シアトルの市街地の地下には、シアトル断層(Seattle Fault)と呼ばれる断層があるのをご存知ですか?
シアトル断層(Seattle Fault)とは
シアトル断層は、ピュージェット湾とシアトルのダウンタウンを東西に横断する位置にあります。ワシントン州天然資源局(DNR)によると、シアトル断層で最後に地震が発生したのは約1100年前ですが、地質学的証拠によれば、過去3500年の間にシアトル断層帯内で推定マグニチュード6.5の地震がさらに5回発生しており、今後また発生する可能性があります。
そのため、さまざまな調査が続けられていますが、2022年7月に発表された新しい調査結果に基付いて作成されたシミュレーションで、シアトル断層で大地震が発生した場合の津波の影響がより明確に可視化できるようになりました。
シアトル断層での地震による津波のシミュレーション
こちらはその一つで、シアトル断層で大地震が発生した場合のシアトルからベインブリッジ・アイランド東側における津波流速シミュレーションです。
- このモデリングで使用された地震シナリオは、非常に大きく確率の低い地震(~マグニチュード7.5)である。この地震は、緊急計画上、シアトル断層が発生させると考えられる最大規模の津波を発生させる。
- そのような地震の場合、多くの場所に津波が数分で到達する。
- ベインブリッジ・アイランドの東側、エリオット湾、ウエスト・シアトルのアルカイ・ポイントの多くの場所では、津波は3分未満で海岸線に到達する。
- このような津波による浸水は、シアトル広域の海岸線に沿って20フィート(約6m)を超える。
- 津波の浸水と強い潮流は、地震発生から3時間以上続く可能性がある。
- この調査では、タコマ港の浸水高が6フィート(約1.8m)と、これまでの調査よりも低いことがわかった。また、港の一部では、波が最大3マイル(約4.8km)内陸まで伝わる可能性があることもわかった。
- 津波による浸水はシアトル断層に近いほど大きくなるが、この研究ではワシントン州とカナダとの国境に近いブレインからワシントン州の州都オリンピアまでのセイリッシュ海全域で、海岸線の浸水と潮流の増加が見られた。
- このモデルでは、潮位や地震による地滑りが引き起こす局地的な津波は考慮されていない。
- 地震を感じたら、体を低くし、机などの下に入って体を支えること、そして、高台に避難することと、できるだけ早く内陸に避難することが必要です。
ニュースリリースによると、この調査は同局のワシントン州地質調査部門の地質学者が行ったもので、ワシントン州最大の人口集中地域と経済の中心地であるシアトルで津波が発生した場合を想定し、緊急事態の準備計画の策定と改良を目的としています。
津波は太平洋沿岸地域のみとは限らない
このリリースでワシントン州のヒラリー・フランツ公有地コミッショナーが述べているように、津波といえば太平洋沿岸地域を思い浮かべることが多いかもしれません。というのも、カナダのブリティッシュ・コロンビア州からワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州北部にあるカスカディア沈み込み帯(Cascadia subduction zone)で大地震が発生して津波を引き起こすことが予想されているからです。
しかし、フランツ公有地コミッショナーは「シアトル断層の断層でも地震の長い歴史がある」と指摘し、「シアトル断層沿いの地震と津波の歴史は、カスカディア沈み込み帯に比べれば頻度は低いものの、その影響は甚大なものになる可能性がある。だからこそ、地域社会が準備と対応に必要な情報を得ることが重要だ」と述べています。