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「新型コロナウイルスとの共存 ~ 秋冬のコロナ&インフル同時流行に備えを」 バージニア・メイソン病院 感染症科指導医 千原晋吾さん

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バージニア・メイソン病院 感染症科指導医 千原晋吾さん

新型コロナウイルスのパンデミック宣言が出されてから約2年半が過ぎました。米国では、オミクロン対応のワクチン接種が始まり、ワシントン州政府がついに非常事態宣言を10月31日までに解除することを発表しました。そこで、シアトルのバージニア・メイソン病院で感染症科指導医として勤務している千原晋吾さんに、米国、ワシントン州の現状と、これからの対策について伺いました。

– 米国における新型コロナウイルスのパンデミックの現状について、どのようにご覧になっていますか。

ワシントン州西部では、患者数、入院数、死亡数ともに減少傾向にありますが、ワシントン州東部でより多くの症例が報告されています。2022年1月は1週間で州全体で400人以上の死亡が報告されていましたが、8月の第1週は65人の死亡が報告されました。症例数に関しては、8月最終週には7000件以上の報告がありましたが、州に報告されていない自宅での検査が可能であることを考えると、これは過小評価であると思います。ワシントン州は検査室で検査された12~13%の結果しか把握していないと推定しています。

– 米国では、オミクロン変異株の亜種である「BA.4」と「BA.5」をターゲットとした新しいブースターの接種が始まりました。米国の感染の大半が「BA.4」と「BA.5」によるものであるというのがその理由ですが、この二つの亜種による感染はこの秋冬にさらに広がることが予測されますか。

この秋から冬にかけて、さらに多くの感染がありそうです。その原因は「BA.4」や「BA.5」かもしれませんが、他の亜種も出てくるかもしれません。

ワクチンは重症化や死亡の予防に役立ちますが、必ずしも感染を予防するわけではありません。また、ワクチンの効果は時間とともに薄れていきます。ブースター接種の資格対象の人は、なるべく早く打つことをお勧めします。

– 今回の新しいブースターは誰が、いつ接種を受けるべきでしょうか?

CDC は、このブースターを一次接種(プライマリ・シリーズ)を完了し、最後のワクチンから少なくとも2ヶ月が経過した人に推奨しています。プライマリ・シリーズを接種していない人には推奨されません。ファイザー社のワクチンは12歳以上、モデルナ社のワクチンは18歳以上に認可されています。詳細は、ワシントン州保健局の公式サイトでも確認できます。

– 最近陽性判定を受けた人もこの新しいブースターの接種を受けるべきでしょうか。もし受けるべきでない場合は、陽性判定からどのぐらいの期間が経過してから受けるべきでしょうか。

最近陽性判定を受けた人が、すぐに接種することはできません。CDCは、症状が出てから、または検査で陽性となってから3ヶ月が経過してから、新しいブースターを接種することを推奨しています。

AXIOSは8月31日付の記事で「ワシントン州の子どもの10人に7人はコロナに感染していたことがわかった」と発表しました。これは「5月と6月に採取した血液サンプルによると、ワシントン州の生後6カ月から17歳までの子供の71.4%が、少なくとも一度はCOVID-19に感染していることが示唆される」というCDCのデータにもとづいています(全国平均79.7%)。こうしたことから、「今や、まだ感染していない方がマイノリティ」「感染して抗体を作った方がいいのでは」という意見を耳にするようになりました。しかし、最近感染した人によると、「一家4人全員が感染して、本当に辛かった。可能なら感染しない方がいい。Long-COVID になったらもっと大変だ」とのことです。ワクチンや治療薬はありますが、人によって感染の度合いも Long COVID になる可能性も異なるので、可能であれば感染しないようにするのが良いと理解しています。千原先生のお考えはいかがでしょうか。

感染しないほうが絶対にいいというのは、私も同感です。重症化することは稀な現象ですが、そのような賭けをしたくありません。Long-COVID になるリスクも、他の人に感染させるリスクも避けたいですね。

– 新学期が始まりました。ワシントン州保健局は「陽性が判明した場合、または症状が確認された場合、子どもは5日間にわたり自主隔離し、検査を受けること」を求めています。その他に子どものいる家庭や子ども自身が気を付けることはありますか。

感染した人は、医療を受けるとき以外は外出を控え、家にいることが大切です。家にいるときは、他の人やペットに近づかないようにすること。もし、周囲にいる必要がある場合は、顔にフィットしたマスクを着用すること。また、症状または陽性反応から48時間以内に、曝露した可能性のある人に連絡することが望まれます。自分の症状を観察することも重要です。症状が進行し、息切れがするようであれば、医療機関を受診してください。

– その他に現時点で気を付けておくべきことがあれば教えてください。

COVIDは2年半前から出回っています。今年の秋冬はインフルエンザの患者さんが増えそうなので、インフルエンザワクチンと同時にCOVIDの2価ワクチンも接種しておこうと思います。この二つのワクチンは、同時に受けても問題ないでしょう。ワシントン州での接種は、州政府が運営する Vaccine Locator にアクセスして予約できます。

また、どのような状況でも、マスクを着用することを選択できます。マスクを着用するかどうかについては、以下の点を考慮してください。ワシントン州保健局の公式サイトに基づいています。

  • 自分のワクチン接種の状況、周囲の人のワクチン接種の状況: COVID-19のワクチンやブースターを接種していない人は、COVID-19に感染しやすく、重症化しやすい
  • 自分や周囲の人の健康状態: COVID-19の重症化のリスクが高い健康状態にあるかどうか。特定の病状を持つ人は、COVID-19に感染しやすく、重症化しやすい
  • 自分がいる環境の特徴: 混雑している、換気が悪い、屋内など
  • CDCの評価にもとづく、地域社会でのCOVID-19の感染レベル
    – 地域社会の感染レベルが高い場合、ワクチン接種の有無にかかわらず、屋内ではマスクを着用することを推奨
    – 地域社会の感染レベルが中程度または高い場合、COVID-19で重症化するリスクの高い人は、屋内では高品質のマスクや呼吸器を着用することを推奨します
    – 高リスクの人と同居している場合、または高リスクの人と社会的接触がある人は、屋内で一緒にいるときは、高品質のマスクの着用を検討すること

– ありがとうございました。

千原晋吾さん(ちはら・しんご)
バージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医
日本、プエルトリコ、ニュージャージー州で幼少時代を過ごし、山梨医科大学に入学。卒業後、横須賀海軍病院インターン、飯塚病院初期研修、コネチカット大学プライマリ・ケア内科プログラムのレジデント及びチーフ・レジデント、ラッシュ大学・John H Stroger Jr Hospital of Cook County 感染症科フェロー、ユタ大学臨床微生物学フェロー、獨協医科大学感染制御・臨床検査医学教室講師。2011年に再々渡米し、南イリノイ大学感染症科講師を務めた後、2014年3月よりバージニア・メイソン・メディカル・センター 感染症科指導医。2016年7月のインタビュー記事はこちら

掲載:2022年9月

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