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アメリカでの出産・育児「産後うつの治療法」

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うつの症状が2週間以上続いていたり、仕事や母親としての役割を果たすのが難かしくなったりしたら、専門家の診察を受けなければなりません。産後間もない時は、最近まで毎週通っていた産科の医師や助産師が状況をよく理解してくれているので、まず予約を取ってみましょう。うつ病の既往歴があって、精神科医やカウンセラーにかかったことがあれば、そちらに予約を取ってみましょう。

もくじ

産後うつの受診

受診すると、普通は、前回のコラムでご紹介したような産後うつ評価のための質問を受けます。また、自分や家族に、うつの既往歴や、アルコールの多用がなかったかなどを含む、病歴や家族歴を聞かれます。悲しい、何も楽しめない、やる気が起こらない、という典型的なうつの症状のほかに、不安感、イライラ、細かいことが必ず同じでないと落ち着かない、怖くて一人でいることができない、などの症状があれば、それも伝えておきましょう。睡眠や食欲の問題、急激な体重増加や減少なども大切な情報です。

ストレスや、まわりの状況も大きく影響します。思ったような出産経験ができなかったことがトラウマになったとか、妊娠中に自分の母親を亡くした、などがきっかけで、うつになる人もいます。自分の「母親としての能力」に対して家族やまわりの人が批判的だと、うつになりやすくなりますので、そうした事情があれば診察の際に説明しておきましょう。アルコールや睡眠薬などの使用についても報告する必要があります。

自殺したいと考えているか、ということも必ず聞かれます。ちらっとそんな思いがよぎるぐらいならよくあることですが、具体的にどうやって死のうか、と計画をたてている場合は、入院観察・治療が必要になります。

イライラや疲労感、やる気がない、集中力に欠ける、などの、うつに似た症状を起こす病気や異常もあります。産後には、ひどい貧血があったり、甲状腺ホルモンが異常に低かったり(逆に高かったり)、ビタミン D が低すぎることが多いので、血液検査もしてもらいましょう。もし、そうした異常がわかれば、その治療をするだけで元気になることもあります。

産後のうつの中で最も多いにも関わらず症状の軽いマタニティ・ブルーは、特に専門的な治療を受けなくても自然に良くなってくる場合がほとんどです。また、うつ病と定義できるほどの症状がなくても、子供の泣き声に反応せずに寝ている夫に異常にイライラしたり、「授乳しながら他の家事もこなさなければならない」という不公平感を強く持ったり、「一日中赤ちゃんを自分の身体にくっつけて過ごしたあと、さらに夫が触ってくると耐えられない」と思ったりするのはごく普通にあることです。そうした場合の気持ちの持ち方と、家族の対応については、次回の稿で考えてみたいと思います。

治療法

産後うつの治療には、状況に合わせて、薬を使う、さまざまな流儀のカウンセリングを受ける、サポートグループに参加する、などの方法があります。それぞれの方法を単独で使ったり、2種類、3種類を組み合わせて使ったりします。

抗うつ剤

抗うつ剤は、人によって合う薬と合わない薬があるので、過去にうつ病になったことがあって、薬を使ったことがある場合は、以前によく効いた薬を使うのが普通です。初めて使う場合は、SSRIという分類の抗うつ剤の中で、副作用の少ないものを選んで使うのが一般的です。

薬と授乳

授乳中には薬を避けたい、という人が多いのですが、むしろ薬を飲まずにうつ病がひどくなる方が、赤ちゃんへの害は大きくなりますので、授乳中に使っても良い種類の薬を選んでもらって、治療を受けましょう。また、日本では、薬を使うと「母乳をやめてください」と言われる場合が多いのですが、薬の種類を選べば、母乳も続けることができます。母乳をやめて人工乳を与えることの害を考えると、少し抗うつ剤が入っていても、母乳を続けることの方が赤ちゃんには良い場合が多いのです。

カウンセリング、精神分析、臨床心理士による治療など

さまざまな流儀の治療法がありますが、その人にあった方法を使うと、抗うつ剤と同じぐらい効果があり、再発率も抗うつ剤を使った場合よりも低いかもしれない、という研究結果があります。

サポートグループ

残念ながら、日本語による産後うつのサポートグループはまだありませんが、産科のある大きな病院にはたいがい英語のサポートグループがあり、定期的に集会を持っています。

緊急事態

起きられなくなってしまうような重篤なうつや、精神錯乱が見られる場合は、すぐに病院に行かなければなりません。真剣に自殺を考えたり、赤ちゃんを傷つけるようなことを考えてしまうような状態のときにも、医師や助産師の予約の日を待つのではなく、すぐに救急に行く必要があります。

情報提供:ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士 押尾祥子さん

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