ワシントン州の州法が改定され、ワシントン州内初のディスティラリー 『Dry Fly Distilling』 がワシントン州東部のスポケーンで創業したのが2008年。その後、全米規模で巻き起こったウイスキー・ブームにもあやかって、ワシントン州にも小規模蒸留所(クラフト・ディスティラリー)が増えています。
小規模蒸留所(クラフト・ディスティラリー)って?
「クラフト」であることの条件は、年間生産量が15万ガロン以下であること。また、たいていの蒸留所では試飲できるテイスィング・ルームがありますが、そこで試飲できるのは1人1日あたり2オンス(約59ml)までで、1日に1人に販売できる量は2リットルとなっています。クラフト・ディスティラリーは、手造りであること、そして小規模であることを大事にしています。また、材料の入手から樽詰めまですべての工程を自分たちで行う “grain-to-glass” にこだわっています。特に、農業の盛んなワシントン州の材料を使うことが主流です。
Westland Distillery ウェストランド・ディスティラリー(ソードー)
ソードー地域にある 『Westland Distillery』 は、シアトルを代表するディスティラリーに成長しました。地産の原料で造られた “アメリカン・シングル・モルト” は、数々の世界コンテストで受賞し、そのクオリティの高さを世に知らしめています。2023年には、Whiskey Advocate が発表した「2023年の最もエキサイティングなウイスキー」の第3位に、同社の限定リリース『Garryana Edition 8』がランク入り。アメリカのシングルモルトがトップ3に入ったのは史上初で、大きなニュースとなりました。
Copperworks Distillery コッパーワークス・ディスティラリー(ウォーターフロント)
シアトルのクラフト・ブルワリーの 『Pike Place Brewery』 や 『Pyramid Brewery』 のブリューワーを務めたジェイソン・パーカー氏が2013年10月に創業。スコットランドの蒸留装置を使い、ジン、ウォッカ、ウィスキーを醸造しています。創業からわずか3ヶ月でスイスのジュネーブで開催された World Beverage Competition にてジンが金メダルを受賞。総面積7千平方フィートのテイスティング・ルームは必見。
Batch 206 Distillery バッチ・トゥ・オー・シックス・ディスティラリー(クイーン・アン)
2012年にオープンした、ジン、ウォッカ、バーボン・ウイスキーの蒸留所。総面積8,000平方フィートの敷地には蒸留所、すわって飲めるテイスティングルーム、レストランが揃っています。SIP の国際コンペティションなどで数々の賞を受賞しています。
Sound Spirits サウンド・スピリッツ(クイーン・アン)
ワシントン州で蒸留所を創業できる許可が出されてからシアトルで最初に創業した蒸留所。ジン、ウィスキー、アクアビット、各種リキュールを造っています。特に、北欧が起源の蒸留酒アクアビットをワシントン州で初めて造ったことで知られています。ツアーも提供しています。
Fremont Mischief フリーモント・ミスシーフ(フリーモント)
ウィスキー、ジン、ウォッカ、ブランデーを造っている蒸留所。ウィスキーの材料のライ麦はワシントン州のスカジット・バレーとオレゴン州のウィラメット・バレーで、化学肥料を使わないサステナブルな方法で栽培されたもの。テイスティングルームもあります。ライ麦のウィスキーなどは数々の賞を受賞しています。
Heritage Distilling Company ヘリテイジ・ディスティリング・カンパニー(バラード)
ワシントン州産の材料を最大限に使った、ウィスキー、ジン、ウォッカ、ラムの蒸留所。西海岸で最大手のクラフト・ディスティラリーのひとつで、ワシントン州では最大規模。American Distilling Institute からワシントン州では最も多くの賞を受賞しており、シアトル市内に2軒、州内の他都市やオレゴン州ユージーンなどにもテイスティング・ルームを展開しています。
2bar Spirits トゥ・バー・スピリッツ(ソードー)
経営者のネイサン・カイザーさんが生まれ育ったテキサス州の牧場と同じ名前で、2012年にオープンしたバーボン・ウイスキーの蒸留所。ワシントン州産の材料を挽き、潰し、発酵させ、蒸留し、寝かせるというすべての作業を自分たちで行っています。立ち飲みができる小さなテイスティング・ルームがあります。リクエストに応じてツアーも開催してくれるので、問い合わせてみましょう。
Letterpress Distilling ヘリテイジ・ディスティリング・カンパニー(ソードー)
アマーロ・アモリーノやリモンチェッロ、アランチェッロ・ルッソなどのイタリアが起源のリキュールや、ウォッカを造っています。
Woodinville Whiskey ウディンビル・ウィスキー(ウディンビル)
シアトルの東、ウディンビル市にある蒸留所。大規模ワイナリーのテイスティング・ルームや、小規模ワイナリーの集積地として知られていますが、近年は蒸留所の集積地としても発展しています。その一角にあるのが、2014年に移転してきた 『Woodinville Whiskey』。Maker’s Mark のマスター・ディスティラー、デビッド・ピッケレル氏がメンターとなり、かねてからウィスキー造りについて語り合っていた友人2人が創業しました。材料は厳選された北西部産のものにこだわり、蒸留に使う装置はドイツ製。American Craft Spirits Association の Spirits Competitionでその 『Woodinville Straight Bourbon』 が金メダルを受賞するなど、ますます注目が集まっています。
BroVo Spirits ブロヴォ・スピリッツ(ウディンビル)
アマーロやベルモット(Vermouth)を造っている蒸留所。厳選した植物を使ったリカーは定評があります。
Wildwood Spirits Co. ワイルドウッド・スピリッツ(ボセル/バラード)
シアトルのシェフ、ジョン・ハウィと、ソムリエのエリック・リードホルムが共同経営する蒸留所。2015年にシアトル郊外のボセル市にオープンした蒸留所とテイスティングルームでウォッカ、ジン、ウイスキーを造って人気を博し、2024年2月、シアトルのバラード地域に二つ目のテイスティングルームと蒸留所をオープンしました。リードホルム氏は、ハウィ氏が経営するレストランでワインディレクターとパートナーを務め、数々の賞を受賞。ゴードン・ラムゼイ、茨城県水戸市出身の柳橋隆、ジュリア・チャイルドなどとともに仕事をしてきた経験を持ち、ロンドンのInstitute of Brewing and Distilling(醸造・蒸留研究所)でマスター・ディスティラーの資格を取得しています。
Skip Rock Distillers スキップ・ロック・ディスティラーズ(スノホミッシュ)
2009年にスノホミッシュ生まれ育ちの男性二人が創業。ワシントン州にある家族経営の農家から直接仕入れた材料を使って造ったウィスキー、ウォッカ、ラム、ジン、ノチーノは、数々の賞を受賞しています。座って飲めるテイスティングルームもあります。
Bellewood Farms ベルウッド・ファームズ(リンデン)
「農場からグラスまで」を意味する “farm-to-glass” を実現しているワシントン州最初の蒸留所。カナダとの国境に隣接するリンデン市にある広大な農場で、高品質の果物を栽培し、ブランデー、ウォッカ、ジンを造っています。家族で経営している農場内には、ファームストア、蒸留所、ギフトショップ、カフェが揃っています。ツアーは予約制。金曜日はテイスティングもできます。