 『Fluff is survival tactic for a tough species: cottonwood』によると、コットンウッドは春の終わりに綿毛のような種子を飛ばす性質があります。種は風で約20マイル(約32km)以上も飛ぶことがあり、24時間以内に芽を出すそうで、また、落ちた枝から根を生やすこともできるそうです。
- ブラック・コットンウッド(Populus trichocarpa):ワシントン州やオレゴン州などに自生。最大60メートルにもなる北米最大級の広葉樹です。
- イースタン・コットンウッド(Populus deltoides):アメリカの中部や東部で見られ、高さは約25メートル程度。
- バルサム・ポプラ(Populus balsamifera):寒冷地に多く、高さは20〜25メートルほどです。
(出典:U.S. Department of Agriculture Plant Database, Missouri Botanical Garden)
綿毛が出るのは雌木だけ?雄木・雌木の違い

ポプラ属の木は「雄木(おぎ)」と「雌木(めぎ)」に分かれています。綿毛のようなもの(実は種子を運ぶための繊維)を出すのは、雌木だけです。春に雄木の花粉が雌木に届くと、雌木がカプセル状の実をつくり、その中にある種子と綿毛が風に乗って飛んでいきます。
このため、
- 雄木しか植えなければ綿毛は出ません。
- 園芸用には綿毛が出ないように改良された品種(不稔種)も販売されています。
これが「綿毛が出ないポプラ(cottonless cottonwood)」と呼ばれる理由ですが、実は多くのポプラの種(しゅ)は綿毛を出す性質を持っているため、この呼び方は正確ではないという指摘もあります。
(出典:Colorado State University Extension, USDA Forest Service)
春の風物詩としての綿毛

ふわふわと舞う白い綿毛は、時に歩道や芝生、公園に積もって、「春の雪景色」と呼ばれることもあります。綿毛自体はアレルギーの原因にはなりにくく、無害とされていますが、量が多いと掃除が大変だと感じる方もいます。
それでも、この綿毛は、太平洋岸北西部に暮らす人々にとって、木々の緑が深まり、日が長くなり、夏が近づいてくることを感じさせる毎年の風物詩です。
ポプラの役割と自然への貢献
ポプラやコットンウッドは成長が早く、川の土砂崩れを防いだり、鳥の巣を作る場所を提供したりと、自然環境を守るうえで大切な木なんですね。また、葉の裏側が白く光るため、風に揺れるとキラキラと美しい風景も楽しめます。
参考情報:
- USDA Plant Database
- Missouri Botanical Garden Plant Finder
- Colorado State University Extension
- USDA Forest Service Tree Fact Sheets
- Seattle Times: Fluff is survival tactic for a tough species: cottonwood』によると、種は20マイルほど飛ぶこともあり、24時間以内に芽を出すとか。さらに、種がなくても、落ちた枝とかから根を生やすこともできるとか。
ちなみに、コットンウッドはよく「花粉症のようなアレルギーを引き起こす」と考えられていますが、事実ではないそうです。